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第143話 ありえない来訪

 キルスが久々の和食を堪能してから3日。

 あれから、ファルコとオルクは醤油や味噌を使った新しい料理の研究に明け暮れ、キルスと玲奈と幸の3人は日々ご飯と味噌汁を堪能していた。


「はぁ、おいしい」

「ほんとだよねぇ」

「やっぱり、日本人は米だよなぁ」


 キルス達はご飯を食べながら毎朝そういっていた。


「でも、あたしって日本にいた頃って余りご飯って食べなかったんだよね。朝はパン派だったし」

「そうなのですか」

「そうそう、あたしがいた時代って外国からいろんな料理が入ってきていたから、あたしはだいたいそっちばかりだったなぁ」


 玲奈のいう通り、キルスがいた日本でも同様の日本人が多くいたことだろう。


「確かに、俺もたまにしか食ってなかったよなぁ」


 こうして朝食を食べた後、玲奈と幸は出かけ、キルスはというと特に冒険者の仕事がなかったことから店に出ることにした。


 そうして、昼を食べて午後、時刻にして1時半ごろだろうか、昼食時の最後の客を送り出して後片付けをしていた最中のことである。


 ギィィィっと、店の扉が開いた。

 ファルコ食堂は朝から夜まで休むことなく営業している。

 つまり、最後の客を出したからといって店じまいというわけではない。


「いらっしゃ……」


 そこまでいってキルスは首を傾げた。


「失礼する。ここにBランク冒険者のキルスというものはいるか?」


 入ってきたのは女騎士であった。

 女騎士、それはここキリエルンでは数は少なくとも珍しい物ではないが、なんというか、やって来た騎士は何か妙に豪華な鎧を身に付けていた。


「え、えっと、キルスは俺だけど」


 戸惑いつつキルスは自分がキルスだと返事をした。


「貴殿が? いや、失礼、我が主が貴殿との面会を希望している」

「主?」


 キルスとしてはこんな騎士の主に面会をする謂れはない。


「お久しぶりですね。キルスさん」


 そんな女騎士の背後から突然そんな声がかけられた。


「えっ! で、で」


 キルスはあまりの突然の登場に激しく戸惑いまともに言葉が出なかった。


「で、殿下!」


 女騎士も背後からそんな声を庶民であるキルスに気軽に声をかけるとは思えず驚愕していた。

 そう、キルスが戸惑い、女騎士が主と称する人物、キリエルン王国第二王女であるカテリアーナその人であった。


「な、なぜ?」

「突然の訪問申し訳ありません」


 そういって謝罪してくるも、キルスとしてはさらにその背後にいる人物たちが気になっていた。

 なんといっても、カテリアーナと同様の気配があったからだ。


「カテリアーナ、わたくしたちも紹介していただけますか」

「ふふっ、申し訳ありません。お母さま、キルスさん、こちらは、わたくしのお母さまで、第一王妃のテリーヌです。そして、こちらが第二王妃である……」


 そういって、カテリアーナはキルスに同行者を紹介していくが、それを聞いてキルスは絶句した。

 それはそうだろう、まず、第一王妃テリーヌ、第二王妃メイノールに続き、第一王女クリスビーナ、第三王女、メリーナだった。

 ちなみに、キリエルン王国の国王に夫人は2人、その子供は、姫が3人と王子が1人である。

 つまり、今ここにロイヤルレディと呼ばれる王族の女性陣が揃ってしまっている。


「……、まじ?」


 キルスが何とかその言葉だけを絞り出す。もちろん小声なので、カテリアーナ達には聞こえていない。


「キルス、中にご案内しなさい」


 キルスが茫然としていると、後ろからエミルがやってきてそういった。


「あら?」

「まぁ!」

「っ!!」


 エミルの登場に今度はカテリアーナ達が固まった。

 カテリアーナたち王族の女性は自身の美しさに自信があったが、エミルを見た瞬間その自信が揺らいだのだった。


「あ、ああ、えっと、殿下方、どうぞ、中へ」

「……えっ、はい、はい、し、失礼しますね」


 というわけで、キルスとエミルに案内されてカテリアーナ達はキルス宅のリビングへとやって来たのであった。



「どうぞ、殿下方をお招きするようなところではありませんがお座りください」


 エミルはそういってカテリアーナたちにソファに座るように言った。


「ええ、失礼しますわね」


 一番上位の立場であるテリーヌがそういって返事をして、ソファに座ったことで、メイノールをはじめ王女達も座ったのであった。

 それを確認したエミルとキルスもまた、その対面に並んで座る。


「ええっと、それで、殿下、なぜ、ここに?」


 キルスは何とかその言葉をカテリアーナにぶつけた。


「はい、先日わたくしの弟である、第一王子の……」


 殿下たちを代表して、キルスと既知であるカテリアーナが経緯を語りだした。

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