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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
王子様とドワーフ娘
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98.(困話)エリーの観察日記

ブリオリのドワコ領が管理している港へ到着すると救助した人たちを降ろした。


そして、第1護衛隊が用意した魔動車に分乗させ、第3護衛隊に引き継ぎをしてドワコ領を経由し、王子の使用人はマルティ城へ、船乗り達はマルティ王国を経由して自分達の国に戻ってもらった。


ここで第4護衛隊はドワコ領に戻ってもらい、新兵器の習熟などを含めた通常の任務を行う。交代として第1護衛隊が船に乗り込んだ。


「それでは、第4護衛隊に変わり第1護衛隊が任務を引き継ぎました。」


エリーに向かって第1護衛隊の隊長であるカレンが報告した。


「ご苦労様。それでは準備が出来次第出発します。」


「了解」


準備が終わり試作船は港を出港した。


「それでは今回の任務を説明しますね」


担当する護衛隊が変わったのでエリーは今回の作戦内容を説明する。


「今回の任務は難民船の捜索になります。地図に×印がある所が今日の捜索場所になります。」


第4護衛隊の時と同じような反応があり、現場に向かう事にした。


「ドワコ領の護衛隊と言うのはどうしてどの隊も女性の方が隊長をしているのですか?」


ブリオリ国の所属であるセシリアが前から気になっていたようで、エリーに聞いてきた。


「えっとですね。マルティ王国では軍を率いるのは、貴族またはそれに類する立場の者と決まっているんですよ。それで元々はドワコ領になる前は、比較的安全な辺境の砦で色々な理由で追いやられた貴族の娘が放り込まれる場所だったんですよ。その後、ドワコ領になった時も入れ替わりが無かったために、他に貴族階級の者がいなくて、そのまま慣例に従って貴族階級だった彼女たちが部隊を率いる形になったんですよ。普段砦には居ませんけど、男性の隊長も1人いますよ。」


