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第236話 戦争終結

 帝国との戦争が始まり、キルスは全力をもって右翼前衛を殲滅した。

 一方で、シルヴァーもまた左翼前衛を殲滅したのだった。

 それにより、帝国軍は一旦引いたのことで、キルスも余裕が出て自陣へと戻っていった。


「ふぅ、これで帝国は60万までは減ったな」

「……わかってはいましたが、とんでもない実力ですわね」


 サリーナが感心したような呆れたような顔でそういった。


「こっちもだいぶ集まってきたみたいだな」

「ヤッホー、キルスお待たせって、ねぇ、やりすぎじゃない」

「……」


 王都から軍を転移でもって運んできた玲奈と幸がキルスに合流して青ざめながらそう言った。

 玲奈は平和な日本から転移してきた普通の女子校生で幸もまた江戸時代から転移してきた町民の娘、ともに死とは別世界からやって来ていた。

 そのため、目の前でキルスが行ったことにかなり引いていた。


「俺もそうは思うけど、こっちの戦力を考えるとな。こうしないとこっちがやばい、ていうかこれでもまだ、差はかなりはあるぞ」


 キルスが言ったように、玲奈と幸が連れてきた戦力は国軍3万と騎士1万、1人一階に運べるのが1万として、2人掛かりで2回往復した計算となる。

 これにより、キリエルン王国軍が4万2千となったが、それでも帝国軍残り60万には遠く及ばない。


「オルスタン殿ですな」


 そんなときにキルスに声をかけてきた人物がいた。


「あっ、コリアータル侯爵ですね」

「そうだ。先ほど貴殿の力遠くながら見せて頂いた。まさに一騎当千、いやまさか単独で20万の兵を殲滅、従魔を合わせれば40万とは驚愕を通り越して畏怖すら覚えます」

「ははっ、まぁ、ですが後はお願いしてもよろしいですか。俺も2人と同様転移で兵を呼んでこなければなりませんから」

「それは、任されよう」


 コリアータル侯爵というのはキリエルン王国軍務将軍職を任されている人物であり、いわゆる戦争指揮のプロフェッショナル。

 それにたいして、キルスは領主になったばかりで指揮などを勉強している最中であり、こういった大規模戦闘など指揮が出来ない。

 そこで、専門家に任せるという形を取ったのであった。


「閣下、ご無沙汰いたしております」

「おおう、フェブロか、久しいな。まさか、おぬしとまたこうして戦場をともにする日が来るとは思わなんだぞ」

「こちらもでございます」


 フェブロは元国軍で大佐の地位にいたことで、侯爵の補佐をしたことがあった。


「キルスよ、後はわしらに任せ、お前たちは予定通り兵たちを連れてくるんだ」

「ああ、わかってる。それじゃ行ってくるよ。コリアータル殿、失礼します」

「うむ」


 そうして、キルスは一旦戦場を専門家たちに預け、王都へ飛んだのだった。


 その翌日、体制を立て直した帝国軍が再び陣形を組んで再侵攻を開始した。


「かかれー!!」


 それを見た王国軍もまた陣形を整え、これを迎え撃つ。

 夜にキルスと玲奈、幸の3人で王都と幾度となく往復したことで、現在王国軍は50万まで膨れ上がっていた。

 これはまさにキルスの膨大な魔力をフルに使ってのものであった。

 ちなみに、キルスが一度に運んだ兵の数は10万、この数の理由はキルスの限界ではなく兵を集めた場所の限界であった。

 それでもまだ10万の戦力差があり、これを埋めるのは先ごろ王国軍を苦しめたサリーナの魔獣軍団とシルヴァーである。


 こうして始まった大規模戦である。



 数日が経過したが戦争はいまだ続いていた。

 しかし、魔力が回復したキルスにより、追加で10万の兵を足したことで、一気に戦況は変化しついに帝国軍を追い返すことに成功した。


 この時王国軍は追撃も逆侵攻も行わなかった。

 それというのも今回は侵攻されたからといってどの地も奪われえていない。

 なら、わざわざ無駄に領地を増やすこともないだろうと、キルスの意見に国王が賛同したことで決まったことであった。

 これにて、戦争終結であった。



 戦争終結から数日、キルスは戦場となったエリアンテ荒原にいた。


「兄さんも無事でよかったよ」

「そうだね。キルスのおかげだよ」


 キルスの話し相手はオレイスで代官を務めているオルクである。

 オレイス方面も帝国軍が50万とやってきていたが、そこはキルスがすでに戦力を整えていた。

 戦力の元となったのは、ボライゲルド侯爵である。

 侯爵領は隣と距離も近く、キルスと玲奈、幸の3人で10万の兵を集めた。

 また、他にもフェブロを通した親戚であるフェルードナルド侯爵から20万の兵を借り、コルスを通した親戚であるレジナルディ辺境伯から10万、計40万をそろえたのである。

 足りない10万はどうしたのかというと、それはシルヴァーが眷属を1万召喚したことで問題は解決した。

 フェンリルには魔狼王と呼ばれるだけあり、魔狼を眷属として召喚することができる。

 これは、魔狼のなかでもフェンリルだけが持つスキルである。


「俺は頼んで運んだだけだよ」

「それでも、助かったよ。それにこの子たちにも本当に助けられたよ」


 そう言ってオルクは近くにいた魔狼をなでている。

 この魔狼はシルヴァーの眷属でエルダーウルフというフェンリルに次ぐ地位にいる魔狼だ。

 本来、人間になつくことはない誇り高い魔狼であるが、シルヴァーの眷属のためになつきやすくなっていた上にオルクが作った料理にほだされ、今やオルクの従魔となっていた。


「はははっ、さすが兄さんだよな」


 たとえシルヴァーの眷属でも誇り高い魔狼を従魔にしてしまうところがまさにオルクだとキルスは感心している。

 それを言うならフェンリルを従魔としたキルスは何なんだと言いたいだろうが、キルスとシルヴァーの場合、前世の記憶があったからであり、普通なら不可能である。


「旦那様、そろそろお時間でございます」

「おう、今行く」


 キルスとオルクが会話をしているとメリッサがキルスを呼びに来た。

 これから、今後についての会議が行われることになっているからだ。

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