第194話 予想以上の問題
街を治める。
そんな才能も知識もない、そんな一般時でしかないキルスではオルスタンを治めるなんてことはできない。
そのため、代わりに街を治めつつキルスに指導をする家令が必要になる。
本来であれば、これはキルス自ら雇う必要があるが、冒険者であったキルスではそのつてもない、そこで王国から用意することとなった。
しかし。、国王から選出を任された宰相は悩んだ。
というのも、めぼしい人物は軒並みすでに家令として他家により雇われていた。
そんなとき、思い出したのが自らの家で雇っている家令、ソバイラスから聞いていたことであった。
それによると、彼には孫が居りその孫が女ながらに才能にあふれているという、それを聞いたとき宰相はなんてもったいない、そう思った。
なにせ、女では法律上問題ないとはいえ、その才能を生かせる職につくことができないからだ。
なら、自分の家で雇えばと思うがこれも難しい、宰相自身は男だ女だという考えはないが、宰相の家令が女では問題視する貴族が多数いるからだ。
「そうですね。オルステン殿であれば、問題ないでしょう。なら、彼女に任せますか」
そんなわけで、ソバイラスの孫メリッサが呼ばれたのであった。
「才能があるのなら、こっちから頼みたい、よろしく頼む」
「はい、ありがとうございます。誠心誠意お仕えいたします」
宰相の思った通り、キルスは即答で雇うことを決断したことで、宰相はホッと胸をなでおろしたのだった。
「えっと、それでいつから来れるんだ。俺としては、早いほうがいいんだけど」
キルスはメリッサに向けてそう尋ねた。
現在街はようやくキルスたちに心を開き始めているとはいえ、すぐにでも統治を始めなければならない状況にあるといってもいいだろう。
しかし、キルスでは何からやればいいのかすらわからないのであった。
「すでに、準備は整えて居ります故、今すぐにでも可能です」
メリッサは、宰相からも事前にキルスなら問題なく雇ってもらえると聞いており、不安ではあったがすぐに旅立てるように準備だけはしていた。
「そうか、ならさっそく行くか」
「はい」
「それでは、宰相様失礼します」
「ええ、メリッサをよろしくお願いしますね」
「はい」
「メリッサ、頑張りなさい」
「はい、おじい様」
そうして、キルスとメリッサは宰相の部屋を辞した。
そんな2人が向かったのは王城近くにある宰相の屋敷。
ここには、メリッサの荷物があるとのことでやってきた。
「これか?」
「はい、ですがこのように大量の荷物、本当によろしいのですか?」
メリッサが心配するようにそこには大量の荷物が置かれていた。
「ああ、問題ない」
キルスはそういうと、メリッサの荷物はすべてマジックストレージに納めていった。
当然ながら、突然荷物が消えたことにメリッサは驚愕していた。
「す、すごいです。それが、マジックストレージというものでしょうか?」
「ああ、まぁな。これがあればどんな大量の荷物だって運べるってわけだな。まぁ、おかげで街の住人たちの食糧には困らないんだけどな」
「確かに、それがあれば大量の食糧を確保できるでしょう、素晴らしいです」
「おう、じゃぁ、今度はオルスタンに行くか」
「はい」
「そんじゃ、転移」
事前に転移スキルのことは話していたが、転移という初めての経験を前にメリッサはやや緊張の面持ちだったが、キルスはその場ですぐに転移した。
「えっ、急に……まさか、ここは?」
「ここがオルスタンだ」
「あっ、キルにーちゃ」
「おかえりー」
キルスがオルスタンの屋敷庭に転移すると、ちょうど庭で遊んでいたキャシアとミレアがキルスを見つけて走ってやってきた。
「ああ、えっと、聞き忘れていたけど子供は……問題なさそうだな」
キルスはふと思い出したようにメリッサに子供は大丈夫かと聞こうと思ったが、メリッサの表情を見た瞬間に悟った。
これは、大丈夫そうだと、間違いなくメリッサは子供好きだということを理解したのだった。
「……か、かわいい」
メリッサはキャシアとミレアが走ってくる姿を見て、思わず素でそうつぶやいていた。
「キルにーちゃ、おかえりー、このひとだーれ?」
「だーれ?」
キャシアとミレアは双子なだけあり、同時に首をかしげた。
その様子がよほどかわいかったのか、メリッサは悶えていた。
「ああ、この人はメリッサ、今日からここで働いてくれる人だ。お前ら、挨拶しな」
「うん、キャシアだよ」
「わたし、ミレア」
「……はっ、し、失礼しました。わたくしはメリッサと申します。キャシアお嬢様、ミレアお嬢様」
メリッサは子供相手でも丁寧に挨拶をした。
その後、屋敷内を歩きながら出会った弟妹達と挨拶を交わしつつ、キルスとメリッサは執務室へとやってきた。
「とりあえず、散乱していた書類とかを片づけて、そこにまとめておいたから、見てくれるか」
「はい、お任せください」
メリッサはさっそく書類を見始める。
本当なら、まず私室となるような部屋に案内し、落ち着いてからとキルスは思っていたがメリッサからさっそくこの街の状況を見たいということで、執務室へと案内したのだった。
それから、数分書類を眺めていたメリッサは深いため息をついた。
「どうだ?」
「はい、これは思っていた以上にひどい状況だと判断いたします」
そう言いつつ、やりがいを感じているのかその目はやる気に満ち溢れていた。




