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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの領主様
72/128

72.会議

今日はマルティ王国の首脳部が集まる会議がある為に城下町に来ている。

通常なら砦から城下町まで馬車で2日程度かかるが、今回は移動時間が惜しいのでワイバーンで来たためにお供はエリーだけだ。


「お城も久しぶりですね」


オレンジ色の仕事着を着たエリーが言った。この服はエリーがアリーナ村で工房の手伝いをしている時に作った服だ。デザイン的にはこのような会議でも問題なく着用できる・・・と思う。


「なんか城の偉い人が集まる会議らしいから気乗りしないけどね・・・」


「新参者は立場が弱いですから仕方ないですよ」


ドワコも今回はいつもの冒険者風の服装とは違い、貴族が着るような立派な服を着ている。


「おっ嬢ちゃん。今日はいつもと違う服装だね。こうしてみると何処かの偉い貴族様のようだな。ハハハッ。」


「そう見えますか?」


「おうよ。立派な服を着ている事からすると、今日は大事な用事のようだな?がんばってな。」


「ありがとう」


いつもの衛兵のおじさんと軽く話をしてドワコとエリーは城内に入った。会議までは少し時間があるので聖女の執務室で少し時間を潰すことにした。


「毎回来るたびに久しぶりに来たな・・・と思うんだけど、聖女がこんなのでこの国大丈夫なのかな?」


「ドワコさんも最近忙しいですからね。国的には問題ありますけど、仕方ないですよ。領主の仕事が落ち着いたらまた頑張りましょう。」


エリーに励まされた。


そして会議の時間か近づいたのでドワコとエリーは休憩を終えて会場へ移動した。


広い会場には机が円状に並べられており一番奥が王族、それから入り口の方へ向かうほど階級が落ちていくと言う席順になっている。


「ドワコさん。こちらの席になります。」


エリーに案内されて席に着いた。真ん中より少し入り口寄りで微妙な位置だった。


「本当はあの席なんですけど・・・今回は領主と言う事での参加なので・・・」


他の人には聞こえない小声でエリーが示した席は王族が座る席の隣だ。聖女の身分が高いとは知っていたが、王族の横に座れるくらい高かったのは驚きだった。


「国を救い、戦死した王様を生き返らせた女神様の代理と言う位置づけですからね。」


ドワコの向かい側の席にはアリーナ村の村長が座っていた。ドワコの視線に気が付いたらしく村長のジムが軽く手を振った。ドワコも同じように振り返した。ジムは実際は村長ではなく、アリーナ村も含めたジム領の領主様だ。領主と言う同じ立場同士なのでほぼ同じ場所の席になっているのだろうとドワコは思った。ちなみにエリーはドワコの後ろに控え、ジムの後ろにはワゴナーが控えている。


基本貴族が席に座り、お供が少し後ろに立つという形式のようだ。周りを見ても同じような位置関係でお供の人が立っている。そして、席も埋まり王族の席とその隣の1席だけ空いた状態になった。そして座っていた貴族が一斉に立ち上がった。ドワコも同じように立った。少し間が開き奥の扉が開かれ王族が入って来た。王子様、王妃様、王様の順に入ってきてそれぞれの席に座った。それを見た一同は自分の席に座った。王族の横には誰も座っていない席が1つある。


「皆の者ご苦労。それでは会議を行う。」


王様の号令で会議が始まった。この会議は国の運営について話し合う会議で、問題点や施策や方向性など様々な国の政に関する話し合いを行う。基本的に領地は領主に権限が一任されているため、非常時でない限り国からの干渉は受けないようになっているらしい。その為に今回、主に話し合う内容は領地を除いた国内についての議題となる。


「まずは会議に入る前に皆に紹介する者がある。知っている者もいると思うが、ムリン国が崩壊したために我が国がその土地の管理を任される形となった。そしてその土地を所領としたドワコ領が誕生した。今回からその領主であるドワコが会議に参加することになった。」


そう言ってから王様が目配せをした。何か挨拶をしろと言う事らしい。

ドワコ立ちあがり挨拶をしようとしたが椅子に座っているより頭の位置が下がってしまった。


(あちゃー背が低いとこうなっちゃうんだよね・・・)


