第19話 結果発表
前話で夜営と表記していたものを野営と直しました。
すべての試験を終えキルス達はバイドルの冒険者ギルドに帰ってきた。
「あら、おかえり、キー君、それと、みんなも試験どうだった」
ギルドに入ると、素早くニーナがキルス達に声をかけた。
「ああ、疲れたよ」
キルスは肉体的より精神的に疲れた様子を見せた。
「ほんと、疲れました」
「まったくだぜ」
「だな」
それに対してシャイナは両方疲れ果てており、ビルとガイネルも肉体は大丈夫を装いつつもやはり隠しきれていなかった。
「だから、ゆっくりと休んでおきなさいって言ったでしょ」
ニーナは、キルスにまさに言った通りだったでしょと言わんばかりにそういった。
「ほら、お前ら、さっさと2階に上がれ」
ニーナと話しているキルス達にゲイルクはすぐに2階に上がるようにと促した。
そうして、移動した場所はギルドの2階にある会議室だった。
「試験ご苦労だった。これからお前らのランクを発表する」
開口一番にゲイルクはキルス達受験者をねぎらった。
合否ではなくランクの発表というのは、単純に登録試験というものは冒険者になれるかなれないかの試験ではなく、冒険者となった時の最初のランクを決めるためのものだった。
それというのも、冒険者は基本誰でもなれるものでなるための試験など本来必要ないからだった。
それではなぜ試験をと思うが、これはキルスを見ればわかるように、新人冒険者にも力の差があるという事実からギルドが長年かけて考えたものだった。
例えば、試験で戦闘能力も野営能力もないものでも冒険者となれてしまうというわけだ。そのものは当然そのまま討伐依頼を受けろとは当然言えない。
そこで、Hランクというものがある。このランクで受けられる仕事は主に街の中の雑事となる。例えば街の中にある店の手伝い、大工など職人の手伝い。また、街の中にある側溝の掃除などとなる。
もちろん、そんなHランクにはギルドで無料で戦闘訓練などを受けることができる。つまり、Hランクとなったからと言っても、ちゃんと訓練を詰み戦闘能力などを身に付けたとギルドが判断すればランクが上がり討伐などの依頼を受けることができるというわけだ。
実際、過去HランクからスタートしてBランクまで上り詰めた猛者もいる。
また、中には最初からHランクを目指している者もおり、そういうものは登録試験を受けることなくHランクの冒険者となれる制度もある。
ということでランクの発表となるわけだ。
「まずは、ガイネルからだ」
「おう」
ゲイルクが呼ぶとガイネルが返事をした。
「お前さんはの戦闘能力は、まだ粗削りだが悪くない、ちゃんと訓練と経験を積めば高位の冒険者にもなれるだろう。それに野営能力も問題ない。というわけで、Fランクとする」
「ちぃ、Fか、まあいいか」
ガイネルはFランクに少し不満のようだが、自身が今だ未熟なのは、昨日の戦闘試験でわかっているために納得した。
「次は、ビル」
「おっ、おう」
ビルは少し緊張した面持ちで返事をした。
「お前の戦闘能力はかなり高い、今は経験が足りないから、俺に負けたが、いずれは俺を越えるかもな。それに野営も問題ない。ということでEランクだ」
「よっしゃぁ」
ゲイルクからの高い評価と登録試験においての最高ランクにビルは喜んだ。
「次はシャイナ」
「はい」
シャイナは、ビルとは対照的にリラックスしながら聞いていた。
「シャイナは、戦闘能力は決して高くはない、だが、シーフ希望ということと、その動きの素早さ、俺相手にした粘り強さ。それと野営も問題ないことや、聞いたがビルと組むそうだしな、それらを加味してEランクとする」
「やった」
「まじかよ」
シャイナはビルのおまけみたいに言われたのが少し不満だったが、一応は褒められたので嬉しそうだった。
そして、ビルとシャイナが続いてEランクという自分より高いランクで、ガイネルは悔しがっていた。
「さて、次は、キルスなわけだが……」
「ああ」
キルスの番となり、キルスも自分がどのランクになるかをわかっているために特に緊張もせず聞いた。
「お前さん、事前に聞いていたとは言え、強すぎだ。まさかあれほどとは思わなかったぜ。というわけで、戦闘能力は文句なし、それに野営も文句どころか別の文句を言いてぇよ。というか、本来ならBランクとしたいぐらいだが、これは登録試験だからな。Eまでしかやれねぇ、というわけでEランクだ」
ゲイルクは評価というより文句に近い言い方をしながらそういった。
「悪かったな」
だからこそキルスもそう答えるしかなかった。
こうして、キルス達のランクが決まったところで、次は問題のサディアスの番となった。
サディアスは最初、貴族である自分がなぜ最後なのかと文句を言っていたが、ゲイルクはこういった貴族の相手になれているのか、貴族だからあえて最後だというとおとなしくなった。
「さて、最後にサディアスだが、戦闘能力については、キルス同様文句はない、それだけ見れば間違いなくBランク相当だろう」
ゲイルクの発言にサディアスは当然だと言わんばかりにうなずいた。
「僕としては、Aランクがふさわしいと思っているがな」
それでも、自身はBランクであるゲイルクを倒したのだから当然Aランクにするべきだと言った。
「だが」
ゲイルクはサディアスの言葉に苦笑いした後、話を続けた。
「野営試験については0点だ。よって、Fランクとする」
「なっ」
サディアスは思ってもないことに驚愕した。
「ふざけるな、僕は貴様に勝ったのだぞ。なぜ、その僕が平民ごときよりもランクが下なんだ」
サディアスは自分のランクがFであることに納得いっていないようだった。
本人としては当然だろう、何せサディアスはBランクであるゲイルクに勝つほどの戦闘能力を持つのだから、しかし、キルス達は納得していた。
(あれじゃ、確かに0点だよな)
キルス達が納得した理由それは、サディアスの野営にあった。
サディアスの野営は、一言では野営ではない。キルス風に考えるとグランピングという言葉がふさわしいだろう。
なにせ、野営が始まって、まずなぜか一緒に来ていたメイドが椅子とテーブルを用意し、サディアスはそれに座り、メイドがさらに用意したお茶を飲み始めた。
その間に執事がテントを設営していたのだが、そのテントはキルス達が使うような物ではなく、むしろ戦場で使う天幕と言った方が正しい。
といっても、今回野営試験が行われたのは森の中、そのため普通の天幕では当然設営できないし、執事1人でも無理だ。そのため最も小さい天幕を使っている。
それから、メイドがいつの間にか用意されていた竈で作った野営とは思えないほどの豪華な食事を、まるで宮廷で食べているようにメイドが恭しく給仕し、それを食していた。
そして、極めつけにサディアスは天幕にてぐっすりと眠り、見張りは執事とメイドが行い、周囲をというより起きていたキルス達を最も警戒しながらだった。
最初その光景が繰り広げられて、キルス達もただ茫然と見つめることしか出来なかった。
それほどありえない光景だったのだ、まぁ、実際にサディアスが冒険者となりあの野営をするというのならギルドとしても全く問題ない、しかし今回は試験である。
試験である以上、あの野営は0点となるわけだ。何せ、野営をしたといってもサディアス自身は何もしていないのだから。
その後、吠えているサディアスを置いてキルス達は解散したのだった。




