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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
王子様とドワーフ娘
86/128

86.オサーン城

「治していただいてありがとうございます。私はサンドラと言います。」


「一応自己紹介はしたと思うけど、私はドワコ。そしてこっちがリオベルク。」


「こっちって酷い扱いだな。リオベルクだ。よろしく。とりあえずメイドを呼んで服を着せよう。目のやり場に困る。」


「私の時とは扱いが違うね」


ちょっとドワコは拗ねてみせた。

リオベルクは呼び出し用のベルを鳴らした。すると、控えていたメイドが部屋に入って来た。


「御用でしょうか?」


「うむ。この子の着替えをよろしく頼む。服はドワコのを使ってくれ。」


「かしこまりました」


メイドはサンドラを連れて隣の部屋に行った。


「リオベルクは銃と言う武器は知らないと言う事だよね?」


ドワコは先ほど摘出した弾を見ながら言った。


「そうだな。初めて聞いたな。どのような物か詳しく聞かせてくれないか?」


「少し説明したけど、鉄製の筒の中に弾と火薬を入れて、火薬に火をつけると爆発してその勢いで弾が射出されて相手を攻撃すると言う武器かな。射程は・・・。」


簡単な概要説明をした。


「遠距離攻撃では弓よりも強く、魔導士の魔法にも匹敵する威力がある物もあると・・・。この国にはそのような武器があるのか?だが、これは隣国のミダイヤ帝国などが持っていたら脅威だな。」


「港に入る前に、この国の軍艦を見た感じではそのような装備は無いように見えました。他の部隊が持っているかもしれませんけど・・・。」


「あの・・・私、そのミダイヤ帝国から来たんですけど・・・。」


戻って来たザンドラが申し訳なさそうに言った。ドワコの予備の服を着せられ緑色の髪も整えられて見た目は貴族様だ。


「見違えるようにきれいになったね。服は私の予備だけどきつい所とか無い?」


「胸が少しきついですけど大丈夫です」


「はははっ」


リオベルクが笑った。


「どうせ私はペッタンコですよーだ。気にしてないし。」


ドワコは少し拗ねている。他の女の子の胸には興味があるが、自分の胸には関心がない・・・はずだった。自分の心境の変化に戸惑いを感じたが、ドワコは気持ちを落ち着かせた。


「えっと、ミダイヤ帝国から来たと言ったな。その銃創と言う傷はどこで付けられた物だ?」


真面目な顔になったリオベルクがサンドラに聞いた。


「ミダイヤ帝国にいた時にです」


「内戦で使われていたと?」


「はい。少し前までは王位継承権を持った3つの派閥があり内戦をしていましたが、その内の1つの派閥が銃と言う武器を使い始めてから力関係が変わり、そのうちの一つは滅ぼされ、残りの一つも壊滅寸前・・・までは私は知っているのですが、その先どうなったかはわかりません。私は壊滅寸前になった派閥に属していました。敵の襲撃に合い深手を負った状態で捕らえられ、船でどこかに連れていかれる途中、海賊の襲撃に合い、捕まり奴隷商人に売られました。」


「苦労したんだね・・・」


ドワコは今までの経緯を聞いて同情した。


「とりあえず内戦の事は置いておこう。そんなに銃と言うのは凄いのか?」


「はい。騎士の鎧もそのまま貫通しますし、銃を装備している部隊は近づくことも出来ませんでした。」


「なるほど・・・」


リオベルクはそれを聞き考え込んだ。


「なあドワコ。その銃と言う物の対抗手段と言うものはないのか?」


「ありますけど・・・とりあえずどのようなタイプの物が使われているか、わからない事には対策のしようがありませんね。」


「なんと。今すぐにでも戻って対策をしたい気分なのだが、公務の途中でどうする事もできんのが辛いな。」


「失礼ですけど、お二人ともとても身分の高い方に見えますが・・・。」


「えっと、リオベルクはマルティ王国の王子で、私はその付き添い。」


「リオベルク様は王子様なのですね。ドワコ様は付き添いには見えませんけど・・・今までの事を見る限りでは、かなり高位の魔導士様とお見受けしましたが。」


「うぅ・・・立場的には領主なんだけどね」


「領主様ですか。そうすると私はその領地で奴隷として働かせていただけるんですね。」


「それは無い」


ドワコがはっきりと言う。


「え?」


「私は治療したら開放するつもりだったから、この街に残るのも良いし、私の領地に来るのも良いし自分で決めていいよ。あとマルティ王国は奴隷制度と言う物は無いから奴隷と言う物は無いよ・・・まあ自称の人はうちに1人いるけど。」