そう思っていたらエリーが横に来ていて踏み台を置いてくれていた。

ドワコが気付きその踏台の上に乗った。周りからは笑い声が聞こえたが気にしないことにした。


「この度、ドワコ領の領主をさせていただくことになりましたドワコです。新参者でいろいろ至らぬ点もありますがよろしくお願いします。」


お決まりの挨拶をしてドワコは椅子に座った。


「それでは会議に入る。あとの運営を頼むぞ。」


司会役を引き継いだ文官らしき人が会議の概要について説明した。


「まず、人口の推移について・・・」


会議が始まった。今は国内について状況や概要などの説明が各部署から行われている。ドワコにはあまり関係ないので聞き流す。


「次に、城下町の経済状況について・・・」


司会役の文官から次に話し合う内容の提示があり、各部署からの報告が上がる。


「現在、城下町では武器、防具などの品不足が続いています。特に武器については城下町には取り扱う店舗が一軒もなく、ジム領から仕入れることである程度の数は確保していますが、軍などで必要な数には到底及ばず、深刻な状況となっています。」


文官から報告を受けた王様がジムに聞いた。


「ジム領から仕入れていると言う事だが、ジム領で確保できる武器の量を増やすとかは出来んのか?」


「恐れながら申し上げます。当領地で取り扱っている武器も自領で必要なだけしかございません。以前は当領地で製作しておりましたが、事情によりその工房が廃業したため、当領地で取り扱う武器も他から仕入れている状態です。」


王様の問いかけに領主のジムが答えた。


「そうか。わかった。続けてくれ。」


王様が会議の続行を指示した。

報告が色々行われ・・・。


「それでは次に、ドワコ領への援助について・・・。」


ぼーっと聞き流していた所、急に自分の名前が出てドワコはハッと意識を戻した。


「壊滅したムリン国から引き継いだドワコ領への復興の為に国から援助した金額は・・・」


物資をお金に換算して報告がされた。ドワコ領になってからは食糧支援を1カ月受けただけでその他の援助は一切受けていない。魔物に壊された建物などの復旧にかかる費用も計上されていないため、金額の低さに会議に参加した人たちは驚いていた。


その件については、特に質問を受ける訳でなく報告のみで終わった。


会議は進んでいき軍部の報告に移った。

軍部からは第一から第五までの騎士団の隊長が入り口に近い席に座っている。もちろん第一騎士団のバーグの姿もあった。


「西の砦で行われた大規模戦闘について・・・」


司会役の文官から次に報告をする内容について提示があった。


「それでは報告します。西の砦で行われた戦闘は我が軍は第一~第三騎士団の約60名、西の砦の守備隊が約20名、ムリン国軍がおよそ120名の総勢200名体制で挑みました。敵である魔物の数はおよそ2000体と報告を受けています。指揮については王妃様が行っております。なお損害については、当方は死者0人、負傷者0人となっており敵側は全滅となっています。」


バーグが報告を行った。戦闘が行われた程度の認識しかなかった当事者以外の者は、敵の圧倒的な数に対して1割程度の兵で勝利した事実を聞いて驚いた。


少し前の事なので議論をする必要もなく報告だけで済まされた。


「続いて隣国の状況について・・・」


「諸国連合内のブリオリ国で魔物の襲撃により軍が甚大な損害を受けたとの報告が来ています。襲ってきたのはシーサーペントと言う魔物で、城の近くまで接近され戦闘が行われ海軍がほぼ壊滅したと報告が来ていますが、人数や城、それに付帯する町などの被害情報は入っていません。」


(詳細についてはここまで届いてないのか・・・なるほど)


詳細を知っているドワコは思った。


「続いて・・・ミダイヤ帝国の動向について・・・」


知らない国名が出てドワコはどこだろうと思案を巡らせた。


「報告します。ミダイヤ帝国の内戦が収束に向かっているようです。どこの派閥が優勢になっているなどの情報は入っておりませんが、近く内戦が終わり国が一つにまとまる方向に進んでいるようです。」


担当文官が報告を行った。

この件については話し合いが行われるようだ。重要案件なのかもしれない。

エリーが横に来てそっと耳打ちをする。


「ミダリア帝国と言うのはマルティ王国の東側にある大国で、およそ20年前に突如侵攻してきて、マルティ王国は領土の大半を奪われ、壊滅寸前まで追いやられた事があるんですよ。幸い、戦争中に皇帝が病気か何かで亡くなった事で内戦が始まり、そのために戦争が中断され、マルティ王国は助かった訳ですよぉ。」


「説明ありがとう」


エリーは説明を終えて後ろに下がった。

そして会議は続く。


「いま優勢になっている派閥がどのような考えを持っているかで我々の対応も変わるだろう。しばらくの間は内戦で傷ついた国内の立て直しが最重要課題だと思うが、それが落ち着くと20年前のように侵攻してくる恐れもある。動向を観察し、国境付近の守りも強化しなければならんな。」


王様が今後の方針について述べた。


そしていろいろな議論が交わされ会議が終わった。

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