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第21話 ソルケイ川の掃除

 キルス達新人冒険者たちの初仕事は、ソルケイ川の掃除となった。

 その川は、自然の川ではなく人工の川で、雨や各家庭から排出される多少の汚れを持った水などが流れる側溝の行きつく先として作られた。

 そのため雨と一緒に流れた土などがヘドロとなり溜まり、臭い川となっている。

 ということから、当然街のど真ん中あるわけではなく街の端、防壁のそばに存在している。

 ちなみに、ソルケイ川を流れる水は最終的にはフィルターの魔道具をもって、汚れなどを取り払ってから街の近くを流れる川へと流されている。

 また、各家庭で排出される汚水、つまりは下水は地下を流れ、スライムに処理をさせている。

 このスライム処理、スライムが増え下水道が一杯となりあふれ出てきてしまうのではと思うかもしれないが、かつてこのことは研究されわかったことだが、なぜかスライムという魔物は空間に置いて7割を占めるとそれ以上増殖しないという性質がある為に問題ないということだ。


 とまぁ、そんなわけでさっそくキルス達は掃除道具を手に持ち、ソルケイ川がある街の西側の防壁へと向かった。


「掃除か、面倒だな」


 ガイネルがそういった。


「ほんとだぜ、しかも、ドブなんだろ」


 ビルもまたいやそうな顔をしている。


「仕方ないわよ、私だって嫌だけど、街にとっては必要な事なんでしょ」

「まぁな、確かに近づくと臭いけど掃除しないと、大雨降った時に冠水とかして最悪だからな。って、おっ、見えてきたぞ」


 そんな話をしているとソルケイ川が見えてきた。



「確かに、ちょっと臭いわね」


 ソルケイ川に近づいてくると漂ってくるにおい、その匂いにシャイナは布を口と鼻に当ててそういった。


「確かにな」


 それにはキルス達、男衆も同様であった。


「とにかく、さっさとやってしまうか」

「だな」


 キルス達はさっそく掃除を始めることとした。それというのも今回の仕事は基本1日中となるが、指定されたノルマを達成すれば終了となる。

 ノルマといっても、その日に終わらないからといって失敗というわけでも、明日に持ち越しというわけでもない。

 それなら、のんびりと1日やれば楽なのではないかという話もあるが、実は掃除した分が報酬となるために、ノルマより少ない分は報酬がもらえないし、何よりあまりにも進んでいない場合はサボっていたとみなされてしまうのだった。


 というわけで掃除開始である。

 掃除をするためには川の中に入らなければならない。しかし川の水を抜くということは出来ないしなにより、この世界には胴長(胸当て・ズボン・靴が続きになったゴム製の衣服)とよばれる物がない。

 そのために普通の服を着た状態で川に入らなければならない。

 そんな格好で入れば、その服はヘドロまみれとなり、水にぬれてびしょびしょだ。

 そうなればその服は捨てるしかないし、何より気持ちが悪い。

 そこで、それを回避するために魔道具を使う、これは体の表面に風をまとうことによって水などから身を守るものだ。

 これは本来水の中で仕事をする漁師などの為に作られたものだが、こういった川掃除に使えるということで以前の冒険者が採用し現在標準装備としてギルドが貸し出しをしているものだ。

 その魔道具を発動し風をまとう。


「これで、本当に大丈夫なのか」

「これまでの冒険者たちが大丈夫だったんだから大丈夫だろ」


 ガイネルが不安となりビルがそれを大丈夫だという。


 それから、キルスはギルドから預かってきた鍵を取り出し川岸の柵の扉を開けた。


「それじゃ、やるか」


 そうして、護岸に設置されていたはしごを降り川の中に入る。


「おっ、ほんとだ、冷たくもない」

「ほんとだ、これなら汚れないわね」


 川に入った瞬間水の冷たさを感じないことでビルが喜び、続いて服が汚れないことにシャイナが喜んだ。


「確かに、すげぇな、これ」


 キルスは心底感心していた。


 そんな風に一通り感心した後、さっそく作業を開始した。


 その作業は簡単でスコップを使って、ヘドロを掘り起こしてバケツに入れる。

 それを、川岸にあげ防壁近くにある所定の場所に捨てる。

 というものだ。作業は基本この繰り返しとなる。


 それをキルス、ガイネル、ビルとシャイナの4人で行っていく。


 ここで、1人足りない、貴族であるサディアスが参加していないことに気が付く。

 というのも、サディアスはドブ掃除など出来るかと言わんばかりに、川に着いたとたんメイドが用意した椅子にどかりと座り、これまたメイドが用意したお茶を飲んでいる。

 キルス達はこれを横目にあきれながら見ていたが、サディアスが参加するとそれはそれで邪魔になると判断して黙っていた。


 しかし、作業を進める中で休憩となったおり、シャイナがサディアスに言った。


「ちょっと、あんた」

「なんだね」


 シャイナに対して、サディアスは少しうっとうしいといった感じに返事した。

 一方、サディアスへの態度に近くにいた執事やメイドは一瞬顔をしかめた。


「言っておくけどね。今日この仕事しないと、明日もこの仕事を1人でする羽目になるわよ」


 シャイナが言ったことは本当で、ギルドから受ける最初の仕事、これをどんな理由があろうとサボってやらない場合、依頼失敗となり当然報酬はないし違約金を払う必要が出る。また、最初の依頼をこなしていないものに、通常の仕事を任せられないので、次の日も同じ依頼を受ける決まりとなっていた。

 そして、1人というのはこれはパーティーで依頼を受けたというわけではないからだ。昔はそうだったらしいが、サディアスのようにサボるものがおり、そのために優秀になり得るであった冒険者が嫌気がさしてやめてしまったという事態が起きたからだ。

 それ以来、この最初の依頼は個人で受けているというていで行われることとなった。

 だから、シャイナとしてはこれは親切心での発言だった。


「ふん、貴様は貴族である僕にそのようなことをしろというのか、それに、君たちが何も言わなければ問題ないだろう」


 サディアスはギルドには仕事をしたと嘘をつくつもりのようだった。しかもそれに口裏を合わせるようにとキルス達に要求した。


「なにそれ、私たちに不正をしろっていうの」


 これにはシャイナも憤慨した。


「貴族である僕を助けるのは愚民である君たちの仕事だ」


 サディアスはすべての平民を敵に回すような発言を平然としてのけた。


「ああ、わるいがそれは無理だな。なにせお前は気が付いていないみたいだけど、俺たちを監視しているやつがいるからな」


 そんなサディアスの目論見をキルスは真実をもって破ったのだった。


「えっ、監視、そうなの」


 この発言にはキルス以外全員が驚いた。


「ああ、俺にもどこからというのはわからないけど、間違いなく監視している奴がいるぞ」

「はっ、そんなことで僕が掃除などするはずがないだろう」

「まぁ、そこはお前の勝手だろう、俺たちには関係ないしな」


 というわけでキルス達はそれ以上サディアスと話すのをやめたのだった。

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