68.ブリオリ城
ドワコとメルディスはブリオリ城の謁見の間にいる。
王様に合うのに適さないと言う事で二人ともドレスを着せられた。ドワコはフリフリのお人形さんのようなドレス、メルディスはやや露出度の高い胸元が大きく空いたドレスを着ている。衛兵たちはチラチラとメルディスの胸元を見ている。
「まもなく王様が参られます。玉座の前に来られたら跪いて下を向いておいてください。」
そっと近くにいる側近から声をかけられた。少しして王様が玉座の前にやって来た。言われた通りドワコとメルディスは跪いて下を向いた。
「話は聞いておる。表をあげぃ。」
王様の声でドワコとメルディスは顔を上げた。王様は太って背が低いRPGで出てきそうな感じの風貌だった。
「シーサーペントを2人で倒したと聞いておる。ご苦労であった。聞くところによると、この国の軍属の者ではないようだな?」
王様が聞いてきたのでドワコが答えた。
「私どもは、隣のマルティ王国より参りました。シーサーペント討伐に苦心されていたようでしたので、わずかながら協力できればと思いお手伝いさせていただきました。」
「そうであったか。さすがマルティ王国だ。素晴らしい魔導士を配下に持っているようじゃ。」
「此度の件、シーサーペントを倒した事もだが我が息子を救ってくれたと聞く。何かお礼がしたいのじゃが・・・出来る事なら極力かなえようと思う。何でもいい申してみよ。」
王様は国家の危機が解決したうえに王子を助けてもらったことで感謝しているようだ。本当は日を改めて交渉しようと思っていた事を言ってみる事にした。
「それではお願いが・・・」
「申してみよ」
「マルティ王国の国境からこの港町までの道路整備をさせていただきたいと思います」
「ほう。して下さいではなく、させて下さい。なんだな?」
「はい。建設にかかる費用、人員についてはこちらから用意しますのでブリオリ国が負担する物はありません。用地は元々の道だったところを使うので新たな領地買収も必要ありません。いかがでしょうか?あと港の使用許可もいただけると助かります。港については土地を用意していただければ建設から整備まで当方で行いますので・・・いかがでしょうか?」
「うむ。こちらとしては問題ないがその様な物が褒美で良いのか?」
「構いません。あと申し遅れました。私は隣のマルティ王国ドワコ領の領主をしていますドワコと申します。以後お見知りおきを・・・。」
「なんと。領主殿であったか。あの壊滅したムリン国を引き継いだと聞くが復興具合はどうじゃ?」
「はい。順調に進んでおります。ただ、復興にはお金がかかり、資金不足のために色々な方策を模索している所です。その一環として外国との取引を・・・と考えていますが、港が無いためにこちらの設備が使えないかと見に来ていた次第でございます。」
「そうか。我が国を中継して流通すれば税を納めてもらう事にはなるが、使う事には制限をかけないので安心してくれ。道路整備については許可しよう。港については土地を用意することにしよう。」
「ありがとうございます。ではこれからは当領地と親密な関係になると思いますので、よろしくお願いします。」
ドワコとメルディスは王様の謁見を終えて控室に戻って来た。お姫様抱っこで運んできた少女は目を覚ましたようで、ちょこんと座っていた。
「目が覚めたようですね。ご気分はいかがですか?」
「おかげさまで少し眠ったので良くなりました」
「どうして海軍の船に乗っていたんですか?」
ドワコは正規軍の船にこんな少女が乗っているのを不思議に思い聞いてみた。
「元々は魔法少女隊の候補生でしたが、容姿で落とされてしまい、少し魔法が使えたのでそのまま海軍に配属されました。魔法書は代々受け継いでいて、成人すると引退させられ次の候補生に回されます。魔法書には魔法が記載されているので、魔力さえあれば発動できる訳です。私のような微妙な存在は、その魔法書を持たされたまま船に配属され、遠距離射撃要員として任務をしなくてはいけなくなります。」
「他にもそういう境遇の人がいるの?」
「はい。今回も一緒に出撃した子もいたのですが、私よりも先に乗った船が沈められてどうなったかわかりません。」
魔法少女隊は魔法が使えれば誰でもなれる訳では無いようだ。隊員たちの士気も高かったようだし選ばれた人たちなんだろうとドワコは思った。あと、あれだけの魔法書をどうやって集めたか疑問に思っていたが、代々魔法書を受け継いでいるため定員分だけ魔法書があれば済むと言う訳だ。引退した人たちはどうなるのか気になったが、他国の事なので深く干渉するのも良くないと考えた。
「それでは私たちは、この衣装を返してから宿に戻りますね。あなたも所属する部隊に戻ると良いですよ。」
「はい。いろいろとありがとうございました。それでは失礼します。」
少女は一足先に自分の所属する部隊に戻っていった。ドワコとメルディスも着替えて城を出る事にした。
「何か色々とありましたけど、結果的に十分な成果が得られましたね。」
メルディスがドワコに言った。
「そうですね。領地としては満足いく結果でしたが、多くの人が亡くなってしまったのは残念な事です。あまり軍事関係は手を出そうとは思いませんでしたが、魔物に襲われたときの生存率を上げるためにも兵器開発は必要かもしれませんね。帰ったらドワミと相談かな。」
やはり平和慣れしてる世界から来たために兵器開発と言うのは躊躇するが、自分たちを守るためには必要な物だと言い聞かせ構想を練り始めた。
シーサーペントの襲撃で港町にも多少の被害が出ている。船はかなりの数が壊され、ドワコが戦った付近では大波が押し寄せ建物にも被害が出ている。ただ住民たちは元気なようで復興はすぐに終わりそうだ。ドワコとメルディスは領地に持ち帰る海の食材を物色している。正直な所、この世界の知識がないドワコと森での暮らし(エルフの集落のある場所)が長くて海産物の知識がないメルディスの2人では全く役に立たなかった。仕方ないので適当に買い漁りアイテムボックスに入れた。
それから街をぶらぶら歩き時間を潰して、宿に戻った。
夕食を取り、体を拭いてベッドに横になる。そしてメルディスとイチャイチャしながら眠りについた。
朝になり朝食を取ると支度をして宿を出る。すでに荷馬車は宿の前に止まっていた。今日は領地に戻る日だ。冷蔵庫に昨日購入した魚などの海産物を何個か入れてた。領地に戻るまでの食材の傷み具合を確認するためだ。この実験が上手くいかなかった場合は改良が必要になり、問題ないと判断すれば実用化に向けて動き出す。そしてドワコたちが乗り込み荷馬車はドワコ領を目指して進みだした。
帰りも順調に進み2日かけて砦に戻った。




