第151話 偽物
キリエルン王国国王との謁見中の出来事であった。
国王がキルスの剣を見ようと、宰相からキルスが事前に預けていた剣、エスプリートを受け取った。
それを見たキルスは、何か違和感を覚えたのだった。
「どうされました?」
そんなキルスの様子を見ていたカテリアーナは思わず尋ねたのであった。
といっても、ここは謁見の間、平民に過ぎないキルスでは声を発することなどできないため、応えることができずにいた。
「? そうでしたね。失礼しましたわ」
カテリアーナもそのことに思い至って、すぐにそういって謝罪した。
「ふむ、見事な剣だ」
国王は剣を眺めてからそういってから宰相に返したのだった。
「さて、此度そなたを呼んだのは、礼を言うためだ」
国王がそういった途端、キルスは驚き、貴族たちはギョッとした。
それはそうだろう、国王が自ら、一国民でしかないキルスに礼をいうなどありえないからだ。
「そなたのおかげで、ガバエント王国との戦も事前に分かり、対処することができておる。今だ解決には至ってはおらんが、まずは礼を言わせてもらう、また、これについて褒美を取らす。宰相」
「はっ、此度の働きに対する褒美として、金貨10枚を与えるものとする」
金貨10枚、平民に取っては大金である。
金貨1枚が大体24万円となるため、その10倍、つまり240万円となる。
本来その額だと大金貨1枚となるが、大金貨は貴族などが使うような通貨の為、平民であるキルスでは使えない。
そこで、金貨10枚としたのである。
それから、国王は退席し、続いて貴族たちがゾロゾロと謁見の間を出ていく、そうして、最後に騎士に促されてキルスも要約謁見の間を出たのだった。
「はぁ、疲れたぁ、なんか、精神的に疲れたよなぁ」
国王との謁見、これについてはキルスも前世で何度か経験しているが、なれるものではない。
キルス達がこの1週間過ごしてきた離れに帰ってきたキルスはそういって羽根を伸ばしていた。
「失礼しますわ」
そんな時、突如カテリアーナが尋ねてきた。
「殿下、どうしました?」
エミルが応対している。
「はい、キルスさんに御用がありまして」
「んっ、俺ですか?」
「はい、申し訳ありませんが、わたくしと一緒に来ていただけませんか」
突然の誘いである。断る理由も無ければ、キルスにもカテリアーナに用があったために、願ってもないことであった。
「わかりました。俺もちょうど、殿下に聞きたいことがあったんです」
「そうですか、でしたらこちらへ」
ということで、キルスは再び王城内に向かったのであった。
王城内に入り、キルスが連れてこられたのは、少々複雑に進んだ先の部屋であった。
「こちらです」
そういいつつ、カテリアーナは扉をノックする。
「カテリアーナです。キルスさんをお連れしました」
「入れ」
この瞬間キルスの頭は真っ白になった。
(ちょっと待て、まさか)
カテリアーナに対して、入れと言える人物、そして、今の声、それを合わせると、中にいるのはどう考えても国王だった。
「失礼いたしますわ。お父様」
「うむ、ご苦労、そなたも入るがよい」
カテリアーナの背後で固まっているキルスにも声がかけられた。
入れと言われれば、入らないわけにもいかず、キルスもまた部屋に入ったのだった。
「あの場所ではゆっくりと話も出来んでな。ここに来てもらったのだ」
「ふふっ、キルスさん、話されても大丈夫ですよ」
カテリアーナは悪戯が成功したような顔をしつつ、キルスに国王に対して直答してもよいと言ったのだった。
「ふむ、ここは謁見の間ではないからな、構わぬ」
「は、はぁ」
「さて、まずはあらためて、エンシェントドラゴンの血をカテリアーナに分けてくれたことに礼を言いたい。先ほども申したが、おかげガバエントとの戦もじき収束に向かうだろう」
「いえ、キリエルンの国民として当然のことをしたまでですから」
「であるか」
キルスの答えに国王は満足したようだ。
「ところで、キルスさん、先ほど謁見の間において、様子がおかしかったですが、いかがしたのですか?」
ここにきてカテリアーナが謁見の際に見たキルスを思い出し、もう一度尋ねた。
「あっ、はい、あれですか」
キルスは言ってもいいかと迷うも、やはり重要なことのためにいうことにした。
というより、キルス自身カテリアーナに聞きたいことがこれであった。
「実は、陛下が持たれた、お、私の剣ですが、あれはエスプリートではありません」
「えっ」
「なにっ」
キルスの言葉にはカテリアーナも国王も思いもよらないことだった。
「ど、どういうことでしょうか?」
そう、謁見でキルスが覚えた違和感、それは国王が手にしたキルスの剣、魔剣エスプリートは別の物となっていたからだった。




