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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの領主様
71/128

71.護岸整備

「ドワコ様、ブリオリ国より使者が参っております。」


セバスチャンが面会の要請が来ている事をドワコに伝えた。


「わかりました。通してください。」


セバスチャンが案内して使者が執務室の中に入って来た。


「初めまして領主様。わ・・」


と言いかけて使者は言葉を止めた。よく見るとドワコの知った顔だった。


「あっ、あの時の。」


ブリオリ国でシーサーペントに食べられたのをドワコが助けた少女だった。


「まさか領主様だったとは・・・その節では色々とお世話になりました。ブリオリ国軍所属のセシリアと申します。この度は使者としてこちらの方へ参らせていただきました。」


「ご苦労様。私はこのドワコ領の領主ドワコです。あの時は色々とあってお互い名乗る事がありませんでしたね。改めてよろしくお願いしますね。」


「はい。こちらこそ。」


「それで今回はどのような御用件で?」


「はい。まずは業務連絡の方からです。ブリオリ国より提供する港の用地確保が終わった事を報告に参りました。これは後程、私の方がご案内することになっています。それと、驚異的な復興を遂げたこの土地を見て来いとの上官からの指示です。」


「わかりました。土地の方が確保できたと言う事なので、こちらも先の準備をしないといけませんね。村の方はご自由に見てもらって構いませんよ。残念ながら軍については機密事項もありますので一部しかお見せできませんが、それでも良ければ見学して行ってください。」


「セバスチャン。あとの仕事についてはよろしくお願いしますね。私はセシリアさんを案内しますので。」


「かしこまりました。行ってらっしゃいませお嬢様。」


セバスチャンに後を任せドワコとセシリアはまず基地へ向かった。


「えっと、ここが護衛隊の基地になります。」


「砦の中ではないんですね?」


「そうですね。元々は砦の中にあったのですけど手狭になったので外に出しました。」


「えっ?」


この砦と称する建造物はかなり大きい。高さは余り無いが城壁を含めた広さは諸国連合の城並みの広さがある。どう考えても常駐している兵士の数を考えても広さには余裕があるように感じるが、違和感を感じた。


「ちょうど今、訓練している所ですね。」


広大な基地と称する軍施設は土地の隅っこに大きな箱型の建物がいくつか並んでいるだけだった。守りに関しては一切無視しているように見える。


そこに魔動投石車の部隊が陣形の練習をしている。縦、横、斜め、など乱れぬ動きで並んでいく。そして離れた的に向かって一斉に投石を始めた。


「あれは何でしょうか?」


セシリアがドワコに質問した。


「あれは投石機に移動できる機能を付けた魔動投石車と言う物です。自動で装てんし、自動で射出できるようになっています。」


かなり離れた所に的があり、一斉に射出されたブロックは的の近くに次々と落ちていった。


「ちょうど飛行訓練から戻って来たようです」


ドワコが指さした方向を見ると、セシリアは見た事が無い空を飛ぶ物体が地上に向けて降りて来た。そして着陸して格納庫の方へ向かっていった。


「あれは何でしょうか?」


「魔動飛行機と言う物です。空からの状況確認が主な任務になります。」


根本的な戦い方の概念の違いを見てセシリアは驚いた。


「近づいたり、整備風景はお見せできませんので軍関係はここまでになります。」


「そうですか。ありがとうございました。」


もう少し中を見てみたい気持ちだったが、友好的な視察なので軍事機密と言われれば引き下がるしかない。


「次は村の方へ行きましょう」


ドワコとセシリアは砦側の駅に来た。


「それではこれに乗ってジョディの村に向かいます」


セシリアは砦に来る途中、馬車の車窓から見えていて気になった物だった。


「これは何でしょうか?」


先ほどから同じ質問をしているが、見る物がすべて、そう見えてしまうので仕方ない。


「これは魔動鉄道と言って人や物資を運ぶために施設されたものです。それじゃ中へどうぞ。」


ドワコが中へ案内した。そしてセシリアが乗ったのを確認すると魔動車が動き出した。あっと言う間にジョディの村に到着した。


「ここがジョディの村です」


セシリアは以前この村を訪れた事があるが、面影は残っているが全く別の街となっている事に驚く。壊滅したと聞いた村を数カ月でそれ以上の物に建て直してしまったドワコの手腕に驚くだけだった。中心部は低い昔の街並みを残していたが外側には高層化された建物が軒を並べている。そして少し離れた所には大きな建物の一群がある。


