39.勝ち筋
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【チート・クラフト】:レベル23
【ワールドチェンジ】
・RPG『マルクト戦記』レベル18
ワールドスキル
【通常攻撃】
【戦技】
【魔法】
・プチファイア
・ヒール
・エリアヒール
・キュア
・エリアキュア
・メテオレイン
・ライトニングシールド
・ファイアーウォール
・氷獄の嵐ブリザード・デス
・炎獄の怒りヘルブラスト◀ピッ
【防御】
【換装】
【逃げる】
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オズの手から地獄の業火が吹き出した!
周囲に転がる骨諸共すべてを火葬するかのように、広範囲の黒炎が吹き荒れる!
満身創痍のカルドの頭上に現れたHPバーは残り少なく、赤く点滅していた。
「く、今だ!」
『あいよー!』
遙か上空からアステリアがスキルを発動した。
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【チート・クリエイト】:レベル309
【ワールドチェンジ】
・LIFE『■■■■■の世界』レベル309
管理者権限を行使
【強制経験値割り振り】
【カルド】がレベルアップしました!
レベル98→99
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業火に巻かれる瞬間、カルドのHPが全回復する。
更に強靱になったカルドはそのまま突貫した。
残された経験値はレベルアップ一回分。
もはや一刻の猶予も無い。
「体力が…回復しただと。いや、それよりも…」
【炎獄の怒りヘルブラスト】の直撃を受けたカルドのHPは緑、最大値から僅かに減っただけ。
かなり強力な魔法だったはずだが、これでは何発も当てなければならない。
『こんだけレベル差があれば魔法だろうがなんだろうが、関係ねェ! やれー! カルド! 次で終わりだ!』
業火の中を猛然と進み、カルドがオズワルドに剣をたたき込む!
【ライトニング・スラッシュ・ゼロ!】
オズワルドが剣で受けても関係ない。
ゼロ距離で放たれた雷がオズワルドとカルドを襲う!
オズワルドは吹き飛ばされ、爆心地にいたカルドのHPが急激に減り、再び赤くなっていた。
お互いソルディア川に落ちて濡れているため感電のダメージが大きい。
業火に巻かれて多少乾いたカルドはともかく、オズワルドは…。
「はぁ…はぁ…。こ、ここまでやれば流石の兄さんも…」
『ああああ! だからスキル使うなっつってんだろうが! 普通に殴るだけで勝てるんだよ! まぁ、レベル99のお前の体力を7割削る一撃だ…レベル23のオズが二発も喰らえば、流石に……どういうことだ?』
オズワルドが立っていた。
明らかにダメージを受けているが、おかしい。
立っていられるはずがない。
不思議に思ったアステリアがRPG『マルクト戦記』を起動して確認すると、オズワルドのHPがみるみる回復していく。
『なんだ。強力なリジェネがかかってる?』
「りじぇねとはなんだ?」
『あー、くそ。説明がめんでェ! つまりな、オズのHPは時間経過で回復してるんだよ! 急激になァ!』
「……は? そんなの勝ち目がないではないか!」
そうこうしているうちにオズワルドのHPは最大値まで回復する。
アステリアのRPG『マルクト戦記』はレベル289。
オズワルドよりも遙かに高レベル、当然リジェネも習得はしている。
だが、リジェネはここまで一気にHPが回復させる魔法ではない。
【閲覧権限】でオズワルドの履歴を確認してもリジェネの使用履歴はない。
それらしい履歴は戦闘前、カルドがソルディア川から上がるまでの待機時間に行われた。
・ハイポーションを使用
のみだった。
ハイポーションは確かに強力な回復効果を持つが…ここまで持続的に回復するものではない。
アステリアの【閲覧権限】は文章化された過去を閲覧できるだけ。
世界の全てを詳細に文章化すると読解に時間がかかるため、限界まで意味をそぎ落としている。
すべてに効率を求めるアステリアの性格が裏目に出たのだ。
オズワルドは知っている。
ポーションは飲むだけでなく、傷にかけることでも効果があると。
故にハイポーションを布に染みこませ、傷口に巻く行為も冒険者であればなんら珍しくは無い。
オズワルドはソルディア川から上がった後、SLG『文明の箱庭』レベル19で作成したハイポーションを頭からかぶったのだ。
事前に全身をハイポーションで濡らしていれば、傷ができる度にハイポーションを塗布したのと同じ効果が期待できる。
高価なハイポーションを湯水のように使うことになるため、これまで誰もやらなかったが、無限に作成できるオズワルドなら話は別である。
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【チート・クラフト】:レベル23
【ワールドチェンジ】
・RPG『マルクト戦記』レベル18
ワールドスキル
【通常攻撃】
【戦技】
【魔法】
・プチファイア
・ヒール
・エリアヒール
・キュア
・エリアキュア
・メテオレイン
・ライトニングシールド
・ファイアーウォール
・氷獄の嵐ブリザード・デス◀ピッ
・炎獄の怒りヘルブラスト
【防御】
【換装】
【逃げる】
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凍てつく氷の嵐がカルドを襲う!
ヒュゴオオオオオオオオオオオオオ!
カルドは最悪のケースを考える。
カルドが使用できるレベルアップはあと一回だけ、強力なリジェネ状態になっているオズワルドを一撃で倒すには強力なスキルを使用するしかないが、カルドが扱えるスキルは【ライトニング・スラッシュ】のみ。
選択肢が少なすぎる。
もっともリスクを取らずに済む方法は何だ?
正解が、カルドにはわからない。
どんなに素早さのステータスが高くとも、思考に時間を割かれては無意味だ。
オズワルドの【氷獄の嵐ブリザード・デス】が入念に放たれ、諦観したカルドは追い詰められていく。
オズワルドは最悪のケースを考える。
オズワルドは警戒していた。
オズワルドからすればカルドが持つ正体不明の超回復が後、何回使用できるのかわからない。
全身に浴びたハイポーションの効果も時間経過でいずれは消失するだろう。
仮にカルドが無限に回復できた場合、オズワルドに勝ち目がない。
その場合は勝ち目がないので、オズワルドは考えないことにした。
前世でゲーム制作をしていた頃の記憶が蘇る。
もし、このエラーが解決できなかったら?
もし、手に負えない技術的な問題に直面したら?
もし、ゲームが完成しなかったら?
制作中はあらゆる「できない理由」が押し寄せてくる。
こうなったら詰むかもしれない。そんな状況に何度なったかもわからない。
だが、そんなことを考えても意味は無いのだ。
それに、案外やってみたらサクッとうまくいくことの方が多い。
オズワルドはリスクを織り込む。
その上で勝ち筋を想定した。
カルドの超回復がもう使用不能になっているケース。
使えたとしても回数制限があるケース。
この場合なら勝ち目がある。
勝ち目があるので、オズワルドはハイポーションの効果が失われる前に全力でカルドを攻撃し続けることにした。
【氷獄の嵐ブリザード・デス】【氷獄の嵐ブリザード・デス】【氷獄の嵐ブリザード・デス】【氷獄の嵐ブリザード・デス】【氷獄の嵐ブリザード・デス】【氷獄の嵐ブリザード・デス】【氷獄の嵐ブリザード・デス】【氷獄の嵐ブリザード・デス】
「ぐ、ぐわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
いくらレベル差があっても、何もせずに攻撃を受け続ければ負ける。
一帯どころかソルディア川ごと凍り付いたカルドは遂に膝をついた。
カルドは賢明に立ち回ろうとした結果、いたずらに絶望し、敗北を喫したのである。




