第16話 試験開始
ついに冒険者となるべく、キルスは冒険者ギルドへとやって来た。
そこで、併設されている酒場を見ていたキルスに声をかけてきたのはニーナだ。
「キー君、こっちよ」
その瞬間酒場にいた冒険者数人が一斉にキルスを見てきた。また、その中の数人がキルスをにらみつけるように見ていた。
「なんだよ。あのガキは俺のニーナになれなれしくしやがって」
「落ち着けって、ていうか、俺のニーナってなんだよ」
不機嫌そうにそういった男にその隣にいた男がいさめつつも突っ込んだ。
「うるせぇ、そうなるんだよ。それより、お前、あのガキを知っているのか?」
男は、何となくとなりの男がキルスを知っているような気がした。
「はぁ、まぁ、いいや。もちろん知っているぜ。あいつはキルスっていって、そういえば、そろそろ登録出来る年齢だったな」
「じゃぁ、何だあのガキ、まだ冒険者じゃねぇのか」
「ああ、だから今日登録に来たんじゃねぇか、ほら、そんな様子だろ」
「確かにな。それで、何だよあのガキは?」
「キルスな。あいつとは同じ先生のもとで剣を学んでいたんだよ」
そう、男をいさめた隣の男はこの街の出身でキルスとは、ガイドルフのもとでともに修行した仲だった。
「へぇ、それで、強さは?」
男も少し冷静になったのか、キルスから漂う物を感じ取ったようだ。
「強いぜ。たぶん、というか間違いなく、俺たちよりもはるかにな」
「おいおい、俺たちDランクだぜ。そんな俺たちよりまだ登録もしていないガキが強いって、ありえないだろ」
男もさすがにそこまでとは思っていなかった。でも、となりの男の顔を見た瞬間本当だと感じたのだった。
「まじか」
「ああ、まじだ。それで、あの2人の関係だったな。あの2人はお前が心配するようなものじゃない」
「どういうことだ?」
「簡単に言えば姉弟だな」
これが男を含めたガイドルフの弟子たち全員の総意だった。
「姉弟?」
そんな会話が背後しているのを確認しながら、キルスは呼ばれた通りニーナの前にやって来た。
「キー君、まずはお誕生日おめでとう、これで、キー君も念願の冒険者だね」
ニーナは我のことのように嬉しそうだった。
「まぁ、そうだね。それで、ニーナ姉さんが俺の担当になるんだろ」
「もちろん、可愛い弟の担当だもの、他の人になんて任せられないわよ」
ニーナは力強くそう宣言した。
「変わらないな、ニーナ姉さんは」
そんな様子を見たキルスはあきれる一方で、ニーナの変わらなさにほっとしていた。
「それで、さっそく試験会場に行く?」
「そのつもり、ちょっと体も動かしておきたいし」
「わかったわ、それじゃ案内するからついてきてね」
こうして、キルスはニーナの後をついて歩き出した。
「なっ、姉弟だろ」
「たしかに」
そんな男たちの会話を背後に聞きながら……。
ニーナがキルスを連れてきたのは、ギルドの中庭だった。
この中庭は、訓練場となっており、冒険者なら誰でも使うことができ、下位ランクの冒険者たちには、ここで教官から指導を受ける場所となっている。
ちなみに、この中庭の周囲にある建物は、キルスたちが出てきた南側が冒険者ギルドとなっており、西側がギルドに併設された宿屋、ここはお金のない下位ランクの冒険者や登録試験にやって来たが、タイミングが合わず受けられなかったものなどが泊る場所だ。
そうして、北側と東側にギルド職員の男子寮と女子寮となっている。
この寮というのは、単純にギルド職員を守るためのものだ。というのも、ギルド職員というものは、どこかで恨みを買うことがある(たいていは逆恨み)。
そのため、ギルドの外に家があるとその道中に襲われるという事態となりえるからだ。また、女性職員、特に受付嬢となると冒険者たちの受けをよくするために、見目麗しい若い女性を採用しているだけあって先ほどの男のように懸想し、中にはストーカーのようになるものまでいる。
そういった者たちから守るために、ギルドで囲う必要があるための寮となる。
ということで、ニーナは現在キルス達の家であるファルコ食堂を出てギルドの寮で暮らしている。といってもファルコ食堂とギルドは近いために、ニーナは週に何度か休みの日には必ず帰ってきては、弟妹の世話をしているというわけだ。
「ここで、試験があるからね」
「うん、それで他の人とか来ている?」
「来ているわよ。ほらあそこの2人がそうよ。話しかけてみたら」
「そうする」
「それじゃ、応援したいけどお仕事あるから行くわね。頑張ってね」
「うん、ありがとう、ニーナ姉さん」
それから、ニーナはキルスに手を振りながらギルドの中に入っていった。
「さてと、あの2人だったな。挨拶ぐらいはするか」
「えっと、登録試験を受けるんだよな」
キルスはまずは試験を受けるのかどうかを確認した。
それとういうのも、ニーナから教えられたとはいえ、周囲には多くの冒険者たちが訓練していたからだった。
「そうよ、あなたも」
「まぁね」
「へぇ、おまえがねぇ、大丈夫なのかよ」
「ちょっと、ビル」
キルスが声をかけた2人は男女の2組で、男の方はビル、大きな体躯をした戦斧を持った戦士で、いかにも強そうな男だった。
一方、そんなビルをいさめた少女は、小柄で小剣を腰に携え、おそらくシーフと思われる美少女だった。
「はははっ、そっちはだいぶ強そうだな」
キルスは、特に気にした風もなくビルの強さを褒めた。
「まぁな、それなりに自信はあるぜ」
ビルはガハガハと笑いながら腕をあげて自慢げにそういった。
「また、そんなこと言って、あんたが強いのは村で、でしょ」
どうやら、この2人同じ村の出身のようだった。
「うるせぇぞ、シャイナ」
ビルとシャイナはいいコンビのようではたから見ると夫婦漫才に見えた。
「2人はパーティーを組むのか」
キルスはちょっとした疑問を投げかけた。
「こんなところで、登録試験とやらをやるのか」
その時そんな声とともになんとも偉そうな少年が中から出てきた。
「なんだ、あれは?」
ビルが首をかしげながらそうつぶやいた。