「領主様。あの大きな建物は何でしょうか?」


「あれは工場の一群です。ブリオリ国へ輸出している布もあの場所で生産されています。」


工場の一群には線路で繋がれ、頻繁に魔動車が工場と村を行き来をしている。

視察を終えて2人は砦に戻ってきた。余りにも予想以上の事がありすぎて報告書をどうしようとセシリアは頭を痛めた。


「それでは今日はこの辺にしておきましょう。明日は港の建設予定地へ向かいますので、案内の方をよろしくお願いしますね。」


「ありがとうございます」


「えっと、お世話係としてジェシーを付けますので、困ったことがあればいつでも彼女に言ってくださいね。」


メイドのジェシーがセシリアの側にいった。


「この度お世話を任されることになりましたジェシーです。何かあれば何なりとお申し付けください。それではお部屋に案内しますね。」


ジェシーに連れられてセシリアは執務室を後にした。


(明日は視察か・・・さて、誰を連れて行こう。)


ドワコが視察のメンバーを考えているとエリーがお茶を持って入って来た。


「ドワコさんお疲れ様でした。お茶をどうぞ。」


「ありがとう。明日、ブリオリの港建設予定地の視察に行くけど誰を連れて行けばいいと思う?」


「そうですねぇ・・・わたしは外せないとして、残りは・・・メロディさんかな」


エリーから全く予期していなかった名前が出て驚いた。砦のメンバーの名前が出てくるものと思っていたのだが意外だった。


「もう本人には明日砦に来るように伝えてありますので連絡は不要ですよ」


「相変わらず仕事が早いですね」


「もっと褒めてください。フフン。」


エリーはご機嫌だ。



翌日、ドワコとエリーが執務室で待っているとメロディがやって来た。


「呼び出しに応じ参りました」


「そんなに畏まらなくても良いですよ」


「ですが・・・」


信仰の対象であるドワコなのでどうしても構えてしまうようだ。


「今日は隣の国に港を作る計画ですけど、その用地視察に行こうと思っています。ご同行お願いしていいですか?」


「はい。神殿の仕事は暇で、最近は料理研究ばかりしています。港町と言う事なので何かいい食材があると良いですね。」


了承を貰った所でセシリアが執務室へ入って来た。


「皆様お集りのようで・・・それでは用地の案内をさせていただきますね」


セシリアが挨拶をして出発することになった。


「乗り物はこちらで用意しますので、セシリアさんが乗られた馬車は一足先に戻ってもらいました。」


エリーが独断でセシリアの乗って来た馬車を返してしまったようだ。

皆は砦の外にある護衛隊の基地へ向かった。


「今回はこれで移動します」


エリーが用意したのは装輪タイプの魔動装甲輸送車だった。


「装甲車だ」


メロディが見覚えのある形を見て言った。


「装甲車・・・ですか?」


セシリアが聞き返した。


「これは魔動装甲輸送車と言って兵士を輸送するための乗り物です。装輪タイプなので速度もかなり出ますよ。」


ドワコが説明した。

そして皆が乗り込みエリーが運転を担当する兵士に合図を送った。そして魔動装甲輸送車は動き出した。

道中は舗装された道なので通常の馬車では考えられないような速度で進んでいく。所々、馬車を追い越すために減速したがおおむね良好にブリオリの港町に到着した。


「えっ?もう着いたんですか?」


セシリアが驚く。道が良くなり途中で宿泊をしなくても移動することが出来るようになったが、それでも本来なら一日がかりである。それを少し雑談をしている時間で港町の前に来てしまったので驚くしかなかった。


