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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの領主様
69/128

69.兵器開発

砦に戻って来たドワコは持ち帰った海産物の鮮度を確かめた。

2日間の行程だったが、痛みも無く、十分使えるレベルだと判断した。


食材の一部は料理研究をしている神殿のメロディの元にも届けられるよう手配をした。

あとは、親方にブリオリ国側の道路整備の依頼を出し、その後でドワミを執務室に呼び出した。


「ドワコ呼んだ?」


「忙しい所、ごめんね。」


「ひと段落したところだったから大丈夫だよ」


「そっか。それじゃ新しい研究についてだけど・・・」


ドワコは幾つかの構想をドワミに話した。


「今度は兵器開発か。しかも完成したら今までの闘いの概念が変わるね。やる気が出て来たよ。」



数日後、新たな兵器の試作品が完成した。今回はドワコと一部のドワーフ職人にも手伝ってもらい製作に当たった。今回開発したのは魔動投石車と魔動装甲輸送車の2つだ。


魔動投石車は無限軌道と呼ばれる履帯を装備した装軌車両の上に魔動機により自動巻き上げ自動装てんを可能にした投石機を搭載した魔動車だ。特殊形状のブロックを射出する仕組みでこれが2組備え付けられている。射程は最大1キロ程度ある。設計上は1人で運用可能だが、基本2名で運用をする。


魔動装甲輸送車は魔動車に走行を施し兵員の輸送を可能にした物だ。悪路走行を前提とした装軌車両と舗装道路を高速で移動できる装輪車両の2タイプを作り用途によって使い分ける。これが2台で護衛隊を1部隊輸送できる。


戦闘用の車両が増えたことで砦の外に新たに護衛隊の基地が作られた。当面は整備用の車庫と係員詰所だけだが、砦にある軍機能もこちらに移動させようと思っている。現在は航空機用の滑走路と整備用の建物を建設中だ。



ドワコとドワミの他、デマリーゼ、カレン、ベラ、ケイト、カーレッタとエリーとメルディスが新しく作られた基地に来ている。


「それでは新しく開発した魔動投石車の試運転を行いたいと思います」


「今回用意した的は・・・あちらです」


ドワミが指さした所は800m程度離れた所に赤く塗られた標的物が置かれている。


「かなり離れていますけど大丈夫ですの?」


デマリーゼが遠く離れた的を見て言った。


「まあ見ていてください」


ドワコが言った。


「それじゃドワミよろしく」


「はーい」


ドワミが返事をして魔動投石車に乗り込んだ。初めは機動試験だ高速で走ったり、曲がったり、止まったり、今までの魔動車とは違う動きに皆驚いている。そして投石機の2本のアームが巻き上げられブロックが装てんされた。そして「ダン、ダン」と2発続けて射出された。ブロックは的には当たらなかったが近くで落ち、射程に関しては問題ない事を見せた。そして射出と巻き上げを交互に行う連続射出モードにして、「ダン・・・ダン・・・ダン・・・ダン・・・」と途切れなく飛んでいくブロックを見て皆をさらに驚かせた。


「こんなもの作って何に使うの?」


ケイトがドワコに聞いてきた。


「魔物が攻めて来た時に1人でも生存率を上げるために作りました。これ一台ではなく量産して配備する予定です。」


「こんなもの量産されたら敵は近づくことも難しくなりそうですね」


ケイトの言葉で、皆はこの砦で行われた魔物との戦闘を思い出したようだ。

その後、ドワミが皆に使い方の説明をして、それぞれが試射を行い魔動投石車の試運転を終わらせた。



翌日、準備していた糸を生産する紡績工場と布を生産する織工場が完成した。今日から稼働する予定となっている。各工場にはおよそ30人の従業員が配置されている。将来的に向上を増築すればさらに人数は増えると思う。完成した布を輸送するためのブリオリ国側の道路整備も急いで行っている。現在の所、城下町側の道路は手付かず状態だ。ドワコは魔動鉄道を使った輸送を考えているが王様にはまだ話をしていない。膨大な労力が必要になるのと、建設に必要な土地の所有権が本国側にあるためだ。ブリオリ国のようにうまく話が進むとも限らないので優先順位では後回しにした。


それから数日後、ブリオリ国側の道路整備が完了し、ドワコ領とブリオリの港町が高規格道路でつながった。そしてドワーフ達の作った様々な製品や、新しく稼働を始めた工場より出荷された大量の布が、ブリオリ国へ輸出されるようになった。また冷蔵庫を搭載した荷馬車を使用してブリオリ国の海産物もドワコ領に入って来るようになった。おかげで食生活も大きく変化した。


開通した頃は、なぜ壊滅した国に向けてこのような道路が出来たのか疑問に思っていたブリオリ国の商人達だったが、見た事のない物や入手が困難な品物で溢れたジョディの村を見て商機を見出したようで、次々に品物を仕入れて自国へ持ち帰っていった。おそらく自国だけではなく、他国に売るのも視野に入れているのだろう。前回の反省点からドワコは生産の方に力を入れて販路は他の商人に独占させない範囲で任せる方式を取っている。なので自分からは積極的に商人を使って販売は行っていない。