「相変わらずドワコは優しいな」


リオベルクに頭を撫でられた。あまりうれしい気分ではない。


「それでは、私を雇ってくださいドワコ様。」


「うちは人手不足で困っているから、働いてくれるなら大歓迎だよ。ただね。今は公務でこの地に来ているから終わってから一緒に向かう事になるよ。それまでは衣食住は用意するから、しばらくは自由にしていいよ。」


「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。ご主人様。」



翌日、朝食を終えてから、サンドラに支度金を渡しドワコが用意した宿に移ってもらった。結構な金額を渡したので、それを自由に使って良いと伝えた。もちろんそのまま他の街や国へ行ってしまうのも構わないとドワコは思っていた。


「さて、今日は城に行く日だ。先方にドワコは婚約者と言う事で同行していると伝えてある。」


「エー」


「そんなに嫌そうな顔をするなよな。凹むぞ。」


「あくまでも建前上で本来の任務は護衛だ。そこを間違えないように頼むぞ。」


「はーい」


護衛の兵士が守る馬車に乗り込み城へと進んでいった。

道中ドワコはリオベルクに尋ねた。


「この国って奴隷制度があるよね?ひょっとして人間以外って扱いが悪いとかある?」


奴隷市場を見て来たドワコは人間よりも獣人などの亜人が多い事が気になっていた。


「そうだな。人間の場合、犯罪を犯したり、親が家族を養うために売ってしまうとか、あとは非合法に連れてこられた。が理由になるが、人間以外の人種ではそれなりの立場がある者以外は動物と同様な扱いを受けているようだな。ドワーフなど特殊技能がある種族は特に高く取引されているそうだ。」


「ひっ」


わかっていてここに連れてくるリオベルクを少し恨んだ。


「そんな顔をするなよ。その為にかつらを渡してあるじゃないか。ドワコは他のドワーフ達と違って耳だけ隠せれば誤魔化せるからな。それに我が国の聖女で領主だ。身分も保証されている。大丈夫だ安心しろ。」


「でもエルフは匂いでドワーフだってわかるって言ってたよ?」


「そう言えばドワコの使用人にエルフがいたな。すごくスタイルが良い美人だと城の者が噂してたな。エルフは基本的に誰かの配下になる事は無いと聞いたことがあるが、良く加えられたな。」


「まあ色々ありまして・・・」


ドワコは後頭部をポリポリかいた。

そして馬車は城に到着した。


「お待ちしておりましたわぁ。リオベルク様ぁ。」


「ゲッ」


城へ着くなり出迎えられた女性にリオベルクは一気に引いた。


「どうぞお手を取ってくださいまし」


その女性に手を添えられてリオベルクは馬車から降りた。

おそらくリオベルクと同じくらいの年齢だろうと思うが、かなり太めの体格でおそらく体重は3桁ありそうだ。


「あらぁ。ずいぶん小さなお子様が乗っていらっしゃいますこと。気がつきませんでしたわ。」


ドワコの方を見てすごく嫌そうな顔をして言った。


(なんか敵意むき出しな感じがしますけど・・・)


