第183話 反撃
キルスとシルヴァーにより、帝国軍魔獣軍団は全滅した。
「突撃!!」
そんな光景を見ていた帝国軍も王国軍も絶句していたが、ただ1人ゾロテスだけはキルスの実力とシルヴァーを信じていたために戸惑うこともなく大声で王国軍すべてに予定通りの命令を出した。
それを受けた王国軍は、一気に気を取り戻して、それぞれ雄たけびをあげていまだ呆然としている帝国軍に突撃した。
「ふぅ、とりあえず俺の仕事は終わったな」
「アウン」
一方で魔獣軍団を全滅させたキルスとシルヴァーは、周囲を走り抜ける王国軍を尻目に一息ついていた。
「ご苦労だったな、キルス」
「ああ、なかなかに楽しめたよ」
「……さすがだな」
ゾロテスも魔獣軍団には辛酸をなめさせられた。その魔獣軍団のうち5匹を相手に取り楽しめたというキルスに呆れたのだった。
「それで、予定通りか?」
キルスは今後の予定も事前に聞かされていたために、それを確認した。
「ああ、あの調子だと問題ないだろ」
そう言ってゾロテスが見たのは帝国軍相手に奮闘している王国軍たち。
数こそ帝国軍がいまだに優っているが、帝国軍は虎の子たる魔獣軍団が立った1人と1匹のフェンリルに全滅させられたことに動揺し、従前の力を出せずにいる。
それに対して、王国軍はこれまでの恨みなども含めてやる気に満ちている。
そんな両者の戦いは、王国軍に傾いていたのだった。
それを見たキルスとゾロテスはこれならこの戦いは王国の勝利だろうと予測していた。
「となると、次はビランタだっけ?」
「そうだ、奴らはここに来るまでにビランタを落としている。ここで負ければビランタに逃げ込むことが考えられるからな」
帝国軍はここボラッド平原に進軍する前に、ビランタという街を襲撃して占領していた。
つまりここで敗北した帝国軍が引いた場合、すでに占領しているビランタに逃げ込むことは明らかだった。
そうなると、今度は王国軍側の攻城戦となってしまう。
攻城戦をするには敵軍の数倍の兵力が必要といわれているわけで、このままではどう考えても王国軍側の兵力が足りない。
いや、まぁ、シルヴァーがいれば問題ないが、ビランタはもともと王国の街、むやみに破壊したくはないし、民のことが気がかりでもある。
そこで、シルヴァーの機動力を生かし、帝国軍より先にビランタへ向かい解放しようというわけだ。
「それで、ここにいる全員を運べばいいんだよな」
そう言ってキルスが見たのは20人の騎士と10人の兵士、合計30人である。
「言っておくけど、この人数運べないことはないと思うけど、かなりきついぞ」
「わかっている」
シルヴァーは山のような大きさを持っているため、この人数を運ぶのはたやすい、しかしその背中は丸みを帯びているために実質かなりギュウギュウ詰めにする必要があった。
「まぁ、お前らが納得しているならいいか、乗ってくれ」
現在シルヴァーはすでに元の大きさになっていたために、キルスはゾロテスたちにシルヴァーのせに乗るようにいった。
こうして、騎士や兵士たちを乗せたキルスは一路ビランタへと向かっていった。
「あれだな、それにしてもひどそうだな」
「ああ、帝国の奴ら許せねぇな」
上空から見たビランタの街はいまだあちこちから煙が上がっていて、ひどいありさまだった。
「降りたら、奴らが街に近づいてこないようにシルヴァーにはそのまま門の前に陣取っていてくれ」
「バウン」
ゾロテスの指示にシルヴァーが返事をした。
そうして、降りたところでシルヴァーはいわれた通りそのままの大きさで門の前に陣取り、ゾロテスをはじめ騎士と兵士は一気に街へなだれ込んだ。
その背後からキルスも乗り込んだわけだが、その光景は明記は避けるが一言悲惨だった。
それから、キルスたちは張り切って街に残っていた帝国軍を始末してまわったことで、ビランタの街は解放された。
その間、ボラッド平原から戻った帝国軍はビランタに入ろうとして、その前にいるシルヴァーに気が付き、素通りするしかなかったのは言うまでもないだろう。
その後、キルスたちは続いてブレインへと向かい、これも解放した。
もちろん、ブレインもまた悲惨な状態であったという。
こうして、キルスとシルヴァーの活躍により、帝国軍はあっという間に王国を追い出されたのであった。
「くそっ、何なのだ、あれは?」
此度のキリエルン王国侵攻の指揮を任されていた、帝国軍ドロッテルス将軍は歯噛みしていた。
彼はこれまで、数多くの戦場で指揮をしており、これまで負け戦をしたことなど一度たりともない。今回もその功績を買われてキリエルン王国侵攻の指揮を帝国の皇帝より命じられたのだった。
実際魔獣軍団のおかげでまさにあっという間に王国に進軍していった。
だが、フェンリルとはたったい1匹とその主と思われるたった1人の少年によって憚れるどころか、これまたあっという間に押し出されてしまったのだから仕方ないことだろう。
「なぜだ、なぜ、くそがっ!」
敗走という屈辱を味わいながらも体制を立て直そうとキリエルン王国との国境にて、陣営を築いたのだった。
「閣下、援軍がきました」
「おおっ、来たか、して、魔獣どもは?」
「はっ、魔獣軍団50、ともにやってきています」
どうやら帝国の魔獣軍団はキルスとシルヴァーが倒したものですべてではなかったようだ。
「よし、さすがにフェンリルでも50は手こずるはずだ」
その時、王国軍もまた追いつき国境であるノルン荒野にたどり着いていたのだった。




