第41話 マジックストレージ
キルスはダンジョンから脱し、ギルドに報告したのち、ようやく家に帰った。
それから、弟妹達と遊び、夕方となり速めに閉めた店で、これまた早めに仕事を上がってきたニーナを含めて落ちてからの話をしていたのだった。
そんな中、それまで顔を真っ青にして心配そうに聞いていたファルコが最後にマジックストレージについて興味を持った。
「キルス、そのマジックストレージって、具体的にはどんな物なんだい」
「うん、これこそ、俺が話したかったことなんだけどね」
キルスはそういってから、家族にマジックストレージについて話した。もちろん、これは誰にも言わないようにということ、ギルドマスターにも言っていないことを話したうえでだった。
「……そ、それは、すごいね。つまり、それがあれば、いつでもどこでも新鮮な素材で料理が出来るってことだよね」
ファルコはすぐに料理につなげて考えた。
「そうだよ。父さん、これがあれば、俺がどこかで討伐した魔物か動物の肉とか、別の街とかで買ってきた野菜とかを新鮮な状態で食べることができるんだ。それに……」
キルスはここで一旦言葉を止めた。
「それにね父さん、このマジックストレージにはもっと凄い機能があるんだ」
「もっと、凄い機能ってなに?」
キレルも興味深く聞いてきた。
「それは、これだよ」
そういって、キルスはマジックストレージからマジックバックを取り出した。
「バック?」
マジックバックを見たエミルが訝しむように見た。
「それが、一体、どんな機能なの」
キレルが言った。
「これはな、マジックストレージと繋がっているんだ」
??
話を聞いていた家族全員が頭に疑問符を浮かべていた。
「どういうこと?」
ファルコが代表して尋ねた。
「簡単に言えば、マジックストレージに入れた物をこのマジックバックで取り出すことが出来るってことだよ」
!!!
まだ、そこまで理解できたわけではなさそうだったので、キルスはマジックストレージとマジックバックについて詳しく話した。
「……そ、それ、ほんとなの」
「……す、すごい」
話を聞いたエミルとそれまで黙って聞いていたロイタまで驚愕の声をあげた。
「本当だよ。これさえあれば、俺がどこかで討伐した魔物や動物をマジックストレージに入れて、それをここで父さんがマジックバックを使って取り出すことができるようになるってこと」
キルスは改めて具体例で説明した。
「す、すごい」
「そ、そんな、ものが……」
「これが、あれば、店が変わるね」
「う、うん」
家族全員がマジックストレージの凄さに気が付いたようだ。
「あれ、でも、そうすると、キルスが自分で使おうと思っているものまで父さんが取り出しちゃったらどうするの」
ここでエミルがセキュリティ的なことを聞いてきた。
「ああ、それなら大丈夫だよ。えっと、そうだな……」
キルスはどう説明するか考えた、このセキュリティはパソコンで説明するとわかりやすいが、家族にはパソコンがわからない。
「えっと、このマジックストレージの中っていくつか収納場所があるって考えて、それを俺専用とか、マジックバックとの共用とか、そういう風にしまう時に分けることができるんだ。だから、俺が自分で使いたいと思ったものは俺専用の場所に保存すれば、父さんがマジックバックでそれを取り出すことはできないんだ」
キルスは何とか説明することができた。
「なるほどね、それなら確かに問題ないわね」
「そういうこと、それで、父さん、父さんで1つ登録しようとおもうけど良い?」
「僕でいいのかい」
ファルコは自分がそんな凄い魔道具の使用者として登録してもいいのかとキルスに尋ねた。
「そりゃぁね、この魔道具を手に入れた瞬間から、1つは父さんを登録しようと思っていたからね」
キルスはこのマジックストレージを見た瞬間に、そうするべきだと考えた。というか、そうしないと、これからどんどん増えていくであろう魔物の素材の消費場所に困ってしまうからだ。
「そうか、うん、ありがとうキルス」
そうして、キルスは取り出していたマジックバックをファルコの前に置き言った。
「それじゃ、登録するから、父さん血をこの中に入れて」
「血を?」
キルスが血を入れるように言ったことでファルコは怖気ついた。
「ああ、これの登録には血と魔力による認証が必要になるんだ。それで、このマジックバックが父さん専用になるんだよ」
「そうなの」
「そうね、確かに、血と魔力を登録すれば、個人を特定できるわよね」
レティアがそういったことでファルコの不安が解消された。
「そっか、そういうことならわかったよ」
そういって、ファルコはレティアが何処からともなく取り出したナイフを受け取って、左手の人差し指の指先を切って、その地を数滴マジックバックの中に入れた。
「次は魔力ね」
「う、うん」
ファルコの指はは手早くレティアによって回復され、右手をマジックバックの中に入れた。
「えっと、これでいいのかな」
「うん、ちょっと待って……あっ、来た来た」
キルスはファルコが魔力をマジックバックに注いでいるのを確認した後、マジックストレージに意識を集中してみた。
すると、頭の中に”マジックバックの登録を認証しますか”という文字と”はい、いいえ”という選ぶ文字、そして、使用者の名前記入蘭が浮かんだ。
というわけで、キルスはさっそく”はい”を選んだ後、使用者名に”ファルコ”と入れた。
「……よし、これで、父さん専用のマジックバックになった。あとは……」
それから、キルスは試しに、マジックストレージの中身をいじり、エンシェントドラゴンの尻尾をファルコの名前が入ったフォルダに入れた。
「どう、父さん、頭に何か浮かばない」
「頭に? えっと……あっ、これって」
ファルコの頭にはエンシェントドラゴンの尻尾という単語が浮かんでっ来た。
「それを取り出すってイメージしながらマジックバックから手を出してみて」
「う、うん」
キルスに言われた通り、ファルコはエンシェントドラゴンの尻尾を取り出すイメージをしながら手をマジックバックから出した。
すると、何処からともなく出てきた大きな塊がテーブルの上に置かれた。
「うわぁ」
「えっ、どこから?」
突然出てきた塊にエミルをはじめとした家族全員が驚愕した。
「それは、エンシェントドラゴンの尻尾だよ。父さんがマジックバックから取り出したんだ」
「す、すごい」
「お父さん、すごい」
「凄いのは、キルスだけどね。それにしても大きいわね」
レティアはエンシェントドラゴンの尻尾の大きさに感心していた。
「ほんと、危なかったからね。それより、父さん、それで何か作ってよ」
「あら、いいわね」
「食べたい」
「食べられるの、それ」
「う、うん、食べられるよ。ドラゴン料理っていうのは実際にあるからね。でも、いいのかい、キルス」
「当然、というか、そのために持って帰ってきたんだから」
そう、キルスはエンシェントドラゴンの肉をファルコに調理してもらうためにマジックストレージに納めてきたのだった。




