第152話 いったい誰が?
「あれは、お、私の剣、エスプリートでは、ありません」
キルスの発言にその場の空気が一瞬固まった。
「えっ!」
「なにっ!」
「ど、どういうことですか、キルスさん!」
カテリアーナは驚愕のあまり、キルスに詰め寄った。
「説明してくれるか?」
国王もまた、顔をこわばらせて聞いてきた。
「はい、えっと、冒険者にとって武器は自身の命を預ける大切なものです。だから、たとえ姿形が全く同じでも、別物だとわかるのです」
「ふむ、聞いたことはある。つまり、そなたは一目であれが別物であると、それは、確信してのことか?」
ここで、国王は確認するように尋ねた。
というのも、もしキルスの言うことが本当であれば、キリエルン王国としての一大事となる。
なにせ、王城内で窃盗が発生し、国王に対して偽物を差し出したということだからだ。
「見る限りは、ただ確証はありません。そこで、鑑定スキルの使用をお許しください。そうすれば確信できます」
「鑑定スキル?」
「希少なスキルとお聞きしていますが、キルスさんはお持ちなのですか?」
「はい、持ってます」
「ほぉ、それは素晴らしい、して、それは武器の鑑定というわけか?」
一般的に知られている鑑定スキルは武器などのある特定のジャンルにおいての鑑定が出来るというものだ。
つまり、キルスが鑑定スキルを使うと聞いた国王は当然の如くキルスが武器鑑定の持ち主と思ったのだった。
「いえ、俺の鑑定はあらゆるものすべてです」
キルスはここで正直に答えた。というのも、これは特に隠すことではないからだ。
「すべてだと、そんな鑑定スキルなぞ、聞いたことがない」
国王も驚愕した。
そこで、キルスはこれもまた隠すことではないためにスキルの石碑について説明をすることにした。
「……というわけで、世界中にそういった石碑があるんです。鑑定スキルは、バイドルの近く、エンシェントドラゴンを討伐したダンジョンに隣接する形で安置されていました」
「なんと、そのようなものがあるとは」
「お、驚きました」
「して、それはどうやって取得すればいいのだ」
ここで、当然国王は取得方法を尋ねてきた。
これもまた特に隠すことでもないために説明する。
「翻訳スキルというものがあります。これを使用することで習得できるようになります」
「翻訳、それはどういうものだ」
この世界は以前1つの国が統一したことにより、言語が1つしかない状態となってしまった。
そのため、翻訳スキルの取得条件である、3つの言語の習得と5つの言語を学ぶことが出来なくなってしまった。
「……ふむ、つまりは、現在においては不可能というわけか」
「そうなります。とはいえ、古代語として過去の言語を学べば、可能となりますが」
「なるほど、そうなると、今後そういったものたちを増やす必要がありそうだな。ところで、そなたはなぜ、翻訳スキルを持っていたのだ」
ここで、当然の疑問を投げかけられる。
「まぁ、そうなりますか、えっと、まぁ、昔から使えたスキルというわけです」
キルスはこれは言えないとごまかすことにした。さすがに前世の記憶があるとはまだ話せないのである。
「そうか、それは、うらやましい限りだ。して、その鑑定を使えば良いというわけだな」
「はい」
「よかろう。宰相」
「はっ、お持ちします」
というわけで、近くにいた宰相が部屋を出て外にいる騎士に指示を出すと、少しして騎士がエスプリートを持って戻ってきた。
「陛下、こちらです」
「うむ、さて、キルスよ。やってみよ」
「はい、では、鑑定」
キルスは鑑定スキルを使用、その結果は、
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名称:魔剣エスプリート(偽)
作成者:コルダス
素材:鋼
能力:なし
説明:キルスが所持している魔剣エスプリートに偽て作られた剣。
ただの鋼を加工し似せて作られている。
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と出た。
「間違いありません。偽物と出ました」
「なんと!」
「そんな!」
これには国王もカテリアーナにとっても衝撃であった。
「ふーむ、まさか、いや、しかし、宰相、あれを持ってまいれ」
「はっ、承知いたしました」
国王が再び宰相に指示を出すと、宰相は部屋を出ていった。
それから、すこしして、帰ってきた宰相の手には占い師が持ちそおうな水晶玉だった。
「陛下、お持ちいたしました。こちらを」
「うむ、キルスよ。これは鑑定水晶といってな。我が王家に伝わる秘宝の1つだ」
そういって、国王は自慢げにキルスに説明したのであった。
「では、これで確認してみよう、鑑定」
国王がそういいつつ鑑定師匠に魔力を込めると、水晶から光が出てそれがスクリーンのように空中に表示された。
その内容は、
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名称:魔剣エスプリート(偽)
作成者:コルダス
説明:キルスが所持している魔剣エスプリートに偽て作られた剣。
ただの鋼を加工し似せて作られている。
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と表示された。
「これは!」
「なんということでしょう!」
その結果により、国王にもこれが偽物であることが判明したのだった。
「いったい、誰がこんな、こんなことを?」




