第104話 シュレリーとシルヴァ― 前編
昼休憩を終え、ギルドに戻ることになったシュレリーであったが、護衛にとキルスよりシルヴァ―を預かった。
というわけで、現在シュレリーはシルヴァ―の背に乗っていた。
しかし、街中であることから、かなり目立っていた。
といっても、シュレリーはその容姿から元から目立っていたために今更シルヴァ―が加わったところであまり変わらない。
つまり、シュレリーは全く気にしていなかった。
そうして、ギルドにたどり着いたシュレリーはギョッとする冒険者や厩務員をしり目にシルヴァ―から降りた。
「それじゃ、シルヴァ―ちゃん、わたしお仕事があるから、ここで待っていてね」
「バウン」
「ああ、でも、時々おやつを持ってきて上げるからね」
「バ、バウ、バウン」
おやつと聞いて嬉しそうに吠えるシルヴァ―にシュレリーは目を細めながら撫でた後、厩務員にシルヴァ―を頼んでギルドに入っていった。
一方、シルヴァ―を預けられた厩務員は困っていたが……。
「ただいま、戻りました」
シュレリーがギルドに戻ると、一斉に囲まれた。
「ちょっと、シュレリー」
「あの子、誰?」
「誰なのよ」
集まってきて質問攻めにしているのはシュレリーと同じく受付嬢や、女性のギルド職員である。
どうやら、普段男っ気のないシュレリーが親し気に話していたキルスのことがきになっているようだ。
「んっ、ああ、キルス君のことね」
「キルス君? どんな関係なのよ」
「教えなさいよ」
キルスの名前を聞き色めき立つ女性陣に、シュレリーは苦笑いしながら答えた。
「みんなが期待するようなことはないわよ。あの子は従弟だからね」
「なんだ、従弟か~」
「まぁ、シュレリーらしいっていえば、シュレリーらしいよね」
そういって、シュレリーには失礼な物言いを言った後去っていく女性陣、しかし、中には気が付いたものもいた。
「従弟、って、あれ、シュレリーのイトコってみんな年上じゃなかったの」
「えっ、どういうこと」
去ろうとしていた者も今のは聞き捨てならなかった。
シュレリーにごまかされたと思ったのだ。
「わたしもそう思ってたんだけどね。いたのよ。ほら、今までのイトコってお母さん側のイトコなんだけど、お父さん側、つまりレティア伯母さんの息子さんなのよ」
「えっ、レティアさん、レティアさんて、あの」
「嘘でしょ。ほんと」
レティアはこの街の出身であり、強く美しい人物として知られている。そのため、この街の女性たちにとっては憧れの存在だ。
ちなみに、男たちにとっても憧れであるために、今のシュレリーの話を聞いた40代の男性職員がショックを受けていた。
「ほんと、わたしもびっくりしちゃったよ。それで、さっき実家に案内したってわけ、おじいちゃんもおばあちゃんも驚いていた」
「そりゃぁ、そうよね。行方不明の娘の子供が急に来たらね~」
シュレリーの祖父母が認めたのならそれは間違いなだろうという判断をしつつ、受付嬢の1人がそういったところで上司から仕事に戻るように言われ、シュレリー達はそれぞれの仕事に戻っていった。
それから、2時間ぐらいが経った頃だろうか、ギルドの受付嬢という仕事はただ座っていればいいだけの仕事ではない、冒険者や仕事の依頼者など、訪問者の相手はもちろん、事務仕事も多数存在している。
そんな仕事をこなしているためにたまには休憩が必要になるということで、ギルドではよほど忙しくない限り大体2時間に1度ぐらいの休憩時間が設けられる。
「はぁ、疲れた。あれっ、シュレリー、どこ行くの」
休憩時間になり、シュレリーの同僚であるカレンが、休憩に入ったとたんに席を立ち、ギルドに併設されている解体場に向かっているシュレリーを見つけ尋ねた。
「うん、ちょっと、解体場に端肉とかあればもらおうと思ってね」
「?」
シュレリーの回答にカレンは首を傾げつつも、何か気になり一緒に行くことにした。
「気になるから、あたしも一緒にいく」
というわけで、2人連れ立って解体場に向かった。
「こんにちは、ドロンゴさん」
ドロンゴというのは、このギルドの職員で冒険者が狩ってきた魔物などの解体を手がけたり指導したりする立場の人物である。
「んっ、おう、シュレリーちゃんとカレンちゃんじゃねぇか、どうした」
「端肉とかってあります。あればもらいたいんですけど」
「端肉だぁ、なんだ、そんなもん、いくらでもあるぜ。なんだ、腹減ったのか」
「いえ、私じゃ無くて、従魔にあげるんです」
「従魔? シュレリーちゃん、従魔なんて居たっけか」
従魔にあげるという言葉にドロンゴは訝しんだ。
「私のじゃなくて、今預かっているんです。待たせているからおやつでも持って行ってあげようと思って」
「なるほどな。いいぜ、ちょっと待ってな。ところで、従魔ってどんな奴だ」
「えっと、魔狼です」
「魔狼か、ああ、そういえば、厩舎にいたなぁ。ほら、持っていきな、ああ、でも、従魔ならもしかしたら生肉よりも焼いた肉の方がいいかもしれんぞ」
「ああ、そうかもしれませんね。契約している人の実家は食堂らしいし」
「そうかい、なら、そうしな」
「はい、ありがとうございます」
「ねぇ、従魔って?」
ここで、シュレリーとドロンゴの会話を黙って聞いていたカレンが不思議そうに尋ねた。
「うん、キルス君から、預かって、今厩舎で待ってもらっているのよ」
「へぇ、あたしも行ってもいい」
「いいわよ。それじゃ、ドロンゴさん、私たち行きますね」
「おう」
その後、シュレリーとカレンは厩舎にやって来た。
「うわぁ、おおきい、てか、大きすぎない。もしかして、グレイタス、いえ、それにしては違うような……えっ、まさか!」
さすがはカレンもギルドの受付嬢だけあって、魔物を見ただけでそれがどんな魔物か看過したらしい。
「ふふっ、すごいでしょ。そう、フェンリルよこの子、シルヴァ―ちゃんごめんね」
フェンリルとわかり茫然とするカレンをよそにシュレリーはシルヴァ―を撫でていた。
その姿を見つつ、カレンはやっぱりシュレリーもあの一家だわ。そう感想をつぶやいた。




