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99.ムリン城の跡地利用

約3カ月ぶりに公務で出掛けたまま行方不明だった王子が戻り、城下町はお祭りムードになっていたようだ。

先に救助され、城に戻っていた者より帰路で船が遭難したことを知らされ、城内は暗い雰囲気になっていたようだが、無事がわかり皆、安心したようだ。


数日後、ドワコはリオベルクの護衛から戻って来た第2護衛隊の隊長であるベラから報告を受けた。


「ご苦労様。今日はゆっくり休んでください。」


「はい。ありがとうございます。それでは失礼します。」


そう言ってベラは執務室から退室した。


ドワコが戻ってからは、業務の報告、現在行われている状の進捗状況、魔石燃料や魔動機の製作などたまっていた仕事をこなすことで数日が経過してしまった。仕事も一段落してようやく日常の生活が戻って来た。



そんなある日、執務室でエリーより報告を受けて驚いた。


「ドワコさん、ムリン城とその城下町、その周辺の整地作業が終わりました。またジョディの村とを結ぶ道路及び線路の施設作業、そして駅の建設も完了しました。」


「えっ?そんな指示した記憶ないけど?」


ドワコが知らない所で事業が進められていた事に驚きの表情を見せた。


「えっとですね。これはドワコさんがいない間、私の判断で進めていた事業なんです。人口が増えると食料の生産が追い付かなくなりますよね?」


「確かに・・・生産量が増加したとはいっても、それ以上に人口が増えた為に対策を考えないと思っていた所だけど・・・。」


「そこで広大な平地のあるムリン城近辺の土地を開発した訳です。ここから少し離れていますけど、魔動鉄道と道路を整備してあるので、人や物の流れは問題ないと思います。」


「なるほど」


「あと、集合住宅に住んでいる人たちの中には自分の家を持ちたいと思っている者も出始めています。なので分譲住宅地と農地をセットした開発プランを立ててみました。いかがでしょう?」


そう言ってエリーはドワコに開発プランの書かれた絵を見せた。

その絵は年齢相応の絵で、いつもの仕事ができる少女とは違うギャップについつい笑みが出てしまった。


「ドワコさん笑ったでしょ。どうせ絵は上手くないですよーだ。」


ふくれっ面になったエリーを見て可愛く思えたドワコだった。

絵のクオリティーはアレだったが伝えたい事はわかった。


「なるほどね。それじゃ分譲住宅地の開発と農地の確保・・・あと付帯して小規模な商業施設を作れば大丈夫そうだね。」


ドワコはそれを元に図面を引き直し、エリーに渡した。


「それじゃこれをデマリーゼに持って行って」


「はい」


エリーが図面を持って執務室を退出した。

そして入れ替わりでサンドラが執務室に入って来た。


「失礼します」


「どうしたの?」


ドワコが聞き返す。


「新しい部隊創設についての報告に来ました」


「はい、続けて。」


「ミダイヤ帝国からの難民たちの中で兵士として志願した者が集まり新しい部隊が創設されました。えっと・・・ご主人様はどこまで話を聞いておられますか?」


「実は初めて知った」


「えっ?」


サンドラは目が点になって固まっていた。


「ただいま戻りました」


そこへエリーが戻って来た。


「エリー、ミダイア帝国からの難民で組織された部隊の話知ってる?」


「あっ、すみません。報告を忘れていました。」


ドワコはエリーの表情を見て意図的にやったなと思った。


「実はですね・・・人口が増えたのでそれなりに警備や治安維持に人が必要になったので、手っ取り早く集められるところから人員を確保しました。それで、そのまとめ役をサンドラさんにお願いした訳です。」


(実はこの部隊は表向きはそうなっているが、エリーが極秘に別の任務をさせるために作った部隊だった。それがわかるのはもう少し先の話になる。)


