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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの領主様
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79.神殿の視察

あれから数日が過ぎて、城下町の神殿より神殿長が視察に来る日がやって来た。


神殿の事なので、領主であるドワコが出る必要は無いのだが、気になったので同席する事にした。


エリーはまだ里帰り中であれから一度も戻ってきていない。ドワコ1人で行く予定だったが、どうしても行きたいと言ったメルディスが付いてきている。


「ドワコ様、ご心配をお掛けしたようで申し訳ありません。」


ドワコが心配して神殿に来たことに対して、神殿を任されているシスター・メロディが言った。


「えっと、一緒におられる方は?」


ドワコが従者を連れている事に気が付きメロディはドワコに尋ねた。


「私は、ご主人様の肉奴隷のメルディスですわ。よろしくねシスターさん。」


「ドワコ様・・・肉奴隷って・・・不潔です」


メルディスが言った事を真に受けたメロディはジト目でドワコを見た。


「違いますよ。自称奴隷ですから。立場的には私の従者です。」


あわててドワコは否定した。


「そうでしたか。それは失礼しました。でもエルフさんなんですね。砦て少し拝見した気もしますけど、改めてみると空想世界って言う感じですね。」


「空想世界って何でしょう?」


初めて聞く言葉にメルディスが聞き返した。


「私もドワーフと言う事になってますから・・・。まあその話は置いておきましょう。」


ドワコは話を打ち切った。それを察したメロディは話題を変えた。


「エルフと言えば昔見たアニメで見た何とか戦記で登場したディート・・・何でしたっけ思い出せないですけど雰囲気が似てますね」


メロディが言った事をドワコは理解した。今は紺色のメイド服を着ているが、緑色のそれっぽい服を着せたら髪の色は違うがそう見えなくはないかも。今度暇があったら作ってみようかな。とドワコは思った。


「なんか私の知らない所で会話が進んでます」


会話に入っていけないメルディスがシュンとしている。


「すまんかったね。よしよし。」


ドワコはメルディスの頭を撫でようとしたが手が届かなかった。空を手のひらがさまよった。


「しまった。せっかくのチャンスだったのに気が付くのが遅れました。」


メルディスが残念そうにしている。


「それで今日は神殿長の他にどなたが来るのでしょう?」


「わかりませんね。神殿長が視察に来るとしか聞いていませんので・・・。」


ドワコの問いにメロディが答える。


「あと、シスター服の方が良かったような気がしますけど?あくまでも巫女服は私の希望だっただけなので視察で何か言われるかもしれませんよ?」


メロディは神殿のシスターが着る服を着ていない。ドワコお手製の巫女服を着ている。普段ならそれでいいと思っていたが、城下町から神殿長が来るのでこの日くらいは所定のシスター服の方が良かったのではないかとドワコは思った。


