第147話 王都に到着
バイドルを出て6日、ついにキルス達の目の前に王都の防壁が見えてきた。
ここにつくまでの道中は、一言でいえば順調だった。
それはそうだろう、王族の乗る馬車を襲おうと考える盗賊はいない。
それというのも、まず馬車そんなことをすれば、国家反逆罪となり捕まれば極刑どころの騒ぎではなくなるだろう。
そもそも、周囲には屈強な騎士がひしめき合い、目を光らせているというのもあるだろう。
魔物に関しても、たとえ襲ってきても彼らにより駆逐されるのは言うまでもない。
というか、今回はフェンリルたるシルヴァ―が最後尾を歩いている。
フェンリルは魔狼王であり、エンシェントドラゴンと並ぶ最強種、そんなシルヴァ―がいる中襲ってくる魔物はほとんどいないといってもいいだろう。
やってくるのは、ゴブリンなどの彼我の戦力差もわからないようなモノたちだけ、そして、そんなモノたちは騎士によって駆逐されていった。
というわけで、何事もなく進んだのであった。
「あれが、王都?」
「みたいだな」
「おっきいね」
「そうね。あの防壁、バイドルよりも高いわね」
エミルのいう通り王都を囲む防壁の高さは、バイドルよりも1.5倍ほど高くなっていた。
その理由は、やはり王都ということがあげられる。ここが陥落すれば国が終わる最重要拠点だからだ。
そのため、強固な防壁と屈強な国軍兵士達により、防壁は守られているのである。
そうして、王都の門前までやって来たところで一旦停止したが、すぐに動き出し王都内に入っていく。
この際、キルス達は身分の確認などを行っていない。これは、カテリアーナたち王族が一緒にいることで免除されたわけだ。
「わぁ、にぎわってるね」
「ほんと、あっ、みんなこっち見てる」
キレルが街の様子に目を輝かせ、玲奈が同意しつつ、道行く人々が馬車を見ていることを指摘した。
「そりゃぁ、前を走っている馬車に王族が乗ってるからな」
「見るだろうね」
応えたのはキルスとオルクであった。
こうして、進むことしばし、ついに王城が見えてきたのであった。
「でかいな」
「あれが、お城」
「……素敵」
「そうだね」
キルス達はそれぞれ城をみて感想を述べていった。
それから、馬車は王城の敷地内に入り、エントランス前で止まった。
「どうぞ、お降りください」
馬車が止まるとすぐにそういわれたのでキルス達は馬車を降りた。
「キルス様、恐れ入りますが、武器などをお預け下さい」
キルスが降りると、執事がやってきてそういってきた。
「んっ、ああ、わかった」
突然様付で呼ばれたことに驚くも、王城内で帯剣するわけにもいかないということは理解できたので、疑うことなく腰に差したエスプリートを外して渡し、他にもレティアから受け継いだ短剣も外して渡したのであった。
「えっと、僕も包丁とか持ってるんですけど、預けたほうが良いですか?」
剣を預けているキルスを見たオルクが自身も包丁という刃物を持っていることを告げる。
「はい、お願います」
それを聞いた執事はオルクの行動に好感を持ちつつ笑顔でそういった。
ということで、オルクも自分が持つ鞄から包丁のセットを取り出して執事に預けたのであった。
「皆さん、わたくしたちは一旦これで失礼しますね」
そういって、カテリアーナたち王族は一旦王城内へ入っていく。
「それでは、皆さまはこちらへお越しください」
と控えていたメイドに言われたキルス達はその後に続き歩き出す。
こうして、キルス達が連れてこられたのは、王城敷地内にある離れだった。
「ご不便とは存じますが、ご滞在の間はこちらの離れでお過ごしください」
「わかりました。ありがとうございます」
ここでも、エミルが長女として対応する。
それから、キルス達は案内された離れへと入っていくのであった。
「わぁ、すごーい」
「うん、すごいね」
「あ、あの、本当に大丈夫でしょうか?」
離れといっても、王城内ということで内装はかなり豪華なものとなっていた。
それを見たキレルは素直に感激し、玲奈もそれに同意、幸は場違い感から、右往左往していた。
「謁見の日取りは後ほどお伝えいたします。それまで、ごゆるりとお過ごしください」
そういってメイドは去っていった。
と、同時に新たなメイドがやって来た。
「は、はじめまして、私は皆様のお世話をさせていただく、リッタと申します。何かあれば、お申し付け下しゃい」
緊張からか、若干噛んだ自己紹介をしたリッタであった。
彼女は、先日より王城内で奉公を始めたばかりの新人、このように客の世話を任されるのは初めてで緊張していたのであった。
リッタは王城内で奉公しているところからも、一応伯爵令嬢である。
最初は、庶民であるキルス達の世話をすることに若干の不満があった。しかし、キルスがエンシェントドラゴンを討伐した強者であり、メイドたちの間で話題となっているハンドクリームを開発した人物であると聞いて、喜んだのである。
そして、極め付きにエミルという絶世の美女と、オルクという美男子を見て緊張してしまったのである。
「よろしくお願いします」
そんなリッタに応えたのもエミルであった。




