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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
王子様とドワーフ娘
87/128

87.公務

翌日、ドワコは同行しているメイドよりサンドラが宿を引き払い、いなくなった事を告げられた。


「それで宿は既に引きはらってあると?」


「はい。宿の主人に聞く所によると、同じくらいの年齢の少女が宿に来て少ししてから一緒に出ていったそうです。」


「そうですか。報告ありがとうございます。」


「はっ」


そう言ってメイドは部屋から退室した。


「なんか裏切られたって気分だな」


リオベルクが不快感を表した。


「仲間がいたのかも知れませんね。どこへ向かったかはわかりませんけど、元気に暮らしてくれると良いですね。」


「相変わらず優しいな」


「一応聖女様ですからっ」


そして2人は城へ行く準備をして宿から出た。

馬車に揺られながらドワコは考えていた。


(昨日のパーティーでイザベルが実力行使に出て来たけど報告しておいた方が良いのかな?)


どうしようか結論が出ないうちに城に着いてしまった。

今日はイザベルは出迎えに来ていないようだ。出迎えに来た兵士に案内され2人は謁見の間に入った。


「昨日は楽しんでもらえたかな?」


公王の問いにリオベルクは答える。


「私のために盛大なパーティーを開いてもらいありがとうございます。おかげで大変楽しめました。」


「そう言ってもらえると、こちらも嬉しく思う。」


「ドワコ殿はどうだったかな?」


「はい。楽しませてもらいました」


「そうかそうか」


公王は満足そうに言った。


「それでは我々は両国間の話し合いを行うので、ドワコ殿は他に部屋を用意してあるので、そちらの方でお待ちいただきたい。」


リオベルクが肯定の意味を込めて頷く。


「わかりました。それでは失礼します。」


城のメイドに案内されドワコは用意された部屋に向かう。

向かう途中、城の中庭で剣の練習をしている女性を見かけた。


「あの方は?」


気になったのでドワコはメイドに聞いた。


「第1王女のイザベラ様です」


(第2王女とは体格が全く異なりスラリとした体形で、長髪の美人だ)


