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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
52/89

第52話

 簡素な拠点のような建物から出てきたのは男のエルフ族達だった。

 何人かいる。

 結界のような自分達の精霊術が突然消滅したことで慌てているようだ。


「中にいるぞ」


 ディアの闇鷹が捉えたのは、その拠点の中央に紐で縛られている巨大な狼だった。

 フェンリル級の魔獣とされた狼とみて間違いないだろう。

 やはりエルフ族、それもフレイ王国のエルフ族が裏で操っていたか。

 でもどうやって強力な魔獣を操っているんだ?

 紐で縛っているようだけど、そんなことで操れるのか?


「アーネス様上空からお願いします。それを合図にいきます」

「了解しました」


 上空へと舞い上がるアーネス様。

 俺達もぎりぎりまで近づいていく。

 エルフ族達の拠点の上空から、アーネス様の聖なる光りが降り注ぐ。

 属性付与はあらゆる能力を底上げしてくれるけど、モニカが雷による光速化の速度を手に入れたように、アーネス様の聖属性はこうして遠距離攻撃することができる。

 無数のビーム砲が空から降ってくるかのようだ。


 聖なる光りが降り注いだのを合図に、今度はモニカが雷となって相手拠点の中に入るとエルフ族達を一瞬で気絶させていく。

 情報を聞き出すために殺しはしない。

 戦闘力の差は歴然であっという間に制圧が完了してしまう。


「さて、あとはこいつか」


 中央に紐で縛られた魔獣。

 えっと……縛られたまま動けないみたいなんですけど。

 フェンリル級の魔獣との戦闘! とか思って来たから拍子抜けではある。

 まぁ、戦わないで済むならそれが一番だ。


 気絶させたエルフ族の中からリーダーと思われる者の意識を回復させた。


「質問させていただきます」

「なっ……なんだお前らは!」

「貴方達はフレイ王国のエルフ族でいいですね?」

「お、俺達は」

「あ~いいです、そういうの。身分証のカード見つけてますから。えっと、フレイ王国第一軍団の軍団長グラゲスさんですね」

「くっ……」

「聞きたいことは、あそこの魔獣なんですけど……あれってこのままだと動かないですよね? ここら辺で暴れさせる時はどうしていたんですか?」

「…………」


 フレイヤ連れてくるか?

 魅了と囁きで情報を引き出してもらう?