「それでは案内お願いしますね」


ドワコが上部ハッチを開けて椅子の上に立つと外を見渡せることが出来る。周りを見ると見た事も無い鉄の塊が動いているので視線を凄く感じる。軍服を着ているセシリアがひょこっと顔を出すと、軍で使用する物なんだと住民は納得したようだった。セシリアの案内の元で建設予定地に到着した。


「ここが港の建設予定地になります」


「案内ありがとう」


ドワコはこの場所までのアクセスと広さ、そして海の深さなど確認して回った。所々メジャーで寸法を測り紙に書き留めていった。データ収集を終えたのでセシリアを送り届ける事にした。城の側まで行きセシリアを降ろした。


「お疲れ様。案内ありがとね。」


「いえいえ。こちらこそ色々な物を見せていただいて勉強になりました。ありがとうございます。」


そう言ってドワコ一行と別れた。

ドワコは城に一言挨拶に行った方が良いのでは?と提案したがエリーが断固却下した。


魔動装甲輸送車で移動すると目立つので、港の建設予定地で一旦待機してもらって、ドワコ、エリー、メロディの3人は港町の散策を行った。少し前にシーサーペントの襲撃を受けたとは思えないような活気だった。メロディは巫女服を着ているため少々目立っていたが本人は気にすることも無く海産物を物色していた。本人はアイテムボックスを持っているので、入れてしまえば鮮度は落ちることなく持ち帰る事が可能だ。


「それにしてもアイテムボックスって便利ですね。10年以上この存在に気が付かなかったのは損した気分です。」


「確かに便利ですからね。これのお陰でいろいろ助かりましたから。」


「どうせ私は持ってないですよーだ。ぶー。」


エリーだけ仲間外れになったようで拗ねている。ふと見ると神殿のような建物が見えた。


「神殿のようですけど、この国の宗教ってどうなってるのかな?」


ドワコがメロディに尋ねた。


「すみません。私は他国の事に関してはよくわかりません。」


「そうですか・・・エリーは知ってる?」


「知ってますけど、あまり気分の良い物ではないかもしれませんが、神殿に入ってみます?メロディさんがシスターの服を着ていたら追い返されましたけど、巫女服なら聖職者とは気が付かれないので大丈夫だと思いますので。」


そう言ったので3人で入ってみる事にした。


「神殿の作りはマルティ王国の物とあまり変わらない気がしますね」


ドワコは見たままの感想を述べた。


「でも、ここに祭られている物が・・・ね。」


エリーが意味有り気に言った。


「これは幼女様ようこそいらっしゃいました」


エリーとドワコに対してシスター?が言った。メロディに対しては挨拶も無かった。

聖堂に入り真ん中に掲げられている像を見てドワコは少し引いた。女神像では無く、幼女像があった。布一枚を巻いただけと言う何とも斬新なデザインだ。


「今回はどのような御用件で?」


「幼女像に祈りを捧げに来ました」


エリーが即答した。


「そうですか。ごゆっくりとどうぞ。」


そう言ってシスター?は奥へ下がっていった。


「ここの宗教って少し変わっているんですよ。可愛い幼女が神の使いだと信じられていて、幼女でも可愛い子とそうでない者の差別もあるくらいなんですよ。こんな宗教ですので信者もごく少数らしいですけど・・・この国の王様は熱心な教徒らしいです。なので手厚く保護されているんですよ。」


「同じ志を持つ者としては微妙な気持ちです」


メロディもあきれ顔で言った。


「実際、宗教と言う物が存在している国自体が珍しいんですよ?そんな事に構っていられるほど生活に余裕なんて無い人がほとんどですから。」


「そうなんだ。いつか色々な国を見て回るのも面白いかも知れないね。」


「その時は私もお供しますよ」


「私もです」


何気ないドワコの一言にエリーとメロディは同調した。

ドワコたち3人は神殿を後にして港の建設予定地へ戻って来た。

魔動装甲輸送車に乗り込み砦に戻った。

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