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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの領主様
55/128

55.引っ越し

方向性を決めた所で行動に移す事にした。


まずは家に戻り、セバスチャン、ジェーンとジェシーに領主になったので引っ越しをすることを伝えた。


「そうでございますか。では早速準備に取り掛からせていただきます。」


セバスチャンはジェーンとジェシーそれとメルディスに指示を出しながら引っ越しの準備に入った。



次に、下のアリーナ銘品館に行き、店主のシアに引っ越しをすることを告げた。


「そっか、寂しくなるね。それで・・・」


シアと今後の事を話し合い、家賃を免除する代わりに家の管理をしてもらえる事になった。



そして、ドワーフの集落へドワコとエリーは向かった。


「嬢ちゃん久しぶりだな」


「親方、ご無沙汰しています。今日は頼みごとが・・・。」


「また家を建て直してくれとかか?」


「いえ・・・家ではなく、街を作って欲しいのです。」


「こりゃまた大きく出たね。どこの街だい?」


「少し前に隣にムリン国と言う国があったのですが、そこが魔物に襲われて無くなってしまったんです。そして、その国の土地を私が復興もかねて領主として任されてしまいまして・・・。」


「なんと、そうすると嬢ちゃんは領主様かい。そりゃすげぇ。」


「ドワコ領主様になったの?」


話を聞いていたドワミが話に入って来た。


「あっ、ドワミ久しぶり。そうなんだ。全部丸投げされて大変なんだよ。」


「それは大変だ。出来る範囲で良ければ手伝うよ?」


ドワミの言葉に、エリーの目がキランと光ったように見えた。


「いよいよドワミさんの本領が発揮される時が来ましたね」


エリーが意味有り気に言った。


「本領って?」


何もわからないドワコが言った。


「ドワミさんが得意な分野って知ってます?」


エリーの言葉に首を傾げた。以前、ドワミの家に泊めてもらったことがあるが、他のドワーフは自分が得意とする分野の工具や道具、製作した品物が転がっていたが、ドワミの家にはそのような物が無かった。気にしていなかったが、エリーに言われて確かに変だと思った。


「動力を必要とする機械全般ですよね?」


エリーがドワミに言った。


「よくわかりましたね。私が得意なのは言われる通りの分野です。」


「エリー良くわかったね」


「なんとなくですよ?なんとなく」


確信を持って言っていたので、なんとなくなはずは無いのだが、聞いてはいけないような気がしたのでそのままにしておいた。


「それでそれがどう必要になるんですか?」


エリーの言った意味が良く理解できていないドワコとドワミ。


「魔動機って知っていますか?」


「えっと・・・魔力を消費することで動力を得る装置ですよね?」


エリーの質問にドワミが答えた。


「魔動機か・・・懐かしいな」


親方が言った。


「もう失われた技術と言われておるな。魔動機と呼ばれる物は今でも存在しているが、動かすのに必要な魔石燃料と呼ばれる物の精製技術が失われておる。ワシが若かったころは過去に作られたものが僅かだが残っておった。だが、今は魔石燃料が枯渇したために魔動機を動かすことが出来なくなっておる。」


「この魔動機をドワコさんの領地で復活させようと思っています」


「なんと」


「それは興味深いです」


ドワコだけ置いてきぼり状態で話が進んでいく。


「この技術を使用できるようになれば復興速度が飛躍的に向上します。ぜひ実用化させたいと思っています。ドワミさんは機械を作りたくても動力が確保できなかったので製作できなかったんですよね?予算も付きますし、製作し放題ですよ?一緒に来ませんか?」


