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第234話 100万対2000+100+1+1

 帝国が再び王国に侵攻を開始した。

 しかも今度は帝国にあるほぼ全戦力を掲げてものだ。

 これには、さすがのキルスも呆れると同時に戦慄した。


「さて、始めますか」

「ええ、そうですわね」


 キルスの言葉を受けたシルヴァーは地上に降り立った。


「我等がサリーナ皇女殿下を誘拐せし、不埒者に告ぐ。即刻殿下をお返し願おう。さもなくばこのまま蹂躙することになろう」


 シルヴァーが降り立ったのを見た帝国将校がキルスに対して誘拐犯扱いしてきた。


「誘拐って、ひでぇ言い草だな」

「そうですわね。ですが兵たちはわたくしが出奔したことは知らされていないでしょうから士気をあげる方便かと思いますわ」

「まぁ、そうだろうな」


 サリーナは美しい姫であるから、一般兵からしたらその姫を攫ったキルスは許しがたい誘拐犯である。

 彼らの心情はまさに誘拐された姫を救い出す勇敢な騎士である。


「返答はいかに」


 キルスが答えないことで帝国将校は改めて返答を聞いてきた。


「サリーナは自ら出奔した。よって帝国に帰ることはないだろう」


 キルスの返答はノー、これは当然である。キルスのいう通りサリーナは出奔し帝国に帰るつもりはないのだから。


「ならば、蹂躙されるがよい、かかれー!!!」


 帝国将校はさっそく兵たちに戦闘開始を告げた。

 その瞬間、けたたましい雄たけびとともに100万の兵士たちが動き出した。


「まぁ、そうなるよな。サリーナ、まずは俺たちで削るぞ」

「ええ、心得てますわ」


 100万の敵兵に対して、キルス側の兵は2000数から考えると圧倒的に不利な状況である。

 しかし、キルス側にはかつて帝国からの侵攻を受けた際、王国を苦しめた魔獣軍団が力を増した状態でそっくりそのまま味方となっている。

 また、その魔獣軍団を圧倒した魔狼王フェンリルことシルヴァーと、前世において勇者だったキルスがいる。

 そして、兵の中にもレティアをはじめキルスの家族がそろっていた。

 つまり、量では圧倒的に少なくとも質では優っているのである。

 尤も、どんな時でも不確定要素というものはありキルスもまた油断はしていない。


 そうして、始まった戦争まずは左右に別れた敵兵に対して、サリーナの魔獣がそれぞれ20体帝国兵へと踊りかかった。


「うわぁ!!」

「うぎゃぁ!」


 以前は味方だった魔獣軍団に襲われて帝国兵は死屍累々となった。

 これにより、数百の敵兵が戦闘不能に陥ったのだった。


「まだまだだな。仕方ない、シルヴァー左を頼む。俺は右だ」

「バウン」


 魔獣軍団で数百倒したといっても、それでも敵の数はまだまだ多い、そこでキルスも出張ることとなった。

 本来なら大将であるキルスが自ら出ることは下策ではあるが、キルスの力量を考えると全く問題ない。


「とはいえ、さすがに中央を無視はできないからな、サリーナ中央に残りを配置しておいてくれ」

「ええ、わかっていますわ」


 キルスとシルヴァーが左右に向かってしまうと、中央の敵が進軍を開始してしまう。その警戒をサリーナに頼むキルスであった。


「かなり削らないと、こっちの戦力の投入しようがないからなぁ。シルヴァーちょっと本気で行くぞ」

「バウ!」


 気合を入れて、キルスとシルヴァーはそれぞれ左右の敵兵めがけて躍り出たのだった。

 ちなみに、大将たるキルスが離れたオルスタン兵の指揮はフェブロが担っていた。


「フェブロさん、我等は必要でしょうか?」


 そんなフェブロに対していまだ仕事がないヤジルートが思わずこぼした言葉だった。


「なに、確かにキルスとシルヴァーがいれば大体の敵は倒せよう。我らの仕事はあ奴らがこぼした敵を屠り時間を稼ぐことだ」

「時間ですか?」

「今、嫁たちが国軍を呼びに行っておる」



 フェブロの言う嫁というのは当然キルスと結婚した玲奈と幸のことである。

 2人は現在、王都へ赴き陛下や宰相と謁見を果たしていた。


「ふむ、サリーナ殿の話を聞いた時からこのような事態となることはわかっていたが、まさか100万の兵を投入して来るとはな」

「さすがに、そこまで思いも寄りませんでしたな。陛下」

「全くだ。しかし、こちらには転移がある。玲奈嬢、幸嬢済まぬが、我が兵をキルスへ送り届けてはもらえぬか」

「は、はい、そのつもりで来ましたから、しかし、私たちでもそこまで多くの兵を運ぶことは出来ません」

「であろうな。して、どのくらい運べるのだ」

「私たちでできるのは……」


 玲奈と幸も異世界転移の影響でそれなりに膨大な魔力量を持っている。

 もちろんキルスに比べれば少ないが、それでも王都から戦場までであれば、最大で一度に運ぶとすれば1万がせいぜいである。


「一万とな!」

「まさかそれだけの数を転移できるのですか?」


 一方で国王と宰相は驚愕していた。


「はい、実はこういった利用を考えてキルスもすべてを話していたわけではないのです。まぁ、膨大な魔力を必要とするということは本当ですが、私たちはそもそも魔力量が膨大ですから」

「うむ、なるほど確かにマジックストレージといい、キルスが持つ力を戦争で使用すればとんでもないな」

「はい、しかし今回ばかりはさすがに相手が100万となると、いくらキルスでもかなりまずいので」

「であろうな。うむ、理解した。宰相さっそく兵を集めよ」

「はっ」


 こうしてキリエルン王国はすぐさま1万の兵を集め、玲奈と幸により戦場へと運ばれたのだった。

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