表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの領主様
65/128

65.転生者

「少し詳しくお話を聞いていいですか?」


ドワコがメロディに言った。


「構いませんけど、前に何人か話したことがありますが、全く信用してもらえませんでした。」


そこで聞いた話では、内容から推測してドワコと同じくらいの時代から転生したが、転生した時間が違ったようで、ドワコとは10年以上の時間の開きが出てしまったという事。住んでいた場所が意外と近かったという事。所々時間の経過のためか記憶が曖昧になっている事。


プライバシーに関する事は聞いていないが、いろいろ苦労している話を聞いて自分はまだ恵まれた環境だった事を知ってドワコは涙ぐんだ。


「もう昔の話なので気にされなくても大丈夫ですよ。ドワコ様。」


「私には話せないような内容もあると思いますので、席を外しておきますね。」


そう言ってエリーは部屋から出ていった。エリーの行動からお互い詳しい話までした方が良いという事なんだろう。ドワコは覚悟を決めて話をする事にした。


「気が付かれたと思いますが、ここの領地には見覚えのあるような物が色々あったと思います。それは私が案を出して作らせたものです。」


「はい。形は違いますが、同じような物が元いた世界にも存在していました。お風呂にしても電車や車窓から自動車も見えました。城下町では見た事ない物です。もしかしてドワコ様も同じように転生した方なのでしょうか?」


「そうなります。まだ転生してから半年くらいしか経ってませんけどね。話を聞いた限りではそんなに離れていない所でお互い生活していたようです。」


「そうなんですか。その話を聞いて夢とかではなく本当に存在していた訳なんですね。」


今まで誰もまともに聞いてくれなかった事を親身になって聞いてくれた上で、本人も同じ境遇だという人に会えてメロディは涙ぐんでいた。


「幸い私は領主という立場にあるのでメロディさんの事を守っていけると思います。これからも極力、向こうの世界の環境に近づけように頑張りますので、必要な物があれば遠慮なく言ってくださいね。」


「ありがとうございます。頼りにさせて戴きます。」


取り敢えず話は終わったかな?そろそろ戻ってくるかな。


「お話は終わったようですね」


タイミングを合わせたかのようにエリーが戻ってきた。


「メロディさん、アイテムボックスの中身を見せてもらって良いですか?」


「アイテムボックスって何でしょうか?」


メロディは本当に知らない様子だ。


「体の中にアイテムが入っているような感覚はありませんか?」


「えっ?・・・んー???何か変な感じがします。えいっえいっえいっ。」


どこからともなくアイテムが出現する。マンガ肉が5つ出てきた。


「うわぁ懐かしいマンガ肉だ。この世界に来た時はお世話になったよ。」


ドワコが懐かしそうに言った。


「私も頂いた事がありましたけど本当に美味しかったです」


「エリー、マンガ肉食べたことあったっけ?」


ドワコは渡した記憶が無いので聞いてみた。


「これマンガーの肉ですよ?前に一緒に狩りに行きましたけど?」


「なんですと。マンガ肉の正体がマンガーの肉だったとは。」


いつの間にか話がそれてしまっていた。


「他には無いですか?」


エリーが聞いた。


「あと、これもかな。」


初期装備の武器と防具が出てきた。


「あと一つありますよね?」


エリーが中身をすべて把握しているような言い方をする。


「多分これで最後です」


最後に服が出てきた。


「これです。これです。」


エリーが最後に出てきたものを手に取った。


「すみませんけど、これに着替えてもらって良いですか?」


先程出現した白と赤の布のような物をメロディに手渡した。服のようだ。


「はい」


そう言ってメロディは着替えるため奥の部屋に入った。

しばらくして着替え終わって出てきた。


「これは、巫女服じゃないですかぁ。」


ドワコには見覚えのある服だった。神様に使える巫女が着る衣装である。


「やっぱり・・・そうですよね?」


薄々そうじゃないかと思っていたメロディもドワコの一言で確信に変わった。


「ドワコさんはシスターの衣装と巫女服・・・でしたっけ?どちらがいいですか?」


「巫女服かな」


ドワコは即答した。せっかくの黒髪ロングならこっちの方が絶対似合う。


「という訳なので、これからはこの服を着て下さいね。あとでドワコさんが替えの服も作ってくれると思いますので。」


「そういう訳にはいかないですよ。神様の前で失礼にならないように決められた服を着ている訳ですから。」


エリーの要請をメロディは断った。


「あなたの信仰する女神様が直接着てくれと言っている訳ですよ?それでも聞けないと?」


「え?」


「ドワコさんこの服に着替えてくださいね」


と言って何処からか以前、暇つぶしに作った聖女服を取り出し、その場で目にも止まらぬ早業で着替えさせた。


「あれあれ?」


気が付くと聖女服に着替えていた。恐るべし。


「長年シスターをやっているなら、この姿に見覚えがありますよね?」


「女神様?」


「そうですよ。ここの神殿に女神像が置かれていないのはその為です。信仰の対象となる本人がいる訳なので像はいらないでしょ?ここまで言えばどちらの服を着るのが正解かわかりますよね?」


「女神様の仰る通り巫女服を着させていただきます」


「エリーちょっとやり過ぎです」


「私はドワコさんの為になる事が最優先事項ですよ?あと女神様の事は皆には内緒ですよ?」


長年、シスターの教育を受けていた為に、女神様には絶対の忠誠を誓っている。こう言われと逆らえない。

こうしてメロディはシスターではなく巫女になりました。

(注:服だけで立場はシスターのままです)



「あと女神様への御供え物の件の説明をしないといけませんね」


「御供え物?」


エリーがそう言ったがドワコは意味が分からないので聞き返した。初耳なんですけど?


「料理できますよね?」


「まあそれなりには・・・」


「たまにで良いので、女神様が好みの料理を作ってください。喜びそうな料理でも構いませんよ?」


「あぁ・・・なるほど。わかりました。たまには味の濃いものが食べたくなりますよね。」


メロディは記憶が曖昧になり当たり前と感じるようになっていた味の薄い料理を思い出した。要するに自分の元居た世界で食べられていた料理を再現して作れと言う事らしい。


「私では知識が無くてどうにもならない事なので、食材や機材は色々と揃えましたので研究して求める味を探してみてください。シスターとしての仕事よりもこちらが重要ですのでお願いしますね。」


エリーがメロディにお願いをした。


ドワコはエリーがこの世界の料理にあまり満足していないことに気が付いていたようだ。立派な厨房を備え付けさせたのにも理解できた。その心遣いが嬉しく思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