60.道路整備
「各資源の採取場には線路を敷き、ジョディの村に作った資材集積場とを結び資材の輸送ができるようになりました。これにより人力や馬車で運んでいた資材が大量かつ迅速に運び込む事が出来るようになりました。」
「国外に避難していた元ムリン国の住民が戻ってきたために、ジョディの村の人口が200人程度だったものが1000人程度まで増えました。住居等はすでに建築済みなので問題ありませんが、働き口を何とかしなければなりません。」
「やはり城下町とをつなぐ道を整備してこの領地に沢山人が来てもらえるようにして、お金を使ってもらわないといけませんね。」
砦の会議室で、領地の首脳部が集まり近況の報告と今後について意見を出し合っている。
今回は商人側のアドバイザーとしてシアが参加している。
あれからバラバラになった元従業員の所在を確かめ連絡が取れるようにしておいた。ドワコとエリーとシアの3人はドワコの領地に戻ってきた。納品する予定の大量の在庫はドワコが一旦買い取った。
シアはドワコの領地が見たいと言って付いて来た。興味本位なのか商売を始めるための視察かはわからないが、断る理由もないので了承した。
「人口が一気に5倍まで膨れ上がり魔動車を使用したき機械式農業も順調に進んでいるので、食料の確保は問題ないですけど、住民の収入を増やさなければいけないので製造工場を作り働き口を確保しようと思います。幸い、魔動機を使用した自動紡績機、自動織機が完成し、工場の建設を急がせています。これが完成すれば大量の布を作ることが可能になります。また、原材料になる植物も大量生産体制ができました。将来的にも縫製工場も作り収入の少ない人でも購入できる安価な衣服を売りたいですね。」
次の目標についてドワコが説明する。会議に集まっている者は真剣にその話を聞いている。
「あと、並行して道路の整備を行います。城下町方面へはこちらの管轄では無いので手が出せませんが、諸国連合側の国境にある3つの砦まで道を整備します。これによって諸国連合側からの商人を呼び込み外貨を稼ごうと思います。」
ドワコ領は諸国連合の3つの国と接している。その一つ一つに砦が設置してある。砦と言っても元々は同じ諸国連合なので簡易的な砦で、どちらかと言うと入国手続きを行う出張所のような役割になっている。この後の事を考えて砦は増員して多くの人が入国してきても処理できる体制は整えてある。あとは魅力的な街づくりをして多くの商人や人々に来てもらう。そして領地の収入を増やさなければならない。
その話を聞いていたシアは城下町で商売をするより、これから大きく成長する可能性の高いこの街で商売を始めた方が良いのではと考えていた。まず、この領地に来て驚いたのが馬も使わずに人や荷物を運べる魔動車の存在だった。魔動鉄道にも乗せてもらったが、あり得ない速度で大量の人や荷物を運ぶことができる。これだけでも販売すれば多大な利益になるものだ。ただ、ドワコさんは魔動車、さらにその元になっている魔動機を積極的に売るつもりは無いようだ。それによって作られた工業製品、農作物などでお金を稼ごうとしている。
シアはこの領地でどのような商売が適しているか考えることにした。
それから何件かの審議を行い会議は解散した。
それから数日後、各砦とジョディの村をつなぐ道路の建設が始まった。基本、障害物が無ければまっすぐにしてあり、道幅も馬車がすれ違う時も減速する必要が無いくらい余裕が持たせてある。舗装はホープタウンの舗装工事で採用した特殊形状のブロックを敷き詰めて舗装することにした。また、ブロックは馬車などの車両が通行しても大丈夫なように強化されている。前回は手作業だったが、今回は土木用の魔動車を使用して効率的に工事を進めていった。念のため道路の施工にあたり木造の橋を数か所に作った。これは有事の際はこれを破壊する事で相手側の行軍速度を遅らせるためのものだ。
また合わせて、騒音対策のために村から少し離れた所に整地し工業団地を作った。これをジョディの村と線路で結び人員と物資の輸送ができるように整備した。また、村には小さな子供を預かってもらえる託児施設を作り小さな子供がいる世帯でも安心して働ける環境を作った。
新しく作った工業団地に糸を作る紡績工場、布を作る織工場の建設にかかった。建設にあたり将来的には大きな工場に成長させたいので土地や建物の配置を考慮した。
ジョディの村の中心には店が点々とあったが、人口が爆発的に増えてしまった為、区画整理を行い郊外にまとめて移動させ新たな商業地区を作った。また、今後、村内に環状の線路を引き、各主要個所を結んで村の人の移動に使ってもらえるように魔動鉄道の建設工事も始まっている。
魔動機とドワーフ達のお陰で通常なら年単位で行われる工事が数日単位で完成していく異常な建設スピードで、村が日を追うごとに大きくなり近代化していった。
それから何日か過ぎた。ドワコがこの世界に来て半年くらい経過した。環境も変わり、多忙な日々を送っているため、なかなか自分の時間が取れなくなったが、今日は久しぶりに自分の時間を過ごしている。特に何をするという訳でもなくのんびりと過ごしていたが、最近服を作っていないので自分用の服を作ることにした。人の前で着ることはないと思うが、動きやすい聖女服をイメージして作ることにした。なぜ、そのような色になったかわからないが聖女服は青と白を基調とした服となっている。今回は公務で着用するものではなく、顔を隠す必要もないのでフードを付けていない。あと、動きやすくするために生地も軽めで丈夫な物を使用した。お揃いで靴も作ってみた。
ローブというよりワンピースに近い物になったが、人には見せないので良しとした。型紙も引かず気の向くまま作ったが・・・このデザインどこかで見たことがあるような・・・。気を取り直して、とりあえず試着してみた。鏡を見るとお人形さんみたいになった自分を見て恥ずかしくなった。恥ずかしさの余り思わず鏡から後ずさりをしたら何かにつまずいた。そのまま倒れこみ後頭部を家具か何かの固いものにぶつけてしまった。ドワコは気を失ってしまった。
ちなみにこれが、ドワコがこの世界に来て初めて受けた大ダメージだった。