「どうして剣の稽古を?」


「王様に内緒で冒険者をやっているんですよ。使用人の間では知られていますが、こっそりと抜け出して、街で知り合ったパーティ仲間と、どこか出かけているようですよ。」


「そうなんですか」


興味深そうに見ていると、視線に気がついたのか剣の稽古を中断してドワコの方へやって来た。


「初めまして。わたくしマルティ王国からの使者でやってまいりましたドワコと申します。以後お見知りおきを。」


相手が格上なのでドワコの方が先に挨拶をする。昨日のパーティーでは見かけなかった気がする。


「こんな格好で失礼するよ。私はこの国の第1王女のイザベラだ。確か武器屋で会った事があるな。」


会ったことがあると言われてドワコは考えた。会ったのはこの国に来てからだろう。そうなると一昨日の街をブラブラした時に立ち寄った武器屋だろう・・・あっ。


ドワコは中古品を扱っている武器屋に行った時の事を思い出した。女性4人のパーティーに武器を選んでいる時にもう1組いたパーティーだ。男3人に女1人の・・・。


「思い出しました。中古品を扱っている武器屋ですね。どうして第1王女とあろう御方があのようなお店に?」


王女なら中古の武器ではなく、新品の良い武器が用意できるのではないかとドワコは考えた。


「一応街では駆け出しの冒険者と言う事になっているからな。あっ私が冒険者をしている事は皆に内緒な。」


「はぁ・・・」


「そう言えば武器に興味があるようだな。少し様子を見ていたが、あの鑑定能力は正直感心したぞ。」


「一時期それで食べていた時期がありましたから、その時に詳しくなりました」


「貴族でも苦しい生活をしている者もいるからな・・・その時の経験が生かされているんだな」


「そんな感じです」


「少し話がしたくなったな。すまんがお茶の用意をしてくれないか?」


ドワコに付き添っているメイドに対しイザベラは言った。


「かしこまりました」


メイドは急いで他のメイドに声をかけながらお茶の用意を始めた。


「今日は父とそちらの国の王子との話し合いで当分することがないだろう?親交を深める時事で付き合ってくれないか?」


「はい」


メイドたちが庭にイスとテーブルを並べお茶の用意を整えていく。


「お待たせしました。どうぞ。」


ドワコ用には少し高めの椅子が用意してあった。ここまで配慮が出来るメイドは優秀だ。

ドワコとイザベラは椅子に座り、メイドに用意してもらったお茶を飲んだ。


「イザベラ様は冒険者をやっておられると聞きましたけど、冒険者ギルドのカードをお持ちですか?」


「ああ。持っているぞ。これが私のギルドカードだ。」


そう言ってドワコにギルドカードを見せた。銅ランクだった。


「銅ですね・・・。」


「これを見てランクがわかるのか?もしかしてドワコもギルドカードを持っているのか?」


「最近は使ってませんが一応持ってます」


そう言ってドワコのギルドカードを見せた。ギルドカードは世界中で共通の物が使われているので、知っている者が見れば情報がすぐにわかる。


「すごいな。銀ランクではないか。」


「一時期、毎日のように魔物を狩っていた時期がありましたので、その時にランクが上がりました。」


「良かったら少し頼まれごとをしてくれないか?」


「やれる範囲でしたらお受けできますけど」


「そうか。それでは明日もこのように長く話し合いが行われると思う。その間で良いのだがギルドの依頼を手伝ってくれないか?」


「今日みたいに時間があるなら構いませんけど?」


「そうか。それでは明日もここに来てくれ。」


「はい。一応確認してからになりますけど、承知しました。」


明日一緒にギルドの依頼を手伝う事を約束した。


「イザベラ様はどうして冒険者をやろうと思ったのですか?」


ドワコが聞いた。


「そうだな。それなりの鍛錬も積んでいるので剣の腕には自信がある。身分は関係なしにどこまでやれるかを試してみたかったと言うのが理由だな。ドワコはどうして冒険者になったのだ?」


「私の場合は生活の為・・・でしょうか。倒した魔物から出てくる魔石を売って生活の足しにしていた時期もありました。」


「なるほど、魔石か。実はその魔石は我が国が冒険者ギルドに頼んで集めてもらっている物だ。・・・と言っても他の国も同様の事をやっているので全部が我が国に来るわけではないがな。」


「私から見ればただの石に見えるのですが、魔石はどのようなことに使われるのでしょう?」


ドワコ領でも魔石は重要な資源だ。魔石燃料の製作や魔動機の製作に必要となる。果たしてこの国ではどのように使われているのか非常に興味がわいた。


「主に照明として使われる。魔石はこの城にも沢山設置してあるが、魔導灯と言う物を光らせるためのエネルギーとなる。」


「あーこれ電気ではなく魔石で点灯していたんですね」


ドワコが電灯だと思っていた物は魔導灯と言う物らしい。光り方は白熱電球によく似た光り方をする。宿にもあったので昨晩も観察していた。


「電気とは?」


「簡単に言えば雷を小さくして使いやすくしたエネルギーでしょうか」


「聞いただけでは実感がわかないな。」


「あと、他の国でも魔石を集めていると仰っていましたが、他の国も同じように照明用に使っているのでしょうか?」


「基本的にウチみたいな民間用の利用なら隠す必要も無いが、軍事用に使用している国などは何に使っているかわからないな。」


イザベラの話を聞く限りでは、どうやら魔石を軍事用に使っている国もあるらしい。

それからドワコとイザベラは色々と話をした。


「ドワコ様。そろそろお時間です。」


メイドからそっと耳打ちされた。公王とリオベルクとの話し合いが終わったようだ。


「長々と付き合わせて悪かったな。それでは明日はよろしく頼むぞ。」


「はい。それではまた明日。」


そう言ってドワコはイザベラと別れリオベルクの元へと向かった。

帰りの馬車でドワコはイザベラと会った事を話した。


「そうなのか?私はまだ第1王女には会ったことがないのだ。滅多に公の場では姿を見せないらしいからな。」


「なかなか話しやすい人でしたよ?明日一緒にお出かけをする約束をしちゃいました。」


「明日も同じように話し合いを行うから、終わるまでには戻って来るんだぞ。」


「はーい」


ドワコとリオベルクは宿に戻り夕食、入浴を済ませ明日に備え休むことにした。


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