第42話 ドラゴンの肉と新メニュー
キルスから渡されたエンシェントドラゴンの尻尾、料理を任されたファルコは悩んだ。
「うーん、どうしようか、まずは解体してみようか」
そう考えたファルコはまずは尻尾の解体を始めた。
ファルコにとって解体作業は、慣れたものだ。しかし、それがエンシェントドラゴンとなると違う。
無駄を出してはいけないということから、とにかく丁寧に解体していく。
そうして、出来たエンシェントドラゴンの肉と骨。
そこから、骨を砕いてスープの出汁にしようと考えたところで手が止まった。
「……か、硬い、やっぱりドラゴンの骨ってすごく硬いなぁ……レティア」
ファルコはレティアを呼んだ。
「どうしたの、ファルコ」
キルス達と話をしていたレティアが厨房にやって来た。
「この骨を砕きたいんだけど、硬くて、頼める」
通常男のファルコが砕けないものを女のレティアが砕けるわけがない。
しかし、この夫婦の場合はちがい、確かに基礎的な力はファルコの方が強い、しかし、レティアには魔法による身体強化を使えるし、ファルコが使う料理用の槌はミスリル製であり、魔力を込めれば威力が増す。
そういうことから、レティアならこの骨を砕くことはできるというわけだ。
「さすがはエンシェントドラゴンってわけね。任せて」
それから、ファルコから受け取った槌に魔力を通して、身体強化をした後槌を振り下ろした。
ガキィン
金属を討つような音を立ててエンシェントドラゴンの骨が砕けた。
「出来たわよ」
「ありがとう。それじゃ、さっそく出汁をとるよ」
ファルコはレティアにお礼を言った後、その間に沸かしておいた湯にエンシェントドラゴンの骨を入れて煮込み始める。
本来、骨から出汁を取るためにはそれなりの時間が必要になるが、今回はすぐに食べるので簡易的なものにした。
そこに野菜やエンシェントドラゴンの肉などを入れて、さらに煮込んでいく。
「よし、スープはあと煮込んでいくだけかな、となるとメインはやっぱり、ステーキになるかな」
エンシェントドラゴンの肉となればこの世界においても最高級、そんな肉の場合下手な味付けではなくシンプルな料理がいいだろうと考えた。
というわけで、ファルコは家族全員分子供たち14人分と行きたいが、一番下のサーランはまだ0歳でその上にファーレスも2歳と幼い子供が多いので、それぞれにあった量で切り分けていく。
それからもちろん自分とレティアの大人の分も忘れない。
そうして、切り分けた肉を熱したフライパンの上に順番に並べて焼いていく。
味付けはシンプルに塩と胡椒だけとする。
こうして、出来た料理を家族が待つ食堂に持って行った。
それを見たエミルやニーナ、キルスとロイタ、キレルとレティアがそれを手伝いあっというまにテーブルに料理が運ばれていった。
「それじゃ、食べようか。えっと、まずはキルスから食べて」
ファルコが食材の提供者であり、エンシェントドラゴンを討伐したキルスこそ最初に食べるべきだと言った。
「あ、ああ、じゃぁ」
キルスもここで別に拒否する理由もないので少し緊張しながらまずはスープを1口。
「う、うまっ」
スープの味はこれまで、前世を含めてどの料理よりも美味であった。
「つ、次はステーキ」
スープの美味さに更なる緊張をしつつステーキを1口食べてみる。
「!!」
それは言葉にならないほどにおいしかった。
それを見た家族たちもまた一斉に食べ始めた。
「!!!!」
家族たち全員もまた同じように言葉を失くし、ひたすらに食べ続けるのだった。
それから、キルス達家族は定期的にこのエンシェントドラゴンの肉を食べることに決まったのだった。
翌日
キルスとしては冒険に出かけたかったが、家族総出で今日は休むように懇願されたことでおとなしく家にいて、幼い弟妹達と遊んだりしていた。
「暇だし、オーク肉も大量にあるし、あれ作るか」
