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第180話 王国陣営

 帝国との戦場となっているボラッド平原に降り立ったキルスは、シルヴァーとともに陣営へとやってきた。


「な、何者だ!」


 それでなくとも敵の魔獣に苦しめられている状況で、突如現れたシルヴァーを警戒して慌てて剣を抜き放った兵士がキルスに剣を向けた。


「俺は、キリエルン王国所属のBランク冒険者のキルスだ。国王陛下より指名依頼を受けてやってきた。ボライゲルド辺境伯様にお目通り願いたい」


 キルスは堂々とそう宣言しつつ、懐から国王のサイン入りの依頼書を提示した。


「なに、Bランクだと、馬鹿な……なっ!」


 兵士は最初キルスがBランクと聞いていぶかしみ、キルスが提示した依頼書に確かに国王のサインと印章が押されていることを見て驚愕した。


「まさか、本物か?」

「もし、偽物だったら、お前」


 兵士もさすがに信じられなかったようで、キルスの持つ依頼書が本物かどうか議論を始めてしまった。

 尤も、もしキルスが持つ依頼書が偽物だった場合、当然国王のサインと印章を偽造したということになり、重罪となる。


「本物だよ。ああ、これは俺のギルドカードな」


 キルスは本物だと伝えると同時に懐からと見せかけて、マジックストレージからギルドカードを提示した。


「ふ、ふむ、た、確かに、Bランク冒険者であることは間違いないようだな。出身地はバイドルか」

「バイドルっていえば……ああ、そうか、お前がキルスか、聞いたことがあるぞ、確か、エンシェントドラゴンを討伐し、フェンリルを従魔にしているとか、もしか、それがフェンリルというわけか」


 兵士の1人はどうやらキルスのことを知っていたらしい。


「ああ、シルヴァーだ」

「そうか、助かる。だが、ちょっと待ってろ、今確認してくる」


 キルスの正体がわかったからか、兵士たちの態度も軟化したが、さすがにこのまま通すわけにも行かず上司に確認しに行った。


 それから、数分後先ほどの兵士とその上司らしき兵士がやってきた。


「貴様が、噂のキルスか、確かに陛下からの依頼であると確認した。中に入れ」


 と言われたことで、キルスはようやく陣営に入って、兵士の後について辺境伯がいるという幕営に向かっていった。



「悪いが、その、フェンリルは中に入れないぞ」

「ああ、わかってる。シルヴァー、そこらで待っていてくれ」

「アウン」


 こうして、キルスは幕営に入っていった。


「貴殿がキルスか、思っていたよりも幼いな」


 キルスが幕営に入ると、ボライゲルド辺境伯がキルスを見てそういった。


「お初にお目にかかります辺境伯様。Bランク冒険者キルスです」

「うむ、ご苦労、さて、依頼書は確認させてもらったが、此度の戦において貴殿の力を貸してもらえるそうだな」

「はい、お任せください」

「あいわかった、それでは追って知らせを向かわせる故、しばし休むがよい」

「かしこまりました」


 辺境伯との面談はすぐに終わりキルスは幕営を出た。

 キルスが出てシルヴァーを呼ぼうとしたら、シルヴァーの周りには多くの兵士や騎士が集まっていた。


「これが、フェンリルか」

「思っていたより小さいな」

「いや、聞いた話によると、フェンリルには縮小化ってスキルがあるらしいぞ」

「まじか、ってことは、本来はもっとでかいのか」

「ああ、でかいぞ。山ほどの大きさだったからな」

「まじかよ」

「すげぇな」

「こいつがいれば勝てるんじゃなぇか」


 といった会話が巻き起こっていた。

 どうやら、中にはシルヴァーの本来の大きさを知っているものがいるようだが、よく見るとそれは騎士で、以前ブレンダー男爵を追ったときにシルヴァーの背に乗った騎士だった。


「んっ、おっ、キルスか」


 その騎士がキルスを見つけ声をかけた。


「ああ、あんたらも来てたんだな」

「当たり前だ。まぁ、何人かは魔獣にやられてしまったがな」


 騎士は若干寂しそうにそういった。


「そうか、そういえばゾロテスはいるのか?」


 王城に行ったときにいなかったことから、ここにいるのではと思った。


「ああ、団長なら向こうにいるぞ。今は無理だが、あとで話すこともできるだろ」

「そうか」


 その後、キルスは兵士に連れられて陣営の端にある冒険者たちが集まっている場所に連れてこられた。


「なんだ、ガキって、そいつはなんだ?」


 キルスの姿を認めたガラの悪そうな冒険者が、キルスを威嚇しようとしたが、その隣にいるシルヴァーを恐れてしまった。


「俺はBランクのキルス、んで、こいつは俺の従魔でフェンリルのシルヴァーだよ」

「なに、フェンリルだと」

「おっ、なんだ。フェンリルだって、ってことはお前が、殲滅の息子ってやつか?」

「ああ、そんな所だ」

「おしっ、これで勝てるぞ」

「よっしゃぁ」


 兵士たちより冒険者のほうがキルスの存在を知っていることもあり、あっさりと受け入れられた。

 彼らとしても、敵の魔獣軍団には疲弊していたということだ。

 そんな時に魔狼王たるフェンリルの登場にわいたのだった。

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