 でもな……別にこの魔獣のことを知りたいわけじゃない。

 この魔獣を縛っている紐が何なのか不思議だけど。

 こんな強力な魔獣を縛って動けなく出来る紐って、絶対普通の紐じゃないし。


 魔獣は殺しちゃうか。

 生かしておく理由はない。

 間違いなく災害級の魔獣だ。

 情報は後で聞けばいい。


「モニカ」

「うっす」

「やっちゃって」


 モニカの斧が魔獣の大きな首に振り下ろされた。




 拠点にいたフレイ王国のエルフは全員で12人だった。

 間違いなくフレイ王の指示のもと、この魔獣をここで暴れさせていたのだろう。

 全員目隠しの上に気絶してもらって、鍵の空間の中の部屋に閉じ込めた。

 ちょうどフレイヤ王国も近いことだし、フレイヤに情報を聞き出してもらおう。


 ただ……問題はこの紐だ。

 これやっぱり普通の紐ではなかった。

 魔獣から紐を取っていこうかと思ったんだけど、この紐は大地から生えるように伸びていて引っこ抜けない。

 アーネス様達がどんなに力を入れても、紐を動かすことが出来なかったのだ。

 仕方がないので紐とそれに縛られた魔獣の死体はここに置いておく。




 フレイヤ王国の近くまで来ていたことから、アーネス様が飛んでいけばすぐだった。

 俺達が来た時のために、やはり存在する女王のための秘密通路を1つ開けておいてもらっている。

 まずスヴァルト区域に行ってナルルと合流する。

 笑顔で出迎えてくれるナルル達。

 そしてナルルの闇魔法『霧』を使いながら、秘密通路を通って女王の館の中に入る。


 フレイヤもナルルほどの笑顔ではないが、俺達のことは歓迎してくれる。

 なんせ精霊力を得られるのは俺からなのだから。

 あいかわらず美しくて魅力的なのも変わらない。

 危険な香りがぷんぷんするけど。


「というわけで、グラゲスという男から情報を聞き出してもらっていいですか?」

「いいだろう。では我の寝室のベッドの上に寝かせるがよい」


 この先に何が行われるかは聞かないことにした。

 聞かなくても分かるけど。

 グラゲスという男の情報を見ておいた。

 やはりスキールニルの契約による制約があった。


 グラゲスがフレイヤのベッドに運ばれてから2時間ほどが経過した。

 そこでフレイヤが一度出てきたのだ。

 もう少し服を正してから来て欲しかった。


「何も喋らないですか」

「信じられんがな。我の魅了と囁きに抵抗しておる」

「制約で話せない可能性は?」

「聞いていることは世界樹のことではない。フレイ王国のことを制約で話せないとは思えないが……制約とは違う何か強力な魔法をかけられているのかもしれん」


 それなりに精霊力を消費して使った魅了と囁きに抵抗するのか。

 となると……ここであれの出番か。

 出来れば使わないままが良かったのかもしれないけど、まぁ別に俺に害があるわけではないからいっか。


「フレイヤ様。新たな力をフレイヤ様に授けたいと思います」

「なに! 我にはまだ授かれるものがあったのか!」

「はい。新たな精霊術を1つと、新たな精霊具を1つ授けます。それを使って、もう一度情報を聞き出してもらえるかやってみてもらえますか。あ、精霊力も与えておきますね」

「分かったのじゃ! 早く我に授けるのじゃ!」


 こうして女王フレイヤは新たな精霊術『性技』と新たな精霊具『透ける衣』を手に入れたのであった。

 そして1時間後。





「あっさり口を割りおったぞ」

「さすがはフレイヤ様……それでどうでした?」


 グラゲス達はフレイ王からの命令で、あそこに幻の結界を展開して、あの魔獣を守っていたそうだ。

 守っていた。

 魔獣を守るとはどういうことか。

 答えは簡単だ。

 俺達が動けない魔獣を倒したように、あの状態では魔獣は一切動くことが出来ないため、グラゲス達が守っていたのだ。

 ただ、アーネス様達の戦闘力を知らなかった。

 グラゲス達で守れるはずもない。


 グラゲスが知っていることは非常に少なかったが、あの魔獣を操っているのはフレイ王自身だということは分かった。

 オーディン王国の北部で魔獣を暴れさせる時は、フレイ王自身があの拠点までやってきて、魔獣を解放していたそうだ。

 どうしてフレイ王だけが解放できるのか。

 あの紐が何なのか、グラゲスは何も知らないそうだ。


「あの紐はフレイヤ様が持っていた首飾りの神器と同じものだと思います?」

「可能性は高い。それほど強力な魔獣を操れる物となれば世界樹の守護者がフレイに授けたと考えるのが自然だろう」


 あの紐はフレイ王しか操れない。

 そして次にフレイ王が来るのは……。


「しばらくご一緒して頂くことになりますね」

「仕方あるまい。ミラが我の代わりを務めるので問題ない」

「では残りの11人も」

「うむ。我にとっては褒美のようなものじゃ」


 こうして北部の森にいた男のエルフ族12人全員が、フレイヤの魅了と囁き、そして新たに得た性技と透ける衣によって洗脳状態となったのであった。


 次にフレイがあの拠点にやってくることになるまで、そこに潜むことにした。

 12人全員が洗脳されているため、伝令係が来ても問題なく対処できる。

 中央の魔獣は寝ているようにして、首がくっついているようにどうにか見せた。


 問題はアーネス様達とフレイヤが共に過ごす時間を共有してしまったことだ。

 一度は俺の命を狙った敵だけど、今となっては俺からでなければ精霊力の供給を受けられない仲間でもある。


 そしてフレイヤはアーネス様達が欲するものを2つ持っている。

 1つは精霊獣の精霊豚による加護『多産』だ。

