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第101話 祖父母(レティア)

本日2本目

 冒険者として活動していた激動の日々、パーティーを組んでいたレーラとの間に娘が生まれたことで冒険者を引退しギルドの職員となったコルス。

 その娘は2人の血を引いてとても美しく成長した。

 しかも、これまた2人の血を引き、とてつもなく強く成長していた。

 また、その娘は冒険者になりたいという。2人はそんな娘に迷った。

 冒険者は自分がやっていたことであり、コルス自身が現在務めている職場がサポートしているものだ。

 もちろん、コルスは喜んだ。しかし、それでも、冒険者という仕事の大変さ、苦労、命を簡単に落とすものであるという事実。

 これらに大いに悩んだ。確かに、この娘ならそれらを簡単に乗り越えていくだろう。そう思えた。

 しかし、それでも、賛成は出来なかった。

 それは、レーラも同じ思いであった。

 とはいえこの娘、見た目に反して、気が強く男勝りであった。

 そんな娘を2人は抑えられるとは思えなかった。

 そのため、登録だけは許した。

 その際、仕事は街中の簡単な仕事をさせるつもりであった。

 しかし、そんな2人の思いとは裏腹に、登録したとたんさっさとランクを上げて、街を出てしまったのだ。

 その後、ギルドの職員という立場を使い、何とか娘の動向を知ることはできた。

 それを聞くたびに、娘がまだ生きていることに安堵し、やったことに頭を抱えていた。

 そして、そんな中、聞こえてきたのは、”殲滅”という見た目に似合わない、物騒極まりない二つ名であろう。

 そんな娘が突如20年ぐらい前から一切の活動をやめてしまい、コルスの元に情報が入らなくなった。

 それにより、もしかしたら娘は命を落としたのでないか、そんな思いが頭を寄っては消し、を繰り返してきた。

 そんな、かつてもっとしっかりと止めておけばよかったと、後悔の日々を送っていたある日、突如昼に帰宅した息子の娘、孫娘(これまた、美しかった)がとんでもない知らせを持って帰ってきた。


「レティア伯母さんの息子さんよ」


 孫娘、シュレリーが嬉しそうにそういった。


「はっ」


 コルスは信じられなかった、あの娘の息子、確かに、見た目はいい、しかし、あの娘レティアは男にあまり興味がなさそうだった。それより、とにかく戦闘訓練という娘だった。

 その娘に子供、その考えは全くなかったのだ。


「えっと、初めまして、爺ちゃん、婆ちゃん、それと、叔母さんかな、俺は、キルスと言います」


 キルスは、多少の緊張をしつつ祖父母と叔母に挨拶をした。


「市民証を見せてもらったけれど、確かにレティア叔母さんの名前があったわ」

「い、いや、それは、同じ名前だという可能性もあるだろ」


 市民証には名前しか書かれていないためにそれだけを証拠とは言えない。


「これを、婆ちゃんに見せればわかるって、母さんから聞いてる。たしか、元は、婆ちゃんの物だったって」


 そういって、キルスは冒険者になる際にレティアから受け取った1振りのナイフを腰から抜き放ちレーラにみせた。


「……」


 キルスが取り出したナイフをしげしげと見つめるレーラ、しかし、すぐに気が付いた。


「これは、私のナイフ、あの子に渡したものよ。それを持っているってことは、本当に」

「冒険者になった時にもらったんだ。母さんもそうだったって聞いた」

「ああ、レティア」

「そうか、あのじゃじゃ馬め、まさか、結婚していたとはな」


 ナイフを見たことで、キルスがレティアの息子であるということがわかったことで、レティアが命を落としたのではなく結婚して引退しだけであったことがわかって、2人心底安堵した。


「それから、これ、母さんからの手紙」

「手紙? レティアから?」


 レーラは訝しんだ。

 レティアは手紙を書くような娘ではなかった。そのレティアが手紙を書いたことに驚愕した。


「姉さんが、書かせたからね」


 そんな母レティアを知っているキルスは苦笑いを浮かべながら言った。


「エミルさんっていって、私に似てるんだって」

「そうか、それなら納得出来るな。しかし、なるほど、あいつの娘なら、シュレリーに似ていて当然だろうな。シュレリーはレティアに似ているからな」

「そうね。あっ、ほんとだ。レティアの字」

「そうだな。相変わらず男らしい字だ」


 それから、2人は何度も繰り返すようにじっくりとレティアからの手紙を読んだ。

 そこには、ファルコのこと、子供たちのことが書かれていた。そして、最後には自分が今幸せであることが書かれていた。


「……あのじゃじゃ馬が、収まるところに収まったか」

「子供たちに囲まれて、幸せならよかった」

「だな。しかし、囲まれてって、それしか書いてないな」

「……肝心なところが抜けているところ、変わってないわね」

「あははっ」


 レティアの手紙には、具体的に子供たちの人数など、ファルコのことなどはほとんど書いていないかった。

 それを受けて、子供が出来ても変わっていない娘に安堵しつつもあきれているコルスとレーラであった。

 一方で、そんな母にあきれる祖父母に乾いた笑いを浮かべるキルスであった。


「それで、キルスといったな。話してくれるか」

「もちろん、そのつもりでここに来たんだしね」

「お話もいいけれど、そろそろお昼にしませんか? キルス君も食べるでしょう」


 キルスが家族の話をしようとしたところで、いつの間にか席を離れ、キッチンに入っていた叔母であるリミルファが昼食を作り呼びに来た。


「そうだな。もらえると助かる」

「もちろんよ。さぁ、いらっしゃい、それと、シュレリーも食べるのよね」

「そりゃぁ、もちろん」


 それから、キルス達は揃ってダイニングに向かい叔母が作った昼食に舌鼓をうつこととなった。


「それで、話しのつづきだが、まずは、旦那、つまり、父親の話を聞かせてくれ」


 食事も一段落したところで、お茶を一杯飲んだコルスがキルスにファルコのことを尋ねた。


「ああ、父さんは、そうだな。すごく穏やかで物腰も柔らかいよ、ただまぁ、かなり気の弱いところもあるけどね」

「あら、そうなの。レティアったら、自分と正反対の人を選んだのね」

「確かに、だが、それは男としてはどうなんだ。気が弱いのはどう考えてもレティアの尻に敷かれているな」


 キルスからの説明を受けて、ちょっと頼りないけれど大丈夫だろうかと、少し心配になったコルスとレーラだった。


「でも、……」


 ここで、キルスは言葉を切った。


「顔は、とてつもなく凶悪」

「……はっ?」

「えっ、今、なんて」

「聞き間違いかな」

「えっと、えっ」


 キルスが先に穏やかで物腰が柔らかく気が小さいと聞いていた手前、その後の顔が凶悪という言葉に結びつかずコルス達は混乱した。

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