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第139話 瞬間なる帰郷

 イザナールの宿屋で聞いた謎の石碑、聞いた時まさかと思いながらもその場所にやって来たキルス。

 そうして、見たものは予想通りスキルの石碑であった。

 さっそく翻訳スキルで読んでいくとなんと転移スキルを獲得した。

 その転移スキルとは、自身が出向いた場所であれば何処でも瞬時に行くことができる夢のようなスキルである。

 とはいえこのスキル、消費魔力が大きく普通の人では使えるような使えない、そんなスキルとなる。

 だが、キルスのように元々膨大な魔力を持っている場合はかなり有用な物となる。


 こうして、キルスにとってカルナート王国は得るものが大きい、そんな国であった。


「さてと、そろそろ帰るか」


 スキルの石碑で転移スキルを獲得して数日、その間海で海産物を獲得したりして過ごして充実な日々を送っていたが、そろそろバイドルに帰ることにした。


 ということで、その日の夕方、イザナールを出たキルスは人目に付かない場所に行き、さっそく転移スキルを使うことにした。


「ようし、行くぞ、準備はいいかシルヴァ―」

「アウン」


 キルスは転移先を思い浮かべた。


「転移」


 キルスがそういうと、一瞬のうちにキルスとシルヴァ―の立つ場所に魔法陣が浮かぶと、瞬時にその場からかき消えた。



 そうして、次の瞬間キルスとシルヴァ―が出現したのは、カルナートとキリエルンの国境付近の森の中であった。


「どうやら、成功みたいだな」

「バウ」


 転移先をここに設定した理由は、とうぜんだがここを通らないと密入国、密出国となってしまうからだ。

 いくら戸籍などがないこの世界でも、キルスがギルドカードで出入国した以上、現在キルスはカルナートに滞在していることになる。

 そのキルスが、この後普通にキリエルンで活動すれば、いずれ面倒なことになりかねないのだ。

 というわけで、面倒だが国境は正規の手続きで通る必要があった。


 そういうことで、キルスとシルヴァ―は来た時と同様、大門を開けてもらい国境を越え、再び人気のない場所に向かい転移。


 そうして、次に出現したのはキルスの母レティアの故郷であるトーライド近くだった。

 ここに寄ったのは、帰りに寄ることを約束していたからである。


「さて、ギルドに向かうか」


 従姉であるシュレリーからトーライドに帰ってきたらギルドに寄るように言われていたことからキルスはシルヴァ―を伴って冒険者ギルドに向かうことにした。


「あっ、キルス君、おかえりなさい、どうだった?」


 ギルドに入ると受付にはシュレリーがおり入り口から向かってきたキルスを見かけて笑顔で声をかけた。

 シュレリーは、レティアやエミルと似ており、絶世の美女となる。そんなシュレリーが営業用ではない笑顔で声をかけたものだから、当然、その場にいた冒険者たちは嫉妬の目をキルスに向ける。


「ただいま、まぁ、何とか討伐はできたよ。かなり厄介だったけど、でも、まぁ、いい物も手にはいったよ」

「ふふっ、いいことあったみたいね。あと少しで仕事終わるから、もう少し待ててもらえる。そうしたら、一緒に帰りましょう」

「わかった。って、シュレリー今日は帰るのか?」

「ええ、明日休みだからね」

「なるほど」


 それから、キルスはギルドに併設された酒場に座りシュレリーを待つことになった。

 そうなると、当然先ほどのキルスとシュレリーの会話が気になった者たちがキルスに声をかけてくる。


「ねぇねぇ、あなた、シュレリーちゃんとどんな関係なの?」


 男たちは嫉妬しているためにキルスを睨んでいるが、女性たちはすぐに声をかけてくる。


「いや、対した関係じゃない、従姉弟だからな」

「なぁんだ、従姉弟かぁ」

「あっ、もしかして、あなた、いつだったか、警備隊長と模擬戦した子よね」

「ああ、まぁな」

「ああ、あの子か」

「誰だよ?」


 そんなやり取りをしていると、シュレリーが仕事を終えやって来たために、キルスとシュレリーはシュレリーの実家であり、2人の祖父母の家へと向かったのである。


 その夜、キルスはカルナートで起きたことを話たわけだが、当然その流れで転移スキルを獲得したことも話した。

 それを聞いた、コルスとレーラはあきれつつもうらやましがり、シュレリーは目を輝かせていた。


 そうして、翌日、キルスはバイドルへと転移で帰っていったのである。




 一方、時間は遡り、キルスが米を入手して大喜びしているころ、キリエルン王国王都にそびえたつ王城内では第一王子の10歳の誕生日パーティーが開かれていた。

 王子はまだ10歳だが、将来は王太子となり次期国王となることは有力であるということから各地から貴族がお祝いに駆けつけていた。

 そんな、貴族たちの中には当然キルスが住むバイドルを支配下においているバラエルオン伯爵もいた。

 その伯爵はパーティーが一段落した現在、王城のある一室で夫人を伴いある人物と再会していた。


「ご無沙汰しております。殿下」

「ええ、お久しぶりですね。エリーゼさんも、お久しぶりです」

「はい、ご無沙汰しておりますわ」


 伯爵が再会していたのは第二王女カテリアーナであった。

 挨拶のあと、3人は軽く話をし始めたが、その話はやはり共通の話題ということでキルスの話となったのだ。


「まぁ、では、そのドレスもキルスさんが!」


 今エリーゼが身に付けているドレスは玲奈が作成した編み物によるドレスであった。


「はい、キルスさんのご友人の方が作ってくださったのです」

「そうですか。素晴らしいですわ」

「ありがとうございます。ところで、殿下、実はそのキルスから殿下にと、預かっているものがあるのですがよろしいですか?」


 ここで、伯爵がカテリアーナにそういった。


「わたくしにですか? 一体、なんでしょう?」

「ふふっ、正確にはキルスさんのお姉さんからということとなっております」


 エリーゼがそういって補足した。


「あら、キルスさんのお姉さまですか? お兄様にはお会いしたことがありますが」


 ここでカテリアーナは以前バラエルオンで出会ったキルスの兄オルクを思い出して顔を紅潮させていた。


「キルスの姉はバイドルでも評判の美しい娘だそうですよ」

「まぁ、そうでしたか」

「はい、それでですが、こういったものを預かって参りました」


 そういってエリーゼは背後に控えていたメイドから瓶を1つ受け取った。


「これは?」

「はい、これは、化粧水というものです」


 その後エリーゼはカテリアーナに化粧水とは何かを話、それを自分も現在使用していることを話した。

 すると、やはりカテリアーナも女、すぐに興味を示して前のめりで聞き始めたのであった。

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