 これは豚のピグモンに黄金という餌を与えると得られることがある。

 しかし黄金はすぐに貯まるものではない。


 そこでアーネス様達が欲するもう1つのもの……それは技術と知識だ。

 そう……性技である。

 精霊術『性技』

 フレイヤはその性技によって、相手を洗脳状態にすることが出来た。

 アーネス様達にとって必要なのは相手を洗脳することではない。

 その過程においてフレイヤが得ることになってしまった、様々な性技の技術と知識をアーネス様達は欲してしまったのだ。


 フレイ王がここにやってくるまで、アーネス様達はフレイヤに様々な性技の技術と知識を教えてもらっていた。

 そのためか、日に日にアーネス様達からとんでもないご奉仕を受けることになる。

 中にはいったいどんな変態プレイだよ! と叫びたくなるものもあったが、楽しかったのでよしとした。


「男はSに見えて実はM……勉強になりました」

「本当ですわ。おかげでアルマ様との熱く楽しい夜がさらに充実したものになりました」

「よいよい。アーネスは未来のオーディン王国の女王であろう。女王同士の親睦を深めることが出来て我も嬉しいぞ」


 女王同士の交流に口を出すことはないけど、変態プレイを覚えていくのはほどほどにね……。




 フレイがやってきた。

 この間に2度の伝令係りが来ていたが、オーディン王国に動き無しという情報を伝えていた。

 魔獣が暴れ足りないと思わせるためだ。

 案の定、再び魔獣を動かすためにフレイ王自らやってきてくれた。

 フレイ王一人で来るはずもなく、護衛の兵士が8人。

 大人数では動けないから少数精鋭か。

 洗脳されているグラゲス達がフレイを中央広場に連れていく。

 この間に、ナルルとディアが護衛の8人を闇魔法でフレイと分断させて、気絶させておいた。


「ん? なんだこれは……し、死んでいるではないか!!!」


 中央広場でフレイ王が叫ぶ。

 こうして見ると、フレイヤと違っておじいちゃんだな。

 エルフ族は老いが最後の最後にしか来ない。

 ハイエルフのフレイは長命とはいえ、あれだけおじいちゃんみたいな老人になっているということは、もう寿命は長くないのだろう。


「おい! どういうことなんだ!?」

「コ、コレハ……」

「なっ!」


 洗脳状態のグラゲス達も一斉にその場に倒れる。

 これでフレイだけになった。


「お久しぶりですね。フレイ様」

「貴様は……ア、アーネス!」

「フレイ様に呼び捨てにされる記憶はございませんが……もちろん妹のマリアナも」

「これは貴様の仕業か!」

「仕業も何も、これを仕組んだのはフレイ様でしょ?」

「くっ……お前達がマリアナを私に寄越せばこんなことにはならなかったのだ!!」


 なんて身勝手な。


「残念ながらマリアナはフレイ様のもとに嫁ぐのは嫌なのですよ。すでに想いを寄せている御方がおりましたので」

「アルマというどこの馬の骨かも分からぬ奴のことか! 貴様とも婚約したそうだな!  どういうことだ!」

「フレイ様にどうこう言われる筋合いはございません。何より私の夫への侮辱は許しませんよ」

「うるさい! このうるさい蠅め!」

「まったく……そもそもどうしてそんなにマリアナに執着するのですか? 何か理由があるのですか?」

「貴様が知る必要などない!」


 この場はまずアーネス様に任せている。

 フレイヤはもちろん姿を見せるわけにはいかない。

 俺とマリアナ様も出来れば姿を見せたくないところだ。


 前回の反省からフレイを拘束してしまってもいいんだけど……おそらく神器を隠し持っているはずだから。

 ただ前回は神器を使われることを想定していなくて不意打ちだった。

 今回は神器を持っていると分かって準備もしてきている。

 あえてフレイを拘束はしなかった。

 フレイの持つ神器も潰しておきたい。

 最悪勝てないと思ったら、ここから逃げてもいいしね。

 神器の効果がどれほど続くのか分からないけど、永遠ってことはないだろう。

 フレイヤも神器を使ったことなんてなかったから、効果時間がどれくらいか知らなったんだよね。


「いずれにしても、頼みの綱の魔獣は死にました。今後二度とオーディン王国に害成すことをしないと誓って頂けるなら、今回の件は不問にしますが」

「ずいぶん偉くなったではないか!」

「これでも一応未来の女王ですので……それでその魔獣を縛っている紐。それ動かせません。その紐をこちらに渡して頂けますか」


 あの紐をフレイに回収されてしまっては、また同じことが起きる。

 そのためにもあの紐をこちらで回収したいのだが、大地と繋がっていて動かせない。

 ディアの絶でもその繋がりはまったく絶てなかった。


「この紐か? ふん! 貴様に扱えるものではないな」

「私に扱えなくとも、フレイ様にまた使われては困りますので」

「……いいだろう」


 フレイはゆっくりと魔獣の死体を縛る紐に手を伸ばした。

 チリチリと嫌な予感がする。

 これは戦気だ。

 フレイはまだ戦うつもりだな。

 となると、あの紐……やはり神器か。


「くっくっく……そんなに欲しいならくれてやろうではないか。この紐を」

「……」

「貴様はここで死ね! グレイプニルよ! 解き放て!! フェンリル!!!」


 紐が千切られた。

 同時に死んだはずの魔獣の死体が大きく波打った。


 前回とは違う。

 準備は整えている。

 逃げる用意もある。

 そして期待しているものが見られるだろうか。


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