「女神様からのお告げですので神殿の規則なんて二の次ですよ」


それについては譲らないらしい。まあ何か言われたらフォローしなきゃいけないとドワコは思った。


「私はこの国の宗教について良くわからないのですけど、どのような物なのでしょうか?」


メルディスが祭壇を見ながら言った。


「そうですね。簡単に言えば、昔、色々な人を癒して国を救った英雄を神として崇める事でしょうか。その神の使いとされる立場の方が聖女様と言う事になります。」


「本当に簡単な説明ですね。でもよくわかりました。ご主人様は神の使いと言う訳ですね。」


メロディの回答にメルディスは納得したようだ。


「まあ正確に言えば少し違うんですけどね」


おそらくメルディスが本当の事を知ったら即入信しそうな気がする。とドワコが思った。



すこししてから城下町の神殿から使者が来て、もうすぐ到着するとの連絡が入った。


「さてどうなるかな」


不安を覚えながら神殿長の到着を待った。



外が騒がしくなった。おそらく到着したのだろう。教会の入り口までメロディが向かい、その後をドワコとメルディスが続いた。


入り口に行った所でちょうど神殿長を乗せた馬車が到着し、中から神殿長が降りて来た。


「神殿長。遠い所からようこそいらっしゃいました。」


「うむ。しかしなんだ?その服は?」


神殿長は馬車から降りて早々シスター服を着ていないメロディを見て言った。


「女神様からの要望があり、今はこの服でご奉仕させていただいております。」


「なんと、前に話は聞いていたが、本当にこの村に女神様がおられたのか。」


シスター・メロディはシスターとしての能力は及第点だが、素行は良く神殿長からもその点は評価していたようだ。嘘を言っているとは思わず言った事をそのまま信じたようだ。


「はい。何度かお会いしました。とても素晴らしい方でした。」


メロディがチラリとドワコの方を見て言った。

その視線に神殿長が気が付いた。


「これは領主様。こんなわたくしの為に出迎えまでして頂きなんと申したらよいのか・・・感謝します。」


「長旅でお疲れでしょう。どうぞ神殿の中にお入りください。」


「ありがとうございます。それではお邪魔させていただきます。」


神殿長の後に3人のシスター服を着た人が続いた。身長はドワコと同じくらいで見習いかも知れない。

そして隣には多目的に使える広いスペースがある。普段は村人の診察に使用している部屋だが、今回は仕切りを組みなおし応接用の部屋となっている。ちなみにこの神殿には診察用の部屋もあるのだが、これは聖女が使用する設備なので、シスターであるメロディは使用していない。


「装飾などはないが中々良い部屋ではないか」


神殿長が部屋を見回し言った。そしてメロディは厨房へお茶を取りに行った。それを見た神殿長に付いていたシスターの1人がメロディの後に続いた。手伝いに行ったようだ。


「どうぞお掛けください」


ドワコが着席をすすめる。テーブルを挟みソファーが向かい合わせに配置されている。ドワコの後ろにはメルディスが立ち、神殿長の後ろには見習いと思われるシスター2人が立っている。このシスターたちは従者と言う扱いなんだろうとドワコは思った。


「すごいです。なんですかこの設備は。お湯がこんなに簡単に出てくるんですか?」


厨房から驚いた声が聞こえて来た。声の主はおそらくメロディの後に付いて行ったシスターだろう。神殿にはありえない立派な設備が並ぶ厨房を見て驚いたのではないかと思う。ちなみにお湯は給湯器があるので簡単に出す事も出来るし、備え付けの電気ポットやコンロで直接沸かすと言ったように数通りの方法がある。はたしてどの方法でお湯を出したのだろう・・・。神殿長の後ろに控えている2人のシスターも気になっているようだ。


「お待たせしました。お茶をどうぞ。」


メロディがドワコと神殿長の前にお茶を置いてドワコの隣に座った。

ドワコは付き添いと言う形なので会話の方はメロディの方が行う。


「それで今日はどのような御用件でしょうか?」


「うまくシスターの仕事をやっているかを確認しに来たのと、新しく建てられた神殿がどのような物かを見るためにここまで来た。予想以上に建物が立派で驚いたよ。この規模になると一人で管理をするのは大変ではないか?」


「確かに一人で管理するのは大変ですけど、何とかやってます。この領地の方も良くしてくれますので助かっています。」


「そうかそれなら安心した。あとは仕事ぶりを見たいのだが、どれだけ成長したか後で見せてもらおう。」


「はい。わかりました。」


今回の訪問はメロディがシスターとしてうまくやっているのかと、新しい神殿を見に来たのが理由のようだ。


「それにしてもこの領地に入ってから私は驚く事ばかりでした。魔物に破壊された村をここまで良く復興させたものだと。それと馬を使わずに動く乗り物や立派な建物群。城下町とはまた違う発展を遂げているように見える。」


今度はドワコに対し神殿長は村の感想を述べた。


「ありがとうございます。ようやく復興作業も終わり、収入も安定してきました。そして今はより良い村づくりを目指している所です。」


「これも女神様のお陰と言った所かもしれませんな」


ドワコは少し驚いたが、宗教的な意味で言ったのに気が付きホッとした。


「あと先ほどから気になっていたのですが、後ろに控えている方はエルフですよね?どうしてこんな所にいるのか気になったのですが。」


神殿長は控えていたエルフのメルディスが気になったようだ。


「エルフは精霊の使いとも言われ、他の宗教では神格化されている所もあります。マルティ王国ではエルフの訪問はあっても滞在していると言うのは初めて見ました。もしかしてこの領地は他の宗教が混在している状態なのでしょうか?」


