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とある傭兵の勘違い伝承譚~前世でゲームを作り続けて過労死した記憶を引き継いだおっさん、ゲーム世界にて神話になる~  作者: 間野ハルヒコ


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20.ライトニングシールド

【ライトニングシールド】


 オズワルドが手を掲げると、瞬時に巨大な光の盾が現れる。


「え、何!?」

「でっか!」


 ブブン、と。

 光の盾が増えた。


「増え…た?」


 レティがそう言うが早いか。


 盾の群れは、ブラックフォージ領だけでなく、グレイフォード領の砦…さらには一部の森の上空に展開。

 

 次の瞬間に【メテオレイン】が降り注いだ。


 ズドドドドドドドドドッドドォォン!


 轟音鳴り響く中、レティの悲鳴があがる。

 それはそうだろう。


 何の前触れもなく天変地異が起きたのだ。


 たまたま森にいた屈強な冒険者たちは「この世の終わりだ!」とわめいて互いに抱き合い、震え上がった。


 国境警備隊の面々は恐慌状態に陥った。


 ある者は叫び、ある者は神に祈り出す。


 恐怖から、どこかへ逃げだそうとする者までいた。


「くっ! こんな時に…! メル! 止めろ!」


 隊長の呼び声に即応した副隊長メルが走る。

 【ライトニングシールド】の効果範囲から出そうになった男をメル副隊長が蹴り飛ばした。


「馬鹿野郎! 全員、伏せろ! 隊長のお力を無駄にするつもりか!!」


「隊長…これを隊長が…?」


 傭兵達の認識ではオズワルド隊長は一切のスキルを使えないはずだった。


 だが、今まさに目の前でオズワルドは【ライトニングシールド】を発動し、謎の天変地異から自分たちを守っている。


 傭兵たちが考えたことは同じだった。


 隊長は本当にスキルを使えなかったのだろうか。

 これまでは実力を隠していた…そう考えた方が自然だ。


 仲間である俺たちの命を守るため、隊長は自らに課した禁を破ったのだ。


 実のところ、傭兵達はオズワルドが何者かなどわからない。

 わからないからこそ、隊長と呼び安心しようとしていた。


 ある時はグレイフォードの奇襲を予期し。

 ある時ははぐれワイバーンの迎撃を指揮し。

 ある時は天変地異から不思議な力で守ってくれる。


 この素性の知れない男の度重なる献身に、親愛の情をおぼえぬことなどありえなかった。


 傭兵達は叫ぶことを止め、神に祈ることを止め、にわかに落ち着きを取り戻し、防御態勢をとる。


 この防御態勢すらオズワルドから学んだことであった。


 ルシアンは超広範囲攻撃を防ぐオズワルドを前にして、己の矮小さを恥じた。


 どう見積もっても、およそルシアンが太刀打ちできる相手ではなかった。


 オズワルド…。

 いや、オズワルド隊長の本分は魔法なのだろう。

 

 だというのに、得意の剣技をすべて弾かれたばかりか、命まで救われている。


 俺は目の前の隊長を倒すことに躍起になっていたが、隊長は俺を含めた全員を助けようとしていた。


 ここまで大規模な魔法となるとかなり長い詠唱が必要になるはずだ。


 隊長が一向に反撃してこなかった理由は俺の攻撃を弾きながら、詠唱を続けていたからなのではないか?


 隊長がなぜ「ターンを渡せ」と言い、俺に「はい」と言わせたかは謎だ。


 おそらくは高位の魔法使いが扱う何らかの儀式。

 特定の条件を満たすことで発動を可能とする、大魔法に違いない。


 あまりにも格が違い過ぎる……。

 

 これほどの男がいたずらに兵を堕落させるなどありえるだろうか。


 ありえない。

 何かしら深い事情があった上でのことなのだろう。


 そうルシアンは確信した。

 

 ドギャギャギャドガズガガガガガガーーーン!!


 オズワルドは【メテオレイン】を弾きながら内心動揺していた。


(やっべ…。どうすっかな……)


 そもそも、なんとなく気になるからという理由で【メテオレイン】を放ったのはオズワルドである。


 みんなの命を危険にさらしたのはオズワルドの落ち度。

 【ライトニングシールド】が間に合って心底ほっとしている。


 ここまで凶悪な魔法だと知っていれば、こんなところで発動なんてしなかったのに。


 そもそもワンポチで石の嵐を起こせるスキルなんて存在していていいのか?

 詠唱すらしていなかったぞ。


――――――――――


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


レベルが上がりました


――――――――――


 先程からウインドウはずっとこんな感じだった。


――――――――――


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


レベルが上がりました


レベルが上がりました


レベルが上がりました


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


スケルトンの群れを倒した!


地の底で眠りし者・ベヒモスを倒した!


レベルが上がりました


――――――――――


 全然表示が途切れない。


 ずっとスケルトンを倒しただのレベルが上がっただのを表示し続けている。


 どこにスケルトンがいるのか皆目見当もつかないが、倒したと書かれているのだから倒したのだろう。


 レベルが上がるのはいつものことだし、いちいち気にしてはいられなかった。


 ふと、周囲を見ると傭兵達は崇高なものを見るような目をしていた。

 レティやメルに至っては、神盾を携え天災に立ち向かう勇者を見るようであった。


「やっぱりオズワルドさんはすごい!」


 オズワルドは居心地の悪さを感じたが、誤解を解くわけにもいかない。


 すべてを説明すれば【メテオレイン】の発動者がオズワルドであることも伝えなければならない。


 指先一つでこの規模の破壊を起こせると気づかれたら…もはや人間扱いは望めないだろう。


 オズワルドはただの一個の人間として存在を認めて欲しかった。


 となれば隠し通すしかない。

  

 どうせ嘘をつくのなら、うまく利用しよう。


 そう、オズワルドは考えた。



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