キルスは時々日本で食べていた料理を食べたくなる時がある。といっても、そのほとんどが材料がないなどで作ることができない。
今から作ろうとしているものも好物ではあったが、バイドルという肉があまり手に入らない街ではなかなか手が出せなかった料理だった。
しかし、今はオーク肉が大量にある。
ということでさっそくまずはオークの解体をしに厨房横に設置してある解体部屋に向かった。
実は、キルスの家はしがない食堂ではあるがその裏手の自宅の土地はかなり広い、子供がニーナを合わせて14人となっても問題なく過ごせる家、戦闘訓練も出来る広い庭、といった具合だ。
その中の解体部屋は厨房を抜けた先にあった。
「父さん、解体部屋とあとで厨房をちょっと借りるよ」
キルスは厨房に入るなりファルコにそう断った。
「いいけど、何か作るのかい」
「まぁね」
それから、キルスは解体部屋に行きオークを取り出す。
「いつもながら人型の魔物の解体ってなんか、いい気分じゃないよな」
こればっかりは慣れないキルスであった。
とか言いつつも何とか解体を手早く済ませ厨房に戻っていった。
「それは、オークかい」
「そう、昨日まで行っていた洞窟ってオークだらけだったからね。大量にあるんだよ。父さんもどんどん使っていいから」
「それは、ありがたいよ。この街じゃ、お肉ってあまりないからね。昔からレティアや、今はキルス頼みだよ」
そんなファルコの言葉にいいよいいよと言いながら厨房に設置してある食糧庫からファルコの許可を得て玉ねぎを取り出してみじん切りにする。
キルスは食堂の息子として幼いころから料理はやって来たこともあり手際が良かった。
こうしてみじん切りになった玉ねぎをフライパンに入れ炒める。よくここで甘みを出すためにきつね色になるまでと言われているが、キルスが前世で得た知識によると、炒めすぎてもあまり意味がないと聞いていたこともあり適度なところでやめる。
それを、冷ましつつ今度は先ほど解体したオーク肉を叩き始めた。
ひたすらに叩き続ける。
「き、キルス、何をしているんだい、そんなにお肉を叩いて?」
さすがにここでファルコはキルスに尋ねざるを得なかった。
なにせこの世界にはミンチという物がないからだった。
「ああ、これは、ミンチっていうものにしているんだ。これから俺が作るものには塊の肉じゃ無くてこういうミンチのものを使うからね」
そう返事してからオーク肉を見ると見事にミンチとなっていた。
「よし、こんなもんか、後はこれを器に入れてっと、あとはタマネギと、パンくずをミルクに浸したものと塩、砂糖と胡椒を入れてっと」
後は手早くかき混ぜ練る。そうして出来たものを今度は手に取り形を整える。
これまでの工程をファルコはつぶさに見つめていた。
「あとはこれを焼くだけっと」
そうして、出来たものがそうハンバーグである。
「出来た」
キルスはさっそくハンバーグを1口。
「うん、美味い」
そんなキルスの様子を見ていたファルコも食べてみたくなった。
「キルス、僕も1口もらっていい」
「いいよ、はい」
キルスはファルコにもハンバーグを食べさせた。
「おいしい、うん、これ、行けるね」
ハンバーグを口にしたファルコはそのおいしさに、これは新たなメニューとして使えると確信した。
「これだけでもおいしいけど、何かソースをかけるといいかも」
ファルコはそこにすぐにたどり着いた。
「さすが父さん、そうだよ、これはソースをかけるんだ。といってもこの世界にはソースがないからね。何か合いそうなのを作ってよ」
「そうだね。考えてみるよ」
そんなことを話していると、匂いに連れられて他の家族もやってきて、ハンバーグを食べ絶賛していた。
それから数日後、ファルコ食堂に新メニューとしてハンバーグが並び、看板商品となるがこれはまた別の話だった。




