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52.編入

慰労会も終わり、広場に集まっていた人たちは部屋へと戻っていった。


元々は数百人規模で駐留できる施設なので部屋数だけは沢山ある。ただ、掃除とかはされていないので動ける避難民の方々が外での戦闘中に整備しておいてくれたようだ。


逃げる際に衣服などもボロボロになっている人達もいたが、エリーが用意した物資の中に衣服も含まれていたので着替えることが出来た。


普段、浴場は経費節約のために1ヵ所を交代制で使っていたが、人数が増えたために4ヵ所で用意されている。もちろん男女別に分かれている。


「やっぱりお風呂は良いね」


ドワコが湯船に浸かっている。この国のお風呂はお湯を張って浸かるタイプが主流となっている。ドワコにも馴染みの方式なので落ち着くようだ。ただお風呂は平民層ではあまり普及していないため、貴族やお金持ちの家、軍事施設などにしかない。


「ですねぇ・・・昨日はほとんど寝てませんから・・・」


エリーが隣で言った。本当に眠そうにも見える。エリーと一緒に入浴するのはこの砦に来てからは日課となっている。


「・・・」


ふと、エリーを見ると湯船に沈んでいた。あわててドワコはエリーを引っ張り上げた。幸い息はしているようだ。


「こんな所で寝ちゃ危ないよ」


ドワコはエリーをお姫様抱っこして脱衣所まで連れて行き、体を拭いて服を着せ部屋に戻った。そしてそのままエリーをベッドの上に置いた。


「すぅすぅ・・・」


エリーは寝息を立てて眠っているようだ。


(今回の戦闘ではエリーにいっぱい助けられたからなぁ。これからの事を思うとエリーがどうなるか不安だけどしっかりと守って行かないと)


ドワコは心に誓った。




翌々日、戦後処理についての協議が行われる事になった。


この砦の会議室で行われることになり、マルティ王国からは王妃様、第一騎士団団長のバーグ、そして砦の隊長のドワコ。ムリン国からは砦の責任者だったライモンド、文官らしき人が2名、諸国連合からはムリン国に隣接する国の代表が集まっている。


「それでは今後のムリン国についての協議を行う」


バーグが議長をするようだ。


「この戦いでムリン国の城は壊滅、国王を含め国を治める権限を持つ者がいなくなりました。生き残っている者の中では私が最高位になるようです。今の状態では国として機能するのは不可能です。どこかの国へ編入していただき、復興をしていくしか無さそうです。」


ライモンドが報告する。


「やはりそうなりますか・・・でもこれは、諸国連合の問題になるので我が国としては口を出せませんね。」


王妃様が何か考えている様子だ。


「我々も同じ諸国連合として救いの手を差し伸べたいが、魔物の集団が現れた場所を考えるとリスクが高くなり、簡単にわかりましたと返事が出来ない。」


諸国連合の代表の者が現状では編入できないと遠回しに言った。


「それで魔物の集団が現れた場所とは?」


ドワコの知らない情報が出てきたので聞いてみた。


「魔物が現れたのは城の近くにあるダンジョンと聞いている。過去にも同じような事が起こり、周辺には多大な損害が出た。それを防ぐためにこの砦が築かれたと聞いたが?」


諸国連合の代表者から、この砦の存在意義を知りドワコは驚いた。比較的良好な国同士の国境に無駄に大きい砦があるのが不思議だったが、その言葉を聞いて納得した。


「諸国連合で引き受けられないと言う事になると、我が国で受けるしか無さそうですね。国境線が変わってしまいますが、その辺りはどうなんですか?」


王妃様が諸国連合の代表者に問いかける。


「この際致し方ないと考えております。諸国連合とマルティ王国とは良好な関係を続けていますので、その辺りは心配していません。」


諸国連合の総意として王妃様に伝えた。


「わかりました。それではムリン国はマルティ王国へ編入することにします。後日、詳しい編入についての諸国連合との協議は文官を通じて行う事としましょう。」


王妃様の一声で方向性が確定し会議は解散した。



元ムリン国の代表と諸国連合の代表が退席し、王妃様、バーグ、ドワコの3人が残った。


「さて・・・まずはダンジョンの捜索が最初の課題ですね」


王妃様が2人に言った。


「そうですな。また魔物が出てきても困りますので、潰しておく必要がありそうです。復興はその後からですな。」


バーグが今後の方針について言った。


「潰すってどうやってですか?」


ダンジョンは、かじったくらいの経験しかないドワコが聞いた。


「ダンジョンには最深部にそのダンジョンの主が住んでいるんです。それを倒すとダンジョンとしての機能が失われ当分の間は魔物が発生しなくなります。」


王妃様が答えた。


「当分の間とはどれくらいでしょうか?」


「そうですね1カ月くらいの時もあれば何十年も続く場合もあります。ただ、ダンジョンの内部がわかってしまえば、復活してもそれ以降の作業は飛躍的に楽になります。」


ドワコの質問に王妃様が答えた。


「と、言う訳でぇ明日からダンジョン探索に行きます。」


「「エーーーーー」」


突然の王妃様の決定に2人は驚いた。



「それでどの様な規模で編成すればよろしいですか?」


バーグが王妃様に尋ねた。


「そうですね。ダンジョンなので大人数は連れて行けないので第一騎士団と砦から4人ずつ出してもらって10人程度のパーティーでしょうか、わたくしとドワコ、バーグは強制参加ですよ。」


「「・・・わかりました」」


拒否権は無いと悟ったドワコとバーグは了承する。

会議が解散されて砦の主要メンバーが集まっている。


「王妃様からの命令でムリン国城の近くにあるダンジョンに捜索に行く事になりました。そこで同行者を私の他にあと3人出してほしいと言われました。」


「それで誰が行きますの?」


ドワコの言った事に対してデマリーゼが聞いてきた。


「まず副隊長のデマリーゼは砦の指揮をお願いするので除外します。カレンとベラも砦に残った方が良さそうですね。残ったのは・・・ケイト、カーレッタ・・・と兵士の方は砦の守りがあるので除外・・・。」


「連れて行ってくれないんですか?」


エリーが上目遣いにドワコを見ながら聞いてくる。


「私はご主人様についていきます」


メルディスも行く気のようだ。

エリーは機転が利くので連れて行くと役立ちそうだが、武器を持った戦闘には向いていない。メルディスは魔法能力と弓の腕があるので十分戦力にはなる。


協議の結果、エリー、メルディス、カーレッタの3人となった。


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