表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/237

第113話 それから

「それまで、両者、武器の破損により引き分けとする」


 両者の武器が砕けた瞬間破片が自らに当たらぬようにと距離を取っていたキルスとコルネリに対して、審判を務めていたギルドマスターゴンザスが宣言した。


「おおっ」

「すげぇ」

「まじかよ、あいつ」

「警備隊長と互角じゃねぇか」


 宣言とともに見学をしていた冒険者たちが口々にそういった。

 彼らは、冒険者故に、ちゃんとキルスとコルネリの実力が理解できていた。


「でもよ。どういうことだ。あれ」


 そんな中1人の冒険者が疑問を口にした。


「さぁな」


 冒険者たちの疑問はなぜキルス達の剣が砕けたのかということであった。

 いや、その理由はわかっている。彼らも冒険者としてそれなりに実力もある。

 キルスが使っていた剣が見習い鍛冶職人が作ったナマクラであることは明らかであった。

 それに対して、コルネリが使っていた剣は彼らの目にちゃんとしたものに見えたのだから。

 つまり、彼らの疑問とはなぜキルスが見習いの剣を使い、しかもコルネリの剣と相打ちのように砕けたのかというものであった。


「おい、どういうことだ」


 冒険者たちが頭をひねっていうと不意にそんな怒鳴り声が響いた。


「んっ、なにがだ」


 怒鳴り声は、キルスに向けられたものであったことで、キルスが対応することにした。


「このガキ、俺の剣を砕くだと、ふざけるな」


 この言葉に誰もがキルスが使っていたなまくらを打ち上げた職人だと思っただろう。


「えっと、お前は?」


 キルスもそう考えつつ、誰かを尋ねた。


「俺は、シーブルト工房のドーロンだ。てめぇ、俺の剣をそんななまくらで砕きやがって」


 コルネリはこの街なら誰もが知っている強者であり、警備隊長、ドーロンにとっては大口の依頼人となるために一応商売としてコルネリに文句は言えない。

 それに対して、キルスはどこの誰とも知れない冒険者、ドーロンがいくら文句を言っても全く問題ないと判断しキルスに食って掛かったのだった。


「そりゃぁ、お前の剣がこれと同様のなまくらだからだろ」


 キルスは正直にそういった。


「な、なんだとぉ」


 だが、これには当然激昂するドーロンであった。


「馬鹿野郎!」


 ドーロンがキルスに殴りかかろうとしたところ、突如ドーロンの背後に現れた人物がドーロンの頭に拳骨を1つ落とした。


「ってぇな。誰だ!?」


 ドーロンが頭を抑えたまま振り向くと、そこにいたのは1人のドワーフと人族の少女であった。


「げぇ、てめぇは」

「ガイダスさん」


 ドーロンはもちろんコルネリもその人物を知っていた。

 ガイダスはドワーフだけあり、この街の鍛冶職人だ。しかも、ドーロンの祖父ダリアンの師匠でもあった。


「師匠に向かってなんて口を聞きやがるんだお前は」


 そう、このガイダスはダリアンだけでなくグノブ、ドーロンと親子3代続いての師匠でもあった。


「うるせぇ、てめぇを師匠なんて思ったことなんかねぇよ」


 ドーロンは自分が鍛冶スキルを持って生まれたことで自分が天才であると自負していた。

 そのため、ガイダスのところでの修行もすぐに放り出していた。


「んだと」

「はっ、俺は天才だぜ。俺にかかれば剣なんかすぐに打てるんだ。今更てめぇに教わることなんてねぇんだよ」

「あん、てめぇが天才だと、抜かせ、てめぇの剣なんざ、ただのナマクラじゃねぇか」

「なまくらだと、ああ、そっか、さてはてめぇ、俺の才能に嫉妬してやがんだな。だから、俺にあんな修行をさせたんだろうが」

「ちょっと、あなた、さっきから聞いていれば、なんなの。師匠に謝りなさい」


 ドーロンとガイダスのやり取りを見ていた少女がたまりかねたのかドーロンに食って掛かった。


「はぁ、なんだこの女は?」


 ここにきてドーロンも少女に始めて気が付いたようであった。


「こいつは、俺の弟子のサフィーだ、そこの坊が使った剣を打ったもんだ」

「なんだと」


 これにはこの場にいた誰もが驚いた。

 というのも、この国は男尊女卑ではないが、それでも女性が鍛冶職人などの職人として弟子入りするなど聞いたことがなかったからだ。


「サフィーはいまだスキルも獲得出来ていないようなひよっこだが、お前の剣が相手なら十分務まると判断し俺が使わせたんだ」

「なっ、ふざけるな。俺は天才なんだぞ。その俺がこんな女が打ったもので十分だと、てめぇ……ぐへぇ」


 激昂したドーロンはガイダスに殴り掛かったがすぐさま当身を受けて気を失った。


「こいつは、俺が預かるぜ」


 そういって、ガイダスはドーロンを担ぐと颯爽と訓練場を後にしたのである。

 もちろん、その後ろをサフィーもついていったのである。


「ふぅ、すげぇ、ドワーフだったな」

「はははっ、たしかに」


 その後、キルスとコルネリはお互いの腕をたたえあいつつ、周囲に集まっていた冒険者たちと語り合い、ギルドの酒場での宴会と突入したのであった。



 余談だが、ガイダスに連れていかれたドーロンは幾度のやり取りを経て、ガイダスを見返してやろうと代々伝わるまじめさを生かし、修行に励むようになる。

 その際、サフィーはライバルとしてドーロンの隣に立ち、時にはけんかをしながら切磋琢磨し、いつしかこの2人は名工夫婦として世に知られるようになる。

 その所以は、これより数十年後、2人が打った剣は1対の剣となり、1つが王の腰に揺れるとき、もう1つが王太子の腰に揺れていたからだ。

 そう、王が使う剣を人族が打ち上げた。これは、快挙である。そして、名工夫婦と呼ばれるだけあり、2人はけんかしながらも夫婦となったのである。

 また、そんな2人の子供や子孫もまた同じく名工と呼ばれ、シーブルト工房は、キリエルン王国のみならず、周辺諸国にも知れ渡る工房となる。

 尤も、これはキルスには関係のない話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