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第167話 突然の逮捕

 スキルの石碑で得た新たなスキル詠唱破棄。

 これは、文字通り魔法を使う際に唱える詠唱を、一々唱えずとも魔法を行使出来るスキルだ。


「これは、ありがたいな。詠唱ってのは、中二病みたいだし、それに戦闘中とか、一々唱えていられなかったんだよなぁ」


 これは真実で、キルスは戦闘中よほどのことがない限り、魔法を使うことはなかった。

 だが、この詠唱破棄を手に入れたことで、詠唱という面倒が亡くなったことで戦闘に幅が生まれたといってもいいだろう。

 尤も、そもそもキルスは詠唱で生まれる隙を極力抑える訓練を積み重ねてきてはいるが……


「さて、まぁ、とにかくここにはもう用もないし、さっさと帰るか……転移」


 キルスは、スキルを得るという目的も、この洞窟などの依頼をすでにこなしているため、いつまでもここにいる理由はないと、すぐにコーダスの街の近くへ転移した。



 それから、街に入りギルドで依頼の報告をし、報酬を受け取ったのち、すぐに街を出て、トーライドへ向かった。


「ただいま」

「あら、おかえり、キルス君」


 キルスはトーライドに付くなりまっすぐ祖父であるコルスの家へと帰った。


「おお、キルス、行ってきたのか?」

「ああ、洞窟の奥にあったよ」

「洞窟の奥か、そういえばそうだったなぁ。っで、そんなスキルを得たんだ」


 リビングでくつろいでいたコルスはさっそくキルスに石碑のことを尋ねてきた。


「詠唱破棄ってスキルだった」


 それから、キルスはコルスに詠唱破棄スキルについて説明していった。


「ほぉ、それは、色々と使えそなスキルだな」

「ええ、本当にね。これで戦闘面でもだいぶ広がるんじゃない」

「俺もそう思う、これまでも、戦闘中に魔法を使うことはあったけど、やっぱり詠唱があるとね」

「そうだな。訓練すれば闘いながらも詠唱は出来るようになるが、それでもそれなりに集中が必要になる」


 魔法の行使とは、詠唱することで魔力を集中し制御、変性を行うことで初めて行使される。

 これには、相当な集中力を要し、通常はその場に立ち止まってしまう。

 しかし、戦闘中に立ち止まるなどありえない。そこで、キルスはレティアより闘いながらも詠唱ができるように幼いころから鍛えれれていた。

 ちなみに、この技術はキルスだけではなく、兄弟の年長者なら全員出来る技術となっている。

 もっとも、キルス以外は戦闘そのものをすることがないために、全く必要のない技術だが……


「それで、キルス君この後はどうするの」

「んっ、ああ、そうだなぁ。スキルを試したいし、ちょうどいい依頼があったら受けに行こうかなぁ」

「ああ、それがいい」

「そうね。いくら詠唱がいらないといっても、慣れておく必要があるわね」


 というわけで、キルスはここトーライドで討伐系の依頼がないが探すために、ギルドへ向かった。


「シュレリー」

「あら、キルス君、ああ、そういえば今日はコーダスに行ってたんだっけ、どうだった?」


 ギルドに付くとまず最初に従姉であるシュレリーの元へと向かった。キルスであったが、シュレリーもキルスが今日新しいスキルの石碑の場所に向かったことを知っているために、こう尋ねた。


「ああ、よかったよ」


 さすがに人の目があるところで、新しいスキルを得たなどと話しにくいのでそういった。


「そう、よかった。それで、何か依頼を受けるの?」

「そのつもり、何か適当な討伐系ってないかな?」


 本来、冒険者が依頼を受けるときは掲示板を見て、自分で見つけてから受付に持っていき受理されれば受けることができる。

 しかし、キルスは受付であるシュレリーに直接聞いた。

 これは、あくまでもキルスがBランクという高位冒険者だからこそ出来る行為であり、Cランク以下の冒険者では出来ない行為だ。

 というのも、Bランクの冒険者はそれほど多くおらず、どの街でも重宝されるということや、そもそも高ランクとなると通常の依頼がほぼなく、直接冒険者に依頼を出すことが多いからだ。


「そうね。ああ、これなんてどう?」


 シュレリーは少し考えてから、机の引き出しから1枚の紙を取り出してキルスに見せた。


「えっと、オーガ?」

「そう、ここから北の洞窟に住み着いたらしいのよ。数は3体だけど、キルス君なら大丈夫でしょ」

「ああ、問題ないな」

「じゃぁ、受ける」

「そうだな。そうするよ」

「はい、それじゃ、受理しました。頑張ってね」


 こうして、キルスはシュレリーに送り出されて、オーが討伐に向かったのだった。

 このオーガは、ファンタジー物でもよく見かける巨大な鬼の魔物で、脅威度Bのかなり強力な魔物となる。

 普通なら数人のパーティーで受けるような依頼だが、すでにBランクの枠すら越えていると言われているキルスなら、1人でも全く問題なく討伐出来るとシュレリーもキルスも判断した。


 案の定、洞窟にたどり着いたキルス、洞窟内は小さくなったシルヴァ―も問題なく闘える大きさであったこともあり、あっさりとオーガを魔法(・・)で討伐したのだった。


 そうして、シュレリーに報告し報酬をもらったところで、キルスのマジックストレージに緊急とかかれた手紙が入れられた。


「んっ?」

「どうしたの、キルス君」


 キルスの様子に目の前でにいたシュレリーが訝しみながら尋ねた。


「ああ、手紙、緊急だって、何だろ」


 そういって、キルスは懐から取り出す風を装って、マジックストレージから手紙を取り出して読んだ。


「……はぇ?」


 書かれた内容が、余りにも意味が分からず、キルスはそんな間抜けな声を出してしまった。


「キルス君?」


 シュレリーはキルスの様子にどんなことが書かれていたのか気になった。

 そんなシュレリーにキルスは何も言わず手紙を手渡した。

 受け取ったシュレリーは首を傾げながらも、その手紙を読んだ。


「……えっ、うそっ、でしょ」


 シュレリーも余りの内容に目を点にして、そうつぶやいた。


 手紙に書かれていた内容、それは、キルスの姉エミルが突然やって来た国軍兵士に逮捕されたという報せであった。

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