「そうだったんですか。隊長の方は皆、優秀なので軍からの叩き上げの方かと思っていました。」


「実戦経験を積めば成長しますからね」


エリーの説明を聞いて、セシリアは納得したようだ。

船は指定した海域に到着し、すぐに難民船を発見した。そして兵士が難民を説得し、試作船に収容した。


「それではこの印をつけた地点を経由してブリオリに戻ります」


エリーが皆にそう指示を出した。

そして船はエリーが指示した海域に到着した。


「さてさて・・・どうなってるかなぁ」


エリーは艦橋に置いてあった双眼鏡を持ち遠くの方を眺めた。


「いたいた・・・」


エリーの行動を見ていたメルディスとカレンが予備の双眼鏡を取り出しエリーが見ている方角を見た。


「あっご主人様」


メルディスが声を上げた。カレンも見つけたようだ。


「えっと・・・一緒にいるのは王子様ですよね?無人島にいるようですけど助けなくていいんですか?」


カレンがエリーに聞いた。


「大丈夫ですよ。食料も十分ありますし、今は2人の時間を過ごしてもらわないといけませんので・・・。」


エリーが答えた。

3人は双眼鏡を覗きながらドワコと王子の動向を見守った。

船はドワコ達からは肉眼で確認できない位の距離に停泊させているので気づかれることは無い。じっくりと観察したのちにブリオリを目指して航行を始めた。



それから数日、同じような行動を続け、難民船の捜索をした後でドワコのいる無人島に寄り観察を続けた。

2週間がたち、第1護衛隊から第2護衛隊に任務を引き継ぎ、同じように難民船の捜索、ドワコの観察を行った。


「ちょっと2人の距離近くないですか?」


双眼鏡を覗きながらちょっと怒り気味のメルディスが言った。


「王子様、ドワコ様の背中に手を回そうとして何度も手を引っ込めてますね。」


ちょっと笑い気味に第2護衛隊の隊長ベラが言った。



そしてさらに2週間経過し、第2護衛隊から第3護衛隊に任務を引き継いだ。


「なんか2人とも裸で海に入って遊んでますね」


ケイトが見たままを言った。そうすると気になるのか兵士たちが予備の双眼鏡を順番に回しながらその様子を見た。


「本当に裸ですね。・・・王子ちょっと邪魔・・・大事な所が見えない」


「ちょおま、ドワコ様をそんな目で見るんじゃない」


「そう言わずお前も見てみろ」


ドワコを観察していた兵士が別の兵士に双眼鏡を渡した。


「うわぁ。大股開いて大事な所が丸見えですよ。」


興奮した様子で兵士が言った。ドワコの裸を十分堪能した兵士は次の兵士へ双眼鏡を渡した。


「裸の王子しか見えないんですけど・・・」


ドワコはコンテナハウスに入ってしまったようだ。


「今日は良いもの見られたね・・・それじゃブリオリに戻りますよぉ」


エリーの号令で戻る事になった。見ることが出来なかった兵士は残念そうにしていた。


「うちの隊の者が節操無くてごめんなさい・・・」


ケイトがエリーに謝った。



そしてさらに2週間が経過し、第3護衛隊から第4護衛隊に任務を引き継いだ。


「それじゃ私はこれで戻りますね」


「ありがとう。とても助かりました。見習いシスターにもよろしく伝えておいてね。」


メロディが一足先にドワコ領へ戻る事になった。長期間不在だったために治療が必要な人が増えてしまい、神殿にいる見習いたちがデマリーゼに泣き付いて来たようだ。


そして入れ替わりでドワミが来た。


「エリー来たよー」


「いらっしゃい。それじゃよろしくね。」


今回ドワミを呼んだのは長期航行による船のダメージ調査と点検のためだ。後半の任務が終わるまで同行する予定になっている。


「それでは私はこれで戻りますね。城の方には問題なしと伝えておきます。」


本来なら最後まで乗船するべき監視役のセシリアだが、休み無しで任務に当たっていたため、平時は休みの日数が決まっているらしく、必ず休まないといけないらしい。その関係で船を降りる事になった。交代の適任者が居なかったために航海スケジュールの提出のみで、今回は特例的に監視役無しで出港が認められた。


そして準備が終わり船が出港した。


「今回の任務ですが、難民船の収容は完了しています。なのでドワコさんの観察が主な任務になります。」


「「「えー?」」」


突然、緩い内容の任務を言われ艦橋にいる者は拍子抜けをした。

現場に到着し、皆は観察を始めた。


「ドワコ、王子と一緒にお風呂入ってる。」


ドワミが双眼鏡を見ながら言った。慌てて双眼鏡を持っている兵士たちは覗き込んだ。


「湯船が邪魔で・・・この湯気も邪魔だなぁ」


「おっ、チラッと見えたぞ。」


次の日も、そのまた次の日も観察を続けた。

そして半月ほど経過した。


「なんかご主人様の顔色良くないですね」


双眼鏡を覗いているメルディスが言った。


「さすがですね。良くわかりましたね。」


エリーがメルディスを褒めた。


「実はドワコさんの持っていた食料が残り僅かになっているんです。おそらくあと1回分・・・かな。」


エリーが言った。


「それではそろそろ救助を?」


カーレッタがエリーに聞いた。


「そうですね。作戦実行は明日ですね。と言っても島に上陸して救助するだけなので難易度は高くありません。それまではいつも通りに過ごしていただいて構いません。」


エリーがカーレッタに伝えた。

そしてエリーは双眼鏡でドワコの様子を観察続けた。


「あのヘタレ王子・・・もう残り時間僅かですよぉ」


エリーは以前、融通をきかせてもらったお礼にと思い、王子にドワコをモノにできるチャンスを与えた。その為にあえて救助せずに見守る事を選んだ。だが、エリーの配慮も王子には届かなかったようで、不発に終わったようだ。



翌日、エリーはワイバーンに乗りドワコと王子のいる島に向かった。

そして気がつかれないように近づき中の様子を伺った。


「ドワコ・・・この際だから伝えておきたい」


「なに?」


「今日まで色々とありがとうな。ドワコがいなかったらすでにこの世からいなくなっていたと思う。そして、この島に来てから2カ月。ドワコと生活をして色々なことが分かった。もしこのまま無事に戻れたら・・・。」


中から王子とドワコの声が聞こえた。すでにエリーの設定した時間を過ぎているので、エリーは遠慮なくコンテナハウスのドアを勢い良く開け放って言った。


「時間切れですよぉドワコさん」

次回からは本編に戻ります。

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