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第135話 決着

「さぁて、どうすっかなぁ」


 キルスはシルヴァ―の背に乗り、上空からギガポイズンフォレストワームを見下ろしながら考えていた。


「あそこまで、暴れられると、接近戦は難しいし、だからといって魔法ってのもな。下級じゃダメージを与えられないだろうし、かといってそれ以上だと、跡が大変なことになるだろうしなぁ」


 ギガポイズンフォレストワームは現在、キルスに尾のような部分を切断された痛みにとって暴れている。

 かといって、魔法となるとまた別な問題が出る。

 まず、キルスが普段使っている下級魔法だと通じないだろう。

 余談だが、キルスが普段下級魔法を好んで使っているのは、単純に詠唱の短さからだ。

 魔法は、高度なものになればなるほど詠唱が長い、そんな物を戦闘中にやっていられない。

 ということで、短い下級魔法を魔力に任せて放っている。

 いつもキルスが闘っているような魔物であればそれでも十分だが、高位の魔物が相手だとそれでは通じない。

 キルスの見立てでは中級も中途半端なダメージを与えるだけで、より厄介になると考えた。

 となると、残るは上級魔法となるわけだが、これを使うと後が大変なことになる。

 というのも、この場所が森であること、そして普段は冒険者たちが採取や弱い魔物、動物を狩る場所だ。下手に魔法を使って森を破壊するのはためらわれた。


「かといって、このまま放っておいても、毒で大変なことになるしなぁ」


 倒すならさっさとやらなければそれもまた、大変なことになる。実に悩ましいところである。


「炎はだめだよなぁ」


 森の中で炎の魔法を使うのは愚の骨頂。


「それに下手したら、毒が蒸発して……それは、怖いな」


 想像してぶるっと震えるキルスである。


「仕方ない、地道に斬っていくしかないか」


 そう結論付けたキルスは、ギガポイズンフォレストワームが落ち着いたところで再び降り立った。


「グギャァ!」


 キルスが降り立つと、ギガポイズンフォレストワームもキルスを脅威と認識したのか、本格的にキルスを狙い土魔法を使ってきた。


「食らうかよ!」


 地面が隆起してキルスを襲ってきたが、キルスはそれを飛ぶことで回避。


「ガルゥゥ!」


 魔法を放った隙をつきシルヴァ―が前足を振る上空から振り下ろした。


「ギヤァァァ!」


 再びダメージを受けたギガポイズンフォレストワームは、痛みに耐えながらシルヴァ―に向かって毒を吐き出した。


「まじかよ!」


 毒をまき散らすだけでなく毒を吐いてくるなど思いもしなかったキルスは驚愕した。

 もちろん、それでシルヴァ―がダメージを受けることはなかった。


「厄介だなぁ。このままじゃ、やっぱり、早々に片付けたほうがよさそうだなぁ。となると、上級魔法か、しゃぁない、シルヴァ―!」


 キルスはシルヴァ―の名前を呼び、詠唱の時間稼ぎをしてもらうことにした。


「多少森が無くなるが、このまま放っておいても、同じだしな」


 これまでもまき散らされた毒により、多くの木が枯れ落ちてしまっていたし、巨体が暴れたことでもなぎ倒されていた。

 そうなれば、被害を抑えるためにも上級魔法で一気に片付けたほうが被害が少ない。

 そう判断した。


『水よ。汝は小さい、小さき雫、風よ。極寒の血より来る風よ、汝は冷たい、その身を持って水を冷やせ。新たに生まれた氷よ。舞え、舞え、舞え。我が敵を氷結せよ。 氷結乱舞(アイストルネード)


 キルスがそう呪文を詠唱すると、ギガポイズンフォレストワームの周囲が急激に冷え始め、周囲に集まってきた水が風で冷やされ氷、ギガポイズンフォレストワームに付着する。

 そうして、次の瞬間にはギガポイズンフォレストワームは氷像と化した。


「ふぅ、終わったか……鑑定」


 キルスは念のためにギガポイズンフォレストワームを鑑定した。


 そこには、間違いなく死亡していることが表示される。


「バウン?」

「ああ、終わったぞ」


 シルヴァ―がキルスの側に降り立ち、終わったのかと尋ねると、キルスもシルヴァ―を撫でながらそう答えた。


 氷像と化したギガポイズンフォレストワームは遠くからも見えたし、何より近くで張っていた冒険者たちにもよくわかった。

 そこで、彼女達もまた、恐る恐るではあったが、キルスのもとにやって来た。


「お、終わったの」

「……そう、みたいね」

「……すごい」

「なんて、魔法なの……」


 集まってきた冒険者たちは口々にそういった。


「今の、凄かったわねぇ。まさか、あんな大魔法が使えるなんて」

「なるほどね。だからこそそんなに早くBランクになったわけね」


 そういって、キルスがBランクであることを納得するものもいた。

 実は、冒険者たちの中には当然だがキルスがBランクであることを疑っていたものも多くいたのだ。


「ところで、キルス君だっけ、これ、どうするの?」


 そんな中で、氷像となったギガポイズンフォレストワームをどうするか聞いてきた。


「ああ、そうなんだよなぁ」


 キルスにはマジックストレージがあるために、これをそこに収納してしまえば問題ない。

 しかし、マジックストレージの存在は秘密。というか、そもそも、ワーム型、つまり虫型の肉は食べたくないし、素材も使える部分は少ないと考えられた。


「俺としても、この素材は使えそうにないし、そっちで頼めないか?」

「いいの?」

「ああ」


 キルスは今回の素材はすべて譲ることにしたのだった。

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