神殿長は国教以外の宗教が入っているのではないかと心配になりドワコに聞いた。


「私は詳しくわかりませんけど、元々はムリン国だったのであるのかもしれません。ただ領地内には他の宗教施設は無いはずです。」


「そうですか。それなら安心しました。」


それから神殿長とメロディは状況の確認や運営状況などの話をした。



「それではシスター・メロディの奉仕活動を見させてもらう事にする」


話を切り上げ聖堂に移動した。メロディは祭壇の前で祈りをささげている。それを神殿長は真剣に見ている。


「どうも女神像が無いと落ち着かないな」


ボソリと神殿長は口を漏らした。

そして神殿の清掃作業、書類の整理を見て回った。



「すみません。急患なんですけど良いですか?」


突然村人が神殿に入って来た。かなり急いでいるようだ。


「どうされました?」


メロディが対応をする。


「この先の建築現場で高い足場から転落して負傷した者が出まして。診察よろしいですか?」


「はい。すぐに準備しますので運んできてください。」


メロディが多目的室を整理しようと移動しかけた所でドワコが止めた。


「そんな片づけをする時間はありません。こちらの診察室を使ってください。」


ドワコがメロディに指示をする。


「はいわかりました」


メロディは即座に診察室にはいり受け入れ態勢を整えた。

本来この部屋は聖女専用なのだが、本人が使って良いと言っているので聞き返す事もせず作業に入る。


「聖女用の部屋に怪我人の為にためらいなく入って行くとは。たいしたものだ。」


少し勘違いはしているが、その様子を神殿長は見ている。同じくお供のシスターたちも見ている。

そして魔動車が勢いよく神殿に横付けされ担架にのせられた負傷者が診察室へ運び込まれた。


メロディは怪我の程度を確認した。一緒にドワコもその様子を確認した。


(この感じなら手を出さなくても大丈夫そう)


「かなりひどい怪我ですね。でも何とかなりそうです。」


そう言って何処からともなく魔法書を取り出し「ヒール」を唱えた。そして怪我人の傷が見る見るうちに回復していった。その後、メロディは怪我の具合を確認し完治したのを確認して言った。


「もう大丈夫ですよ。完全に治りました。」


「ありがとうございます。シスターが神殿にいてくれるから俺たちは安心して仕事が出来ます。それでは仕事に戻ります。」


「お大事にね」


そう言って怪我が完治した作業員は祭壇前に置かれている箱にお金を入れて作業に戻っていった。


「すばらしいです。まさかここまで成長しているとは思いませんでした。」


神殿長が嬉しそうにメロディを見ていた。


「いつの間にか回復魔法まで使えるようになっていたのには驚きましたが、シスターとしての職務は合格点です。今後とも女神様への奉仕を頑張ってください。」


「ありがとうございます」


どうやら合格点を貰えたようだ。


「ではお前たちもシスター・メロディに付いて多くの物を学びなさい」


「「「はい」」」


3人のシスター見習いは元気よく返事をした。


「えっと?この見習いの子たちは?」


「おっと。言うのを忘れていた。シスター・メロディの仕事ぶりを見て任せられると判断した時は、彼女たちをここに置こうと思って連れて来た。不合格の場合はそのまま城下町の神殿に連れ帰ろうと思っていたのだが、必要なかったようだ。3人をよろしく頼むぞ。それでは私はこれで失礼する。」


そう言い残し3人のシスター見習いを置いたまま帰っていった。


「元々これが目的じゃなかったのかと思える手際の良さでしたね」


ドワコがあきれ顔で言った。



「「「シスター・メロディこれからよろしくお願いします」」」


3人の見習いシスターは元気よく挨拶をした。

こうして神殿には新しく3人のシスター見習いが入る事になった。

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