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第121話 報告

 バラエルオン伯爵を呼びに行ったセライスを見送った後、俺たちはソファーに座った。


「へぇ、さすが領主様だね。ソファーがふわふわ」

「は、はい、あ、あの大丈夫でしょうか」


 玲奈は現代日本人だけあり相手が領主でも物おじしないが、幸には領主とは大名と同じようなものだと話したことで、恐縮しきっていた。


「大丈夫だ。まぁ、中には選民意識って、俺たちが平民だからって下に見るやつもいるけど、伯爵様はそんなことないからな」


 キルスはそういって、以前この伯爵邸で見かけたカテリアーナ王女の護衛を思い出していた。


「そうだよ。さっちゃん、大丈夫だって」


 玲奈は気楽なものである。


「うー、私も緊張してきた」


 そんな中でターナーもまた緊張しているようであった。

 それはそうだろう、ターナーは純粋なこの世界の平民なのだから。


 そんなことをしていると再び扉がノックされ、声とともに扉が開いた。


「失礼いたします」


 入ってきたのはセライスと、その背後にはバラエルオン伯爵だった。

 キルス達は礼儀として立ち上がり頭を下げた。


「久しいな。キルス」

「はい、お久しぶりです。伯爵様」

「うむ、っでそちらは?」

「は、初めまして、わた、私は、その、バイドルで、服飾店をけ、経営しています。ターナーと申します。そ、その、本日は、ご注文の品が出来上がりましたので、持参いたしましたです」


 ターナーは盛大に緊張していた。

 それを聞いたキルスと玲奈は少し吹き出しそうになり慌てて口を抑えた。


「おお、確かに妻にドレスをと注文したな。確か、新しい生地を使ったものであったな」


 伯爵も自身が注文したことのために当然覚えていた。


「それにしても、早かったな。注文したのはついこの間だと思うが」


 伯爵が話を聞いて注文したのはつい数日前、それがすでに出来、持ってきたとあっては早いと感じるのは当然だろう。

 なにせ、この世界において服を注文した場合、平民が着るようなものでも1週間近くはかかり、貴族のものとなると数週間はかかる。


「伯爵様、今回伯爵様が注文した服は生地ではなく糸を編みこむという手法をとるものです」

「糸を?」

「はい、少し太めの糸を2本の棒を使っていくというものです」

「ほぉ、それは、見てみたいものだな」


 伯爵はそれがどういうものかぜひ見たいと考えた。


「それじゃ、玲奈」

「うん、任せて、えっと、伯爵様、あたしは、玲奈っていいます。今は、キルスのところにお世話になっていて」

「ほぉなるほど、キルスのところでか、だからこそキルスが来たというわけだな」

「まぁ、そうなります。それで、玲奈は編み物の技術者です」

「なに、この娘がか!」


 玲奈が編み物の技術者と聞いて伯爵は驚愕した。

 それはそうだろう、通常技術者はある程度年齢を重ねたものが多いからだ。


「はい、では、今見せますね」


 そういって、玲奈は鞄から編み棒と毛糸を取り出し、手早く糸を編んでいく。


「おおぅ、これはまた」

「素晴らしいですな」

「いつ見ても速いな」


 玲奈の編みこむ速度はもはや手先が見えないほどであった。

 そして、あっという間にハンカチほどの大きさの布が出来上がっていた。


「どうぞ」

「う、うむ、これか、ほぉ、暖かいな」

「ええ、なので普通は防寒着とかにするんですけどね。マフラーとか、手袋とか」

「となると、ドレスではないか」

「俺もそう思ったんですけどね。デザインを作るターナーと制作する玲奈の興が乗ったようで、あっという間に作り上げたようです」

「そうなのか。では、見せてもらえるか」

「はい、どうぞ、こちらです」


 伯爵様が見せるようにというので、ターナーがさっそくそばに置いていた箱を開けて中からドレスを数着取り出した。


「これはまた、素晴らしいな。編み目も先ほどと比べてもかなり細かいように思えるが」

「これが、編み物の特徴です、すべて手作業で編むので目を細かく調整したり、編み方を変えるだけで模様を作ったりでいるんです。今回はドレスということで、細かく編みこんでみました」


 玲奈が伯爵に今回のドレスについて説明をしていく、それを伯爵は感心したように聞いていた。


「これは、凄いな。さっそく妻に渡そう、セライス」

「はっ」


 セライスはそう返事をしてすぐに背後にいるメイドに指示を出す。


 その後、少しして再び扉がノックされると、伯爵夫人が部屋へと入ってきた。


「まぁ、これをわたくしに」

「ああ、そうだ」


 伯爵からのプレゼントに伯爵夫人も満面の笑みを浮かべていた。


「ご試着しますか?」

「ええ、お願いするわ」


 ということで、伯爵夫人をはじめターナー、玲奈と幸の女性陣は部屋から出ていった。


「さて、キルス、妻の着替えが終わるまで、色々聞きたいことがあるんだが、いいか」

「ええ、といってもおそらくシルヴァ―のことですよね。俺の従魔の」

「そうだ。あれはフェンリルと聞いたが、本当か?」

「本当ですよ」


 伯爵の質問にあっさりと応えるキルスであった。

 その後、キルスはシルヴァ―との出会いなどの経緯を話した。

 その際、どうしても説明のためとキルスは前世の話もしたのであった。


「……なんと、どう、驚いていいのかわからんな」

「は、はい、まさか、前世の記憶持ち、しかも、異世界であり、エリエル様との繋がりまであるとは」

「さては、キルス、あの玲奈という娘も同じか」


 ここまでの話で伯爵は編み物を持ち込んだ玲奈もキルスと同じ存在ではないかと感じた。


「そうですね。まぁ、玲奈と、もう1人幸といいますけど、あの2人は転生ではなく転移してきたんです」


 ということで、キルスは玲奈と幸についても話すのであった。

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