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第112話 模擬戦

 警備隊長コルネリとキルスの祖父コルスとの模擬戦を考えていたキルスであったが、突如コルスからコルネリと闘うのはキルスだと告げられた。


「えっ、俺が」

「そうだ。まぁ、俺でもいいんだが、どうせなら意義のある模擬戦がいだろう、そうなると、師匠である俺じゃなく、俺が鍛えたもう1人であるレティアが鍛えたキルスがちょうどいいだろう」


 それは、キルスにとってもコルネリにとっても有意義なものとなる。

 コルスはキルスにそう告げた。


「そうね。正直、あの子がどこまであなたを鍛えたのかも知りたいしね」


 どうやら、レーラも賛成のようだ。


「ええっと、わかった、そういうことなら、やるけど、コルネリはどういうか」

「あいつなら、文句も言わんだろう」


 その後、コルネリに対戦相手がキルスに変更になったことを告げたところ快く了承したのであった。

 そうときまればと、さっそく模擬戦の会場をどこにするかという話となったが、それはすぐに冒険者ギルドの訓練場でいいだろうとなった。

 というのも、コルスは元ギルドマスターであり、現在のギルドマスターでも頭が上がらない存在であり、実は現在のギルドマスターとコルネリは親子の関係でもあるためにあっさりと決まったのであった。

 そして、日取りに関しては、これはキルスもコルネリもいつでもよかったが、模擬戦に使用するのがドーロンの剣である以上、ドーロンに剣を打ってもらう必要があり、その期間が5日となったこともあり、試合は6日後となった。


 ちなみに、ドーロンの剣を使用するのはコルネリであり、コルネリ自らドーロンに依頼を出した。

 そのため、ドーロンは大口の依頼が来たと喜び気合を入れて剣を打つことにしたようだ。



 模擬戦の日。


 キルスはそれまで特に気負うこともなくいつの模様に冒険者の仕事をしたり、祖父母と木剣でもって手合わせをしたりして過ごしていた。

 一方、コルネリは少しだけ気合を入れていた。というのも、コルネリは自身の姉弟子であるレティアが強いとは聞いていたが、実際にはどのくらいの強さなのかわからなかった。

 そこへやって来た、その息子であるキルス、その実力を知りたかった。

 とはいえ、それはいい緊張感を出していた。


 そうして、キルスとコルネリはお互い、特に時間に遅れるでも、早くなるわけでもなく、冒険者ギルドの訓練場へとやって来た。


「よう、キルス、眠れたか」

「ああ、いつもどおりにね」

「それはよかった」


 コルネリはキルスがまだ15歳ということもありもしかしたら気負っているかもしれないと少し心配だったが、それは杞憂であったと安堵した。

 もちろん、コルネリもキルスがそういった少年ではないと初めて会ったときからうすうす感じてはいたが。


 その後お互いに全力を尽くそうと握手をかわしお互いの用意されていた陣営へと向かったのだった。

 この模擬戦は名目上、コルネリとキルスの同門同士の模擬戦となっているが、この街一番の剣士であるコルネリにキルスが挑戦するということで、盛り上がり結構本格的な模擬戦へとなっていた。

 そのため、ギルドも急遽陣営を用意したというわけだ。


「ねえ、どっちが勝つと思う」


 カレンが隣にいたシュレリーに尋ねた。


「そうね。私としてはどっちも身内だから、どっちとは言えないけど」

「それもそっか、わたしは、キルス君かなぁ、ほら、キルス君可愛いし」

「あんたねぇ、そういう勝負じゃないでしょ」

「あははっ、そうそう、それに、相手は警備隊長よ。コルネリ様に決まっているでしょ」


 シュレリーの周りに見に来ていた受付嬢やギルドの女性職員たちが口々にそういった。


「おい、あいつ無謀にもほどがあるよな」

「まったくだぜ。警備隊長って、この街一番の剣士だって噂だぜ」

「そうそう、その警備隊長と模擬戦って、どんだけ調子に乗っているんだよ」

「まったくだぜ。おわったら、あとでしめてやろうぜ」

「おっ、いいなそれ」


 一方ではキルスが勝てるはずないと、無謀な挑戦したキルスをついでにボコってやろうと考える者たちまでいた。



「よし、それじゃ、時間だし、そろそろ始めるぞ。キルス、コルネリ、用意はいいな」


 声をあげたのはここトーライド冒険者ギルドのギルドマスターであり、コルネリの父親、ゴンザスである。

 今回両者の戦いの審判を務めることとなった。

 普通、一方の身内がするのは不正が起こるのではと考えるが、誰もがキルスが負けると思っているわけだから、全く問題とはならなかった。


「ああ」

「問題ない」


 キルスもコルネリも事前に用意した剣を手に持ち、再び前に出てくる。


「おし、先代、何かありますか」


 キルスとコルネリが対峙したこと頃で、両者の師に当たるコルスに何か言葉がないかと尋ねた。


「おう、そうだな。コルネリ、キルス、全力でやれ」


 たったそれだけであった。


「はい、師匠!」

「ああ、言わらずとも、そのつもりだよ、爺ちゃん」


 師匠の言葉に気合を入れなおしたコルネリと、気楽に返事をしたキルスである。


「はじめ!」


 両者が構えたところを見たゴンザスが号令をかけた。


「行くぞ、キルス」

「ああ、いつでも」


 こうして、始まったキルスとコルネリの攻防。


 まず、お互いに距離を詰め、同時に腰だめからの一撃。

 ガキィン。

 お互いの剣がぶつかった。


「えっ!」


 多くが固唾を飲むなか、1人だけ驚愕した声をあげた。

 それから、数合、キルスとコルネリは打ち合った。

 その実力はほぼ互角といってもいいだろう。

 それを見た多くの者たちは驚愕に言葉を失っていた。

 それはそうだろう、コルネリはトーライドきっての剣士であり、誰もが知る強者。一方でキルスは最近この街にやって来たばかりの15歳の少年。

 いくら、これまた有名なレティアの息子といっても冒険者になったばかりとしか思えない少年と、すでに30代後半に差し掛かろうとしている男、剣に対しても年季が違う。

 その2人が、互角に闘えていることに、驚愕するなという方が無理があるだろう。


 そして、その時はやって来た。


ガキィン、バキィ


 キルスの斬撃を受けたコルネリであったが、その時両者の剣が砕けたのである。

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