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第156話 逃がすな!

新年あけましておめでとうございます。

2022年最初の投稿です。

本年もよろしくお願いします。

 キルスの剣である魔剣エスプリートの偽物を、鍛冶師コルダスに依頼した元騎士デリアルト。

 その父親であるブレンダー男爵には王国を裏切ろうとしているという、とんでもない嫌疑がかかった。

 騎士団長ゾロテスはそんな男爵とともに王都を発ったデリアルトを確保するためとにかく急いで追跡の準備を整えた。

 だが、その前にゾロテスにはことの経緯を被害者であるキルスに説明することにした。


「……以上となる。すまない、キルス、おそらくだが、取り戻すのは難しいだろう……」


 キルスたちを前にソファ居座り、悲痛な表情でゾロテスはそういって謝罪した。


「頭をあげてくれ、ゾロテス」

「しかし」


 頭をあげるようにとキルスがいうも、ゾロテスはなかなか頭をあげない。


「それに、別に取り戻せなくなったわけじゃないだろ」

「いや、正直、かなり難しい。犯人のデリアルトはすでに6日も前に王都を発っている。奴らが領地に戻るのなら問題ないが、ブレンダー男爵は帝国に向かう可能性が高い、そうなると」


 おいおい手は出せないと、ゾロテスは言った。


「なるほどな。でも、ようは、追いつけば問題ないってことだろ」

「そうだ。しかし、追いつくのは容易ではない」


 普通に考えればその通りだろう。


「だろうな。でも、シルヴァ―なら、追いつく」

「なにっ、本当か!」


 キルスの発言にゾロテスは思わず下げていた頭をあげた。


「ああ、シルヴァ―の種族は知っての通りフェンリルだ。フェンリルっていうのは魔狼王、そういわれる通り、あらゆる魔狼のスキルを使いこなせる。んで、魔狼の中には空駆けってスキルを持つ奴もいるんだ」

「っ! まさか!」

「そのまさかだ、シルヴァ―は空駆けのスキルを持っている。それを使えば馬車で6日なら、数時間もあれば追いつける」

「おおっ、それは! いや、しかし……」


 今回の事件の捜査は騎士団に任せてほしいとキルスに捜査の参加を断った、にもかかわらず犯人を追い詰めるのにキルスの力を借りるというのはどうなんだ。

 しかし、ここでキルスに力を借りなければデリアルト及び、ブレンダー男爵にも逃げられてしまう。

 だとしたら、ここは恥をしのんで借りる他ないのではないか。

 ゾロテスはそう考えた。


「……すまない、キルス頼めるか?」


 ゾロテスは再びキルスに頭を下げてそういった。


「それはもちろん構わないぞ。ていうか、そうしないとエスプリートも戻らないのだろ」

「あ、ああ、本当にすまない」


 その後、キルスを伴ったゾロテスは事情説明のために宰相に面会を求めた。

 宰相も先ほどあったばかりのゾロテスが、再び面会を求めた来たことに訝しみながらも、すぐに応じたのであった。


「して、どうしたのだ騎士団長。それに、キルス殿まで」


 キルスまで一緒に来ていることにさらに訝しむ宰相だった。


「はっ、ブレンダー男爵は6日前に王都をすでに発っておりますので、どうあっても我々では間に合いません」

「ふむ、それはわかっている。だからといって追わないわけには行かないだろう」


 たれればの話となるが、もしかしたら何らかの事情により、ブレンダー男爵が立ち往生しているとも限らない。

 だとすれば、今から全力で追いかければ捕らえれらる可能性がある。


「はい、私もそう考えております。しかし、その前に被害者であるキルスに報告したのですが」

「俺の従魔であるシルヴァ―なら、空を駆けることができます。なので、シルヴァ―に乗っていけばすぐに追いつけます」


 ゾロテスの説明に続きキルスがシルヴァ―のことについて説明した。


「そのようなことが、確かにそれなら確実に捕らえることができるわけですね」


 宰相もいくらキルスが平民でも今回の被害者という立場にあるために一応敬語を使っている。


「はい、シルヴァ―の足なら数時間もあれば追いつけるかと」

「おお、なんとっ……うーむ、キルス殿、お願いできますか?」

「もちろんです。なんといっても自分の剣を取り戻す為ですからね。問題ありません」

「ああ、助かります。では、お願いします」


 その後話し合いを行い、さっそく出ることとなった。


「シルヴァ―、頼むな」

「バ、バウ、バウ」


 シルヴァ―は嬉しそうにキルスの頬を舐めつつ吠えた。

 そうしてから、シルヴァ―は縮小化のスキルを解除し本来の大きさになった。


「おおっ」

「これが!」

「なんという大きさだ」


 キルス達がいるのは王城の練兵場、そこに集まったのは騎士団だけではなく宰相と国王も来ていた。


「これが、フェンリルか、なんと大きいのだ」

「は、はい、これなら、部隊を運ぶことも容易でしょう」


 国王と宰相もシルヴァ―の大きさに驚愕していた。


「えっと、それじゃ、乗ってくれ」

「あ、ああ、では、陛下行ってまいります」

「うむ」


 ゾロテスが敬礼しつつそういうと、国王は鷹揚にうなずいた。


「いくぞ、乗り込め」

「はっ」


 ゾロテスの号令を受け、騎士団員10名がシルヴァ―に飛び乗る。

 今回の任務に付いたのは、ゾロテスと第1部隊10名、騎士団最強の実力を持つ精鋭である。

 そのためか、シルヴァ―に乗り込む際もみな危なげなく飛び乗ったのである。


「キルス、頼む」

「ああ、それじゃ、シルヴァ―いいぞ」

「バウン」


 こうして、シルヴァ―は国王や宰相、残された騎士団員に見送られて練兵場を飛び発った。

 ちなみにだが、今回シルヴァ―が王城から直接飛び立ったのは、特別に許可が降りたからである。

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