「それでその規模は?」


ドワコがサンドラに聞いた。


「およそ200人集まりました」


「え?」


ドワコが人数を聞いて驚いた。それもそのはず、ドワコ領の現在の兵数は200人もいない。それを超える数を確保していると言う事になる。


「それをサンドラ1人では大変じゃない?」


「大丈夫ですよ。ご主人様。志願した者の中には軍幹部だった者も含まれています。運営についてはその人たちに任せますので。」


サンドラが答えた。


「わかった。それじゃ訓練の日程とかはサンドラに一任するから優秀な兵士に育ててね。」


「かしこまりました」


そう言ってサンドラは執務室を退室した。

そして昼食を取った後、ドワコとエリーは護衛隊の基地へ向かった。


現在、護衛隊の基地の片隅では、試作船の改修作業と新造船の造船作業が並行して行われている。

試作船は長期間の航海で不具合が出た場所の改修と投石機の撤去、それに代わり2連装の主砲を2基の取り付け、側面に機銃を複数装備させた。そして新造船は全通甲板になっていて、魔動飛行機や魔動戦闘爆撃機の離着艦が可能となっている。甲板の下には格納庫と防御用の機銃が装備されている。全長は試作船と同じ150mくらいである。


「形になって来たね」


ドワコが新造されている船を見上げ言った。


「頑張って作ってるよ」


建造を担当しているドワミが言った。


「それにしても船から航空機の離発着を出来るようにするってすごい考えだよね。これだと基地ごと移動しているのと変わらないし。」


「どこかに侵攻するとかではなくて、単に作ってみたかっただけなんだけどね。」


ドワコがドワミに言った。


「でも、これが必要になるんですよね・・・。」


ドワコ達に聞こえない小さな声でエリーが言った。

そして建造風景を視察した後、ドワコとエリーは執務室に戻った。



「そう言えば、西隣と北隣の諸国連合の国なんですけど・・・。こちらの領地から国境までの道路整備は既に終わっていますが、諸国連合側の道路整備も完了しました。ただ、道を拡幅して整備しただけなので馬車の通行は可能になりましたが、ブリオリ側とは違い時間はかかってしまうようです。」


ドワコは西側と北側の国境までは道路整備を行ったが、重要性が低いため、領地の資材やお金を使ってまで相手国側を整備しようとは思っていなかった。とりあえず通れるようになれば良いと考えていた。


「これで物流がある程度活性化しそうだね」


「そうですね」


工場で多種多様なものを大量生産し、それをブリオリ国の商人を経由して輸出して、莫大なお金がドワコ領に入ってきている。財政状況は極めて健全だ。金額的にはマルティ王国の国家予算を遥かに超える金額になっている。ドワコはその潤沢なお金を惜しみもせず、領民に社会福祉の名目で還元していった。






そしてその日の夜、ひそかに会合が行われた。

会場である神殿の多目的室には、


エリーを筆頭に、

衣料品店を経営しているシア、

エルフの自称奴隷メルディス、

奴隷商人から買ったが実はお姫様のサンドラ、

ドワーフの親方、

魔動機関係担当のドワミ、

ドワコの執事セバスチャン、

ドワコのメイドであるジェーンとジェシー、

そしてこの神殿の責任者であるシスター・メロディ、

そのシスター見習いのアオリア、アカネッタ、キイベルタ、

領主補佐であるドリルヘアのデマリーゼ、

第1護衛隊隊長のカレン、

第2護衛隊隊長のベラ、

第3護衛隊隊長のケイト、

第4護衛隊隊長のカーレッタ、

国境砦の総責任者のライモンドの19人が集まっている。ここにいる半分以上はドワコ領の幹部だ。


「忙しい所集まってもらってすみません。今日は大事な話がありまして・・・」


とエリーが話し出した。


「実はですね・・・もうすぐドワコさんの誕生日が来るんですよ。それに合わせて盛大にお祭りをやっちゃおうと言う提案なんですけど。」


ドワコの誕生日は定かでなないのだが、エリーはドワコと初めて会った日がドワコが誕生した日だと認識している。間もなくその日から数えて1年になる。


「それは面白そうですわ」


真っ先にデマリーゼが賛成した。続いて皆も賛成し、反対者は出なかった。


「反対者はいないようなので話を勧めますね。場所は一番広くて整地されている場所・・・護衛隊の基地で行おうと思います。もちろんお祭りなので領民の方々にも沢山参加してもらって、みんなでドワコさんの誕生日をお祝いしちゃいましょう。」


「それでですね・・・ドワコさんが領地にいると計画が進められませんので、少しの間アリーナ村の温泉施設に行ってもらう事にします。私は準備があるので抜けることが出来ませんので、どなたか同行をお願いします。そうですね・・・枠は3人かな。希望者手を上げて。多ければくじ引きね。」


3人では収まらない人数が手を上げてしまい、結局くじ引きになってしまった。

そして決まったのが、サンドラ、ジェシー、アオリアだった。

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