彼女に手を引かれ連れていかれるリオベルク。そしてその後を追いかけるドワコ。そのまま謁見の間まで来てしまった。


「ようこそ遠い所から来てくださった。・・・・娘が迷惑をかけているようだな。すまんな。」


おそらく公王だと思われる人物がリオベルクに話しかけた。


「公王様もお元気そうで何よりです」


リオベルク右腕には娘と呼ばれた女性が絡みついている。


「そして王子の婚約者のドワコ殿も良くおいでなさった」


「おはつに・・・」


「あーあー聞こえない聞こえない」


急に王女?様が大きな声を出してドワコの話を中断させた。


「こら、やめなさい。今は公務中です。」


「は~い」


王女?様は渋々後ろに下がった。


「大変失礼した。今日は顔合わせと言う事でパーティーの席を設けた。参加してくれるか?」


「はい喜んで」


公王にリオベルクは答えた。事前に話が来ていたのだろう。特に驚く表情を見せずに淡々と受け答えをしている。


「それでは、正式な話し合いは明日からと言う事で、今日は楽しんでくれたまえ。」


「ははっ」


ドワコもリオベルクにならって跪いた。

そして控室に案内された。


「まさか初っ端で来るとは思わなかった」


ゲッソリした様子のリオベルク。


「彼女苦手なの?」


ドワコが聞いた。


「なんか好かれているみたいでね。私はその気はないと何度も言っているのに聞いてもらえなくて。えっとこの国の第2王女で名前はイザベルだな。」


「自分の国より国力がある所から言われるときついよね・・・まあ頑張って。」


他人事のように言うドワコ。


「今回はドワコも関係あるぞ。婚約者と言う事になっているから、この後で何かしらあると思う。ドワコなら大丈夫だ頑張ってくれ。」


「エー」


ドワコは嫌そうな顔をした。


「それではドワコ様。お召し替えをしますのでどうぞこちらへ。」


お城のメイドに案内されてドワコは別室へ行った。

ドワコはその部屋でパーティー用のドレスを着せられた。髪も触ろうとしたが色々と不都合が生じるといけないので丁重にお断りをした。


そして会場に入った。すでにたくさんの人が集まり歓談をしている。


「お初にお目にかかります。ドワコ様。わたくし・・・」


色々な人に声をかけられ中々リオベルクの元に辿り着けない。一応護衛なので近くにいないとまずいのだけど・・・。ドワコは少し焦り気味になっている。


「あなた、まだいらっしゃったの?」


そう言ってきた声の主を見ると第2王女のイザベルだった。


「ちょっとよろしいかしら?」


そう言って会場外に連れ出され、人気のいない所まで連れていかれた。


「貴方さえいなければ、私とリオベルク様は結ばれたのに・・・許せませんわ。」


(いやいや・・・本人嫌がってますから)


ドワコの心の叫びが届くわけもなく多数の兵士に取り囲まれた。


「少し痛い目を見てリオベルク様の事は諦めてもらいますわ」


「一応聞きますけど、ここで私に手を出すと国際問題になりますよ?」


「そんな事知った事ではありませんわ」


「あーそうですか。一応警告はしたからね。」


今ドワコは10人くらいの兵士に取り囲まれている。さすがに相手は少女1人なので兵士は武器を持っていない。


少しドワコはイラっと来ている。初めに襲い掛かって来た兵士に対し、手加減無しのグーパンチをお見舞いした。兵士は吹っ飛ばされ壁に当たり原型を問留めない状態でぐちゃぐちゃになった。おそらく即死だろう。ぐちゃぐちゃになった兵士を見て残りの者は「ひっ」と顔が青ざめた。


「次はだれが来る?」


ドワコが挑発する。


「どうしたの?お行きなさい。」


イザベルが兵士たちを行かせようとするが、相手にしてはいけない者に手を出したと悟った兵士たちは動けないようだ。


「行かないなら私から行くよ?」


ドワコが1歩1歩近づいていく。兵士はそのプレッシャーに耐えることが出来ず皆逃げ出した。


「さあ、どうするの王女様?」


「覚えていなさい。この借りはきっと返すから。」


そう言ってイザベラは走り去っていった。


「やれやれ・・・」


ドワコはぐちゃぐちゃになった兵士の亡骸の前に行った。


「命令されたとはいえ可哀想な事をしちゃったね」


そう言って「リザレクション」を唱え兵士を生き返られた。

生き返った兵士はドワコの顔を見るなり「ひっ」と言って逃げ出した。


そして会場に戻りリオベルクの元に辿り着き護衛任務を始めた。


「先ほど少し騒がしかったが何かあったのか?」


「ん?1人殺してきたけど?」


「へ?」


正直に答えたドワコにリオベルクは答えに困った。

そしてパーティーも無事に?終わり2人は宿に戻る事になった。

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