収入も領地に入って来るようになり、ここに来てようやく赤字続きだったドワコ領の収支が黒字転換した。


ただ、ここで問題が発生した。労働力が根本的に足りないのだ。ジョディの村の人口は少し増えて1500人ほどだ。完全な状態で運営しようと思うと人口を増やすか、自動化して人数を減らすかになってしまう。これから益々発展していくと、この問題が深刻化してくるだろう・・・。



執務室で仕事をしていると、シアが尋ねてきた。


「折り入ってドワコさんに相談があるんですけど・・・」


「シアさんには色々お世話になったのでできる範囲で良ければ」


「私、服を扱うお店を開きたいの。ここで生産された布を使って製造から販売までを行って平民階級の人でも気軽に買える服を売ろうと思ってるのだけど・・・。」


この世界での服は非常に高価だ。糸を作る所から製造のすべてが手作業の為、人件費や手間、労力が重なりたとえ簡素な物であっても簡単に買うことが出来ない。その為に平民階級の者は皆、継ぎ接ぎだらけの服を着ている。もちろんドワコ領に関しても同じことが言える。以前、エリーが避難者用に用意していた簡素な衣服を今でも大事に着ている人たちが沢山いる。安価で入手できるとなると生活環境の改善が見込まれる。そう考えたドワコは許可を出すことにした。


「わかったよ。それじゃ布の仕入れルートの確保と縫製工場の建設、あと縫製用のミシンとかも必要だね。規模や詳細が固まったらまた教えてね。」


「ありがとう・・・一応こんな感じで考えているの」


そう言ってドワコに資料を渡した。


「お店はアリーナ村、城下町、そしてジョディの村で縫製工場は、ここの工業団地内に建設・・・規模は・・・なるほど。わかった。工場の建設と縫製機械の搬入はこちらでやるからお店の開店準備を優先しておこなってね。」


「ありがとう」


シアが新しい商売を始める気になってくれたのがドワコは嬉しかった。協力は惜しまないので、ちょっと頑張っちゃおうかなとドワコは思った。



そして今日はとある新兵器のお披露目を行う。


開発担当のドワミとドワコ、そして軍部よりデマリーゼ、カレン、ベラ、ケイト、カーレッタが新しく完成した飛行機用の格納庫に来ている。


「今回の物は凄いよ。でもドワコってどうしてこうポンポン物が思いつくのかなぁ。」


今回試作した物は複葉機だ。主翼が2層構造になっている。魔動機を回し、その先に付けられているプロペラから推進力を得る。


「これは何ですの?」


デマリーゼが見た事無い形状の物体に質問してくる。


「これは魔動飛行機と言って空を飛ぶ乗り物です」


「「「!!」」」


5人は信じられないと言った様子で魔動飛行機を観察した。


「今は偵察用に開発したものだけど将来的には武器を乗せて戦闘が出来るようにしようと考えているよ」


「空からの攻撃が出来るって・・・根本的な戦い方が変わるね」


そう言ったケイトが興味深そうに見ている。


「それじゃ早速試運転してみるね。これ2人乗りだから誰か一緒に乗ってみる?」


「はいはーい。私乗ってみる。」


カーレッタが名乗りを上げた。

ドワミとカーレッタが乗った魔動飛行機のプロペラが回り、動き出した。


「動きましたわ」


「動いてますね」


それぞれが動いただけで驚く。まだまだこれからが本番なんですけど・・・。

そのまま機体は滑走路に向かい端で一旦止まる。そして魔動機の出力を上げて速度を上げていく。魔動飛行機からはキャーキャー悲鳴が聞こえている。おそらくカーレッタだろう・・・。


そして離陸して大空に舞い上がった。


「「「おーーーー」」」


見ていた者は驚きの声を上げた。実はその前に安全性を確かめるため試験を十分行って、今回の試運転を行っているので、ドワコは飛んでいる所を見た事がある上に、自分でも操縦したこともある。


「あとこれには無線機と言う物が積んであって、地上と話が出来るようになっているよ」


と言ってドワコは大きな箱のような物体を出した。


「もしもしードワミ聞こえる?」


「聞こえるよー」


箱からドワミの声がして皆をさらに驚かせた。


「それじゃそろそろ降りてきてー」


「はーい」


魔動飛行機が着陸態勢に入った。着陸してそのまま皆のいる所まで戻って来た。


「お疲れー。カーレッタどうだった?」


「空の上ってすごいね。建物とか小さく見えて新しい世界が見えた感じだよ。」


興奮気味のカーレッタが答えた。


「今回は偵察用で空の上から敵の動向を観察したりする事で、状況を的確に把握して軍を動かすために使う物だよ。意外と偵察は大事だから、やるかやらないかで戦況が変わる事もあるよ。」


用途の説明をして残りの人たちにも魔動飛行機に試乗してもらった。


やはり離陸するときの感覚が慣れないようで皆、悲鳴を上げていた。

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