「なにその甘いお誘いは。ぜひお願いします。」


ドワミの職人魂に火が付いたようだ。


「それでワシらはどうすればいいんじゃ?」


親方が聞いてくる。


「魔動機が実用化してからと言いたいとこですけど、先に魔物に破壊されたジョディの村の復旧工事をお願いします。」


「わかった。それじゃ前回みたいに人選して向かう事に・・・」


「いえ、そうでは無くて、今回は集落丸ごと来て欲しいのです。」


「えっ?」


エリーの独断で話が進められてドワコはどういう意図で言っているのかわからなかった。


「この集落が出来たのは戦火を逃れて勝手に住み着いた・・・でしたよね?」


「そうだが」


エリーの質問に親方が答える。


「この集落に愛着があると言う訳では無いと思いますので、集落ごとドワコさんの領地へ引っ越してしまいましょう。そうすればドワコさんが守ってくれますので安心して生活できる上に、色々と融通を聞かせてもらえますよ?特にお酒とか・・・。」


「うっ・・・なかなか痛い所をついてくるわい。これについては即答は出来ないが、集落で話し合ってみよう。村の復興については早急に手配しよう。」


「よろしくお願いします」


「・・・と言う感じでよろしかったでしょうか?ドワコさん」


「よろしかったと言う前に私が知らない情報が入ってましたけど?」


「今思いつきましたので相談できませんでした・・・てへっ」


可愛くテヘッってやられても・・・まあ話がまとまったので良しとしましょう。


とりあえず詳しい日程を確認してドワコとエリーは城下町に戻った。



翌日、早々と荷物を纏めたドワコたちは馬車で東の砦を目指した。

ドワコ、エリー、メルディス、セバスチャン、ジェーン、ジェシーの全員がそろっている。


砦までは1日半かかる。今回は従者もいるのでワイバーンではなく馬車を使用している。荷物はドワコのアイテムボックスに入っているために大きな荷物は無く、馬車1台に全員乗車している。


「馬車の旅も久しぶりだなぁ」


ドワコが言った。


「早く移動するのに慣れてしまうといけませんね」


エリーも同調して言った。


「護衛を付けていませんが大丈夫なのでしょうか?」


ジェシーが不安そうに言った。


「ドワコさん魔物2000体に1人で立ち向かって生還できるくらい強いので大丈夫ですよ?襲ってくる方が愚か者です。」


エリーが言った。何その例え方?


「まさかぁ・・・冗談・・・ですよね?」


だが、ジェーンが言うがドワコには心当たりがあるので返事が出来ない。


「まあその事は置いておいて、仮に来ても返り討ちにしますから安心してくださいね。」


話を強引に切り替える事にした。



そして夜になった。

今回は護衛がいないので、戦闘が出来るドワコとメルディスが交代で夜の番をする。

他の人はセバスチャンとジェーンとジェシーは申し訳なさそうにコンテナハウスで休むことにした。


「それじゃメルディス。先に休んでおいて。」


「わかりました。ご主人様。」


メルディスもコンテナハウスに入り休むことになった。

久々の野宿なのでドワコは実際は数カ月前の事だが、昔を懐かしんでした。


「ドワコさんお疲れ様」


エリーが温かい飲み物を持ってきて横に座った。


「こうして夜を過ごすのも久しぶりですね。でも近い将来、国内での移動ではこのような野宿をする必要が無くなってしまうんですよね。」


「それって例の魔動機の話?」


「そうです。それが実用化されれば国内の移動は、村の裏山に行くぐらいの感覚で国内の端から端まで移動できるようになりますよ。」


マルティ王国は確かに国土がほかの国に比べると狭いらしい。それでも徒歩での移動では数日かかる。動力を積んだ車などが出来れば、移動速度も上がり所要時間の短縮ができるので、国としても良いことになると思う。はたしてそのような事が実現できるのだろうかとドワコは疑問に思っている。まあそうなれば良いかなとは思っているが・・・。


こうして夜は更けていき、ドワコはメルディスと見張りを交代し寝る事にした。隣にはエリーもいる訳だが・・・。


馬車での移動は順調に進み、翌日の昼過ぎには目的地の砦に到着した。

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