53.ダンジョン探索
翌日、ダンジョン捜索に行くメンバーがそろった。
王妃様、ドワコ、エリー、メルディス、カーレッタ、バーグ、それに第一騎士団の騎士3人と王子様だ。それと物資を運搬する部隊だ。
「お母様に呼び出されまして・・・」
王子様はあまり乗り気ではないらしいが呼び出されたらしい。回復が出来る者がパーティーにいると心強いからだろうとドワコは思った。
「それにしても砦組は全員魔法が使える人ばかりで・・・贅沢なメンバーですね」
王妃様がそう言った。国内で魔法が使える者は極端に少ないため、魔法が使えるメンバーのみで構成されている砦組は異様に見えてしまうようだ。
3日かけて目的のダンジョンに到着した。物資の運搬部隊はダンジョン前に展開して補給所の設営を行った。
「それでは無理をせずに進みましょう」
王妃様の合図でパーティーはダンジョンの捜索を開始した。魔物を大量に放出した後なので、ダンジョン内には魔物が僅かしかいなかった。地下1階、2階、3階、4階・・・と降りていき地下9階までやって来た。
「ここまでは楽に来ることが出来ましたが・・・この先には何かありそうですね。」
これまで先頭を歩いていた王妃様が皆にそう告げる。驚いたことに王妃様は前衛として第一騎士団と一緒に進んでいる。
「お母様の剣の腕は、かなりすごいですよ。」
ドワコの隣にいる王子様がそう言った。前に出る気は無く、後衛の砦組と一緒に行動している。
「ドワコ様と王子様ってすごく仲良さそうですね」
カーレッタがエリーにそう言った。
「まあ・・・そうですね・・・同じ屋根の下で一緒に寝たくらいの仲と言いましょうか・・・」
エリーが爆弾発言をした。
「なんですって。あなたたちいつの間にそんな仲に。」
エリーの話を聞いた王妃様が詳しく教えろと言わんばかりにやって来た。
「ドワコが息子の嫁になるのは大賛成ですよ」
なんかとんでもない話に進展している・・・。エリーは一緒に寝てた事を知らないはずなのに・・・。確かに一度同じ屋根の下でと言うかテントで寝た事はある。と言うか、その時はドワコが寝ている時、勝手に潜り込んできたのだが。ドワコには非が無い。よく考えたら親子で同じような事をされた記憶が・・・。
ドワコも王子も心当たりがあるので言い返せない。
「まあまあどうしましょう。婚約の儀は盛大にしないといけませんね。」
放っておくといつの間にか嫁にされそうなのでドワコは阻止しようと試みた。
「えっと、私たちは師匠と弟子みたいな感じで、そう言う関係ではありませんので・・・。」
「そうそう、師匠と弟子です。」
ドワコと王子様はあわてて否定した。
「そうですか・・・残念です。でも気が変わったら、いつでも言ってくださいね。」
王妃様は残念そうに引き下がった。エリーは楽しそうに様子を見ていた。
「エリーさんや、どうしてあの事を知っていたのかな?」
ドワコはエリーに問いただした。
「ドワコさんの事なら何でもわかるんですよ」
サラリとエリーは言った。
「この先が主の部屋かも知れませんね」
ただならぬ気配を感じ王妃様は皆を止める。王妃様は中の様子をうかがう。
「ここの主はサイクロプスと呼ばれる巨人のようです。幸い魔法などは使わないはずなので、力押しで行けそうです。」
王妃様が中の状況を分析して皆に伝える。
「それじゃ行きますね」
「待ってください。念のために・・・」
「ドワコどうしたのですか?」
突撃しようとした王妃様が少し不満げな顔でドワコを見る。
「念のために強化魔法をかけておきますね」
そう言ってドワコは、魔法書を取り出し、パーティーの攻撃力が上がる「火の守り」、念のために魔法防御の上がる「水の守り」、素早さの上がる「風の守り」、防御力が上がる「土の守り」を唱えた。
強化された状態で全員突入した。
先にドワコ、エリー、メルディス、カーレッタが魔法攻撃を仕掛け相手に先制攻撃を与える。それに続き王妃様、バーグ、騎士の3人が突撃をする。サイクロプスが大きな棍棒を振り回し、騎士の一人が吹っ飛ばされた。そこに王子が駆け寄り「ヒール」をかけて回復させる。攻撃は当たっているようだが決定的なダメージは入っていないようだ。
ドワコも鉄のハンマーに持ち替えて渾身の一撃を与える。サイクロプスが吹っ飛び壁に当たった。さらに追撃をかけるために騎士3人が襲い掛かるが反撃され吹っ飛ばされた。
牽制するために砦組が魔法攻撃を行う・・・があまり効いていないようだ。
「なんて防御力だ」
ドワコは飛ばされた騎士に向かい回復魔法を使用した。
「負け気はしませんけど、勝てる気もしませんね・・・。さてどうしましょう。」
王妃様が言った。相手に攻撃は通らないが、回復役が2人いるためダメージを受けても、すぐに回復できるため味方の被害も出ない膠着状態になっている。
「そろそろトドメ刺しちゃいますか?」
「エリー何か秘策があるの?」
エリーには何か作戦があるようだ。皆が耳を傾ける。
「簡単なことですよ?叩くからダメなんですよぉ。切っちゃえばいいんです。」
「切ってって言うけど、硬くて切れないんだが?」
先程から何度も攻撃を当てているバーグが言った。
「その剣じゃダメですね。ドワコさんのじゃないと・・・。」
バーグは騎士団長をしているくらいなので、かなり良い剣を装備している。それで切れないくらい相手は硬い。
「叩くのを想定して作れた剣と、初めから切るために作られた剣は似ていても別の物なんです。」
エリーに言われたので、ドワコは鉄のハンマーをアイテムボックスに入れてカタナを取り出した。
「まさかそんな簡単なことで勝てれば苦労しないんだけどねぇ」
と言いながら、カタナを振った。
サイクロプスも高い防御力を生かして腕で受けようとしたが、振ったカタナが腕を切り落としそのまま胴体も真っ二つにしてしまった。
「「「は?」」」
あまりにも呆気ない結末に皆がポカーンと口を開けた。
「みんなで協力して倒して倒しましたわー。みたいな展開を期待していたのですけれど・・・最後は拍子抜けになりましたね。でも目的は達成しました。皆ご苦労様でした。」
王妃様が目的達成を宣言した。
サイクロプスは大きな魔石に変わった。
「これは結構良い価格になりそうですね。」
王子様が落とした魔石を拾いそう言った。
「もう一つ何か落ちていますね?」
カーレッタが何かを拾い上げて見せてきた。
何かが書かれている巻物のような物だった。
「何かの図面?でしょうか・・・?」
王妃様が巻物を開き中を確認した。
「ドワーフのドワコなら知っているんじゃないかしら?」
王妃様がドワコに何かの図面らしい巻物を渡した。
ドワコが中身を見てみると・・・。
「内燃機関の図面のような・・・でも、なんか違う気も・・・。」
ドワコがいろいろ考えていると図面が突然消えた。
「あれ?」
突然消えた図面にエリーを除くみんなは驚いた。一番後ろにいたエリーの表情を誰も見てはいなかった。
消えたものは仕方ないと諦めて、全員はダンジョンを出る事にした。主が倒されたことにより地上に出るまで魔物に遭遇する事はなかった。
一旦休憩をはさんでから任務完了のため、砦へ帰還することになった。




