第15話 冒険者登録
あれから10年が経過した。
現在の話の前にこの10年の話を簡潔に話そう。
まず、勝手に街の外に出たドーラフと、それを助けるためとはいえ出たキルスは、ガイドルフから一層厳しい指導を受けることになる。
また、キルスは、魔法を用いてゴブリンを討伐したという事実から、レティアがどの程度魔法が使えるのか確認したいと言われ披露。
それを見たレティアによりキルスはすでに魔法を制御できていると判断された。それに伴い、魔封じの腕輪は外された。
そうして、キルスは魔法の訓練も始めたというわけだ。
こうして、キルスの戦闘スタイルは剣と魔法というレティアの物を受け継いだようなものとなった。
また、キルスの家族は増えた。
具体的には、男6人、女7人の13人兄弟というまさに大家族となった。
ちなみに、長女のエミルは現在19歳とこの世界ではすでに結婚していてもおかしくない年齢に達したが、弟や妹達の面倒を見たいと言って、いまだにその話も全くなく過ごしている。
そして、長男のオルクは15歳となった折に料理人になりたいということで、別の街でファルコの修業時代の先輩が経営する食堂で料理修行に出ている。
「誕生日、おめでとう、キルス」
「おめでとう」
「おめとー」
午前、両親をはじめ姉弟みんなから誕生日を祝福されたキルスだが、そう、今日はキルスの15歳の誕生日だ。
15歳という年齢は、キルスにとっては待ちに待った年齢でもある。
それというのも、15歳というのはこの国では成人とみなされ、仕事をすることができる。その中には当然冒険者も含まれるのだ。
冒険者、それはキルスが子供の頃からなりたいと言ってきた職業だった。それというのも、やはり前世の記憶を持っているのが大きいだろう。
前世のラノベやゲームなどで主人公が冒険者となり、活躍をする。そんな話をよく読んだし、何よりキルス自身がそんな話を執筆していた。
この世界に転生して、冒険者という職業があると知った瞬間それになると誓ったのだった。
まぁ、もちろんレティアが元冒険者であったことも理由の1つであることは言うまでもないだろう。
「ありがとう、みんな、これで、やっと冒険者になれるんだなぁ」
キルスは、近くにいた、弟の頭をなでながらそういった。
「そうね。でも、わかってるわよね」
キルスが感慨深げにいうとエミルからくぎを刺された。
「わかってるって、無茶はしないよ。俺だって死にたくないし」
「そう、わかってるならいいけど、ほんと、無茶はしないでよ、キルスは、時々無茶なことするから、ほら、10年前とか」
エミルとしては、キルスが5歳の時にやったゴブリン討伐を10年経った今でも忘れることはない。
それほど心配した出来事だった。
「ああ、わかってるって」
「ほんとかしら、まぁ、これは後でニーナにちゃんと言っておかないとね」
ここでニーナの名前が出てきた理由は、ニーナが現在冒険者ギルドの受付嬢をしているからだ。
そんなニーナだが、実は彼女、ここ10年で再び悲劇に襲われた。
それというのもまず、7年前、父親のナリフが出張中、馬車が魔物の襲撃を受けた。もちろんその際冒険者を護衛に雇っていたが、強力な魔物だったためにほぼ全滅、ナリフはその際に大けがを負った。
この世界にはポーションもあり、当然ナリフには大量のポーションが使われた。しかし、ナリフが負った傷は、ポーションではどうしようもなかった。
そして、ナリフはニーナやミーナに看取られてこの世を去った。
それから、1年、今度は母親のミーナが病に倒れた。
しかも、その病は進行も早く、あっという間にミーナはやつれて行った。
その看病はキルス達一家も当然協力したが、その甲斐なくミーナは発病から数日で息を引き取ってしまったのだった。
その時もニーナは心底落ち込んだ。しかし、その時はキルス達がいた。そのおかげでニーナも1ヵ月ほどで立ち直ったのはキルス達にとっても僥倖であった。
その後、ニーナはキルス達一家に引き取られ、数年キルス達のもう一人の姉として過ごしたが、両親が冒険者ギルドに務めていたという事や、キルスが冒険者となることが夢であることから、ギルドの受付嬢となるべく家を出て行ったのだった。
そうして、現在ニーナは冒険者ギルドの受付嬢として働いているというわけだ。
「わざわざ、言わなくても、ニーナお姉ちゃんなら、キルス兄さんにそんな無茶な依頼はさせないと思うけど」
ここでこれまでのやり取りを見ていたキレルがそういった。
実際、ニーナはキルスを特に可愛がっている。そのため、ニーナが受付嬢をしている以上、キルスに無理な依頼をさせることはないだろう。
「それで、キルスは、これから登録に行くのかい」
話が一段落したところで、これまで黙っていたファルコがキルスに尋ねた。
「ああ、そのつもり、これからギルドに行って登録試験受けてくるよ」
冒険者になるためには、登録試験というものを受ける必要がある。
その試験というのは、戦闘能力を見る戦闘試験、野営能力を見る野営試験とある。
この試験は、週に1回行われ、キルスとしては早くに冒険者となりたく、今日がその試験日となっていたために、誕生日のパーティーを午前中に済ませることにしたのだった。
「そうか、気を付けてね」
「ああ」
それから、午後となり誕生日パーティーも終わりキルスはギルドに向かうことにした。
「それじゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい、気を付けてね」
「いってらー」
「がんばってね。キルス兄さん」
「がんば、にーたん」
両親や兄弟に見送られて家を後にした。
キルスの家ファルコ食堂は、バイドルの大通りから少し路地に入ったところにあり、ギルドは、そこから大通りに出て、すぐのところにあるためにすぐにたどり着いた。
「やっと、俺も冒険者なんだな」
キルスは幼いころから冒険者になることを考えていたためにギルド自体はずっと見てきたために、建物を見ただけでは特に感激はしないが、ようやく冒険者となれるという思いがこみあげての感激だった。
「よし、行くか」
気合をいれてギルドの扉を開けた。
ギルドの中は、まさに喧騒としていた。手前に酒場が併設されており、昼食を取っている冒険者や、そうでない者たち、昼間から酒をあおっている者たちといった感じだ。
その中を見渡しながら歩いていると、不意に声をかけられた。
「あっ、キー君こっちよ」
声をかけてきたのは、ニーナだった。
そして、その瞬間昼食を取っていた数人がキルスの方を見てきて、その中の何人かがキルスを睨んでいた。




