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49.誤発注

ドワコとエリーが砦に来て2カ月と数日経過した。


この砦に隊長として赴任した時はどうなる事かと思ったけれど、ケイト、カーレッタ、その他の兵士たちとも仲良くやって、それなりに楽しい日々を過ごしている。赴任期間の残りが1カ月を切ってしまい、その事を思うと少し寂しい気持ちにもなる。


メルディスは数日間、砦に滞在していたが、従者は1人までと言う制約があるので城下町にあるドワコの家に行ってもらう事になった。今はセバスチャンの指導の下でメイドの修行をしているはずだ。ジェーンとジェシーと仲良くしてくれている事を祈っている。


今日はドワコの仕事は休みとなっている。

前回、メルディスに妨害されて見る事が出来なかったので、エリーとたまたま休みが合ったカーレッタと一緒に隣の国にあるジョディの村へ行く事になった。


エリーとカーレッタは何か共通点を見つけたらしく仲良くなっている。外から見れば姉と妹にも見えなくはない。


出入国の窓口で出国の手続きを行う。今日の担当はケイトだ。


「ドワコ様お気をつけて行ってらっしゃいませ。カーレッタ、ドワコ様をしっかりと守ってくださいね。」


「了解。なんかケイト明るくなったよね。」


「そうですか?それならドワコ様のおかげかも知れませんね。はい出国手続き完了しました。」


ちらりとケイトはドワコの方を見て微笑みかける。


「それじゃお留守番お願いしますね」


「かしこまりました」


ドワコがケイトに声をかけて3人は隣の砦へ向かった。



ムリン国の東の砦に入り3人は入国のと続きをするために窓口へ向かった。


「すみません入国手続きをお願いします。3人です。」


エリーが3人分の書類を窓口に提出した。


「えーっと、エリーさんにドワコさんとカーレッタさんですね。少々お待ちください。」


待合室には自分たちのほかには居ないようだ・・・ここに来て2カ月以上経ったが国境を超えた人はわずかだった。日によっては0人の時もあった。


「あれ?隣の砦の隊長さんじゃないですか?どうされたんですか?」


窓口の奥の方から声をかけられた。えっと誰だっけ?


「2カ月ぶりくらいでしょうか?今日はどのような御用で?」


(あー思い出した。この砦の責任者と名乗ったライモンドさんだ。)


「今日はジョディの村に遊びに行こうと思いまして、いま入国手続きを行っている所なんですよ。」


「そうでしたか。何もない村ですけど楽しんできてくださいね。」


「ありがとうございます」


そう告げるとライモンドは奥へ入って行った。


「お待たせしました。入国手続き完了しました。ようこそムリン国へ。」


窓口での入国手続きも終わり、3人はジョディの村へ移動した。


「とりあえず何か食べていきましょう」


ドワコが提案して他の人も賛成したので、3人は食堂へ向かった。


「いらっしゃい」


食堂の給仕のお姉さんが元気よく接客をしている。店内は何人かのお客さんがいる。

3人は適当な席にかけて何を注文しようか考える。


他国なので食文化も違うらしくマルティ王国とは違う物が食べられそうだ。


「私、この国の食文化はわからないので、カーレッタの勧めとかはある?」


「んとね・・・それじゃこれとこれとこれかな?私はこれにする。」


「なるほど。ありがとう。エリーは決まった?」


「決まってますよ。ドワコさんと同じものを頼みます。」


「それじゃ。すみません。」


給仕のお姉さんを呼んで注文をする。

少し経ち注文の品が並べられる。


「「「いただきます」」」


3人は食べ始めた。


「違う国の料理も美味しいですね」


カーレッタは満足そうだ。だがドワコは味に少々不満だ。


(やっぱり味が薄い・・・。)


最近、エリーが作ってくれる料理は味が薄いのは変わらないが、食材の良さを生かして味付けがしてあるので薄味でも美味しく食べることが出来る。


「カーレッタさんのおすすめだけあって美味しいですね」


ドワコは思っていた物とは別の感想を述べる。カーレッタは美味しいと言ってくれたので満足そうだ。


「なるほど、この味付けだとあわない訳ですか・・・ふむふむ」


ドワコが食べた物と同じものを食べながら、エリーはブツブツと何か言っている。

3人は食事を終えて、武器屋に行ってみた。アリーナ村の武器屋が少し懐かしく思ったためである。


「らっしゃい」


威勢のいい声で武器屋のおやじが声をかけて来た。


「おっドワーフさんとは珍しいな。武器にこだわりのあるドワーフさんの満足できる品物があるかわからんがゆっくり見ていきな。」


ドワコたちは店の中を見て回った。新品の武器の取り扱いはなさそうだ。


「ここには新品の武器は置いてないんですか?」


「すまんな。ここにあるのは中古品ばかりになる。なにせこの国には鍛冶屋が無いもんでな新品の仕入れ先が無いんだ。隣のマルティ王国も鍛冶屋がいないから新品の武器は売ってないしな。」


「この国にも鍛冶屋がいないんですね・・・」


「マルティ王国では新品の武器は売ってますよ?」


カーレッタが武器屋のおやじに言った。


「なんと。詳しく聞かせてくれんか?」


武器屋のおやじは思わぬ情報に身を乗り出して聞いてきた。


「アリーナ村と言うところに1軒と、その支店が城下町にあるので全部で2軒ありますよ」


「どうやって入手したかはわからんが高そうだな」


「それが中古品より安く売っていて・・・城下町の武器屋は全部潰れちゃいましたよ」


「それはある意味脅威だな・・・」


武器屋のおやじが考え込んだ。それを横目に見ながらドワコは掘り出し物が無いか店内を見て回った。ふと、ドワコの目に一つの武器が目に入った。


「これってカタナだよな・・・」


鞘に納められた日本刀のような剣があった。


「この剣を見せてもらって良いですか?」


「おう、いいぜ」


武器屋のおやじから剣を受け取った。

鞘から出してみて独特の形状にドワコは驚いた。


(どう見ても日本刀だ。でも何故こんな所に。)


「変わった剣だろ?昔、冒険者が拾った物と言って売りに来たものなんだ。見た事が無い剣なので鑑定できなかったのだが、安値で良いから買い取ってくれって言われて仕方なく買い取った物だ。」


見た感じだと状態も悪くないし、刃こぼれもしていない。安値で買い取ったと言うだけあって価格も高くなかった。


「この剣貰いますね」


「おっ買ってくれるのかい?ありがとよ」


ドワコは代金を支払い日本刀を購入した。

元居た世界にあった物に酷似していたため衝動買いをしてしまった。


「ドワコ様お買い上げなんですね」


カーレッタが尋ねてきた。


「なんか懐かしい感じがしましたので思わず買ってしまいました」


「ドワコさん良い買い物しましたね。流石ドワコさんです。」


どこが流石なのかわからないがエリーが褒めてきた。武器屋を出て、とりあえず持ち歩くのも大変なのでカタナをアイテムボックスに放り込んでおく。


あと3人で服屋を何軒かまわり色々な服を見てから砦に戻った。

砦に戻ると副隊長のデマリーゼが顔色を変えてやって来てエリーを問い詰めた。


「あなた。なんて事をしてくださいましたの?」


「えっと、うちのエリーが何かしましたでしょうか?」


あわててドワコはデマリーゼとエリーの間に入った。


「何がではありませんよ。この娘が書類の書き間違えをしたらしく、とんでもない事になっていますわ。」


確かにエリーはドワコの仕事の補佐をしているので書類作成の作業も行っている。だが優秀なエリーがミスをするのも変だとドワコは思った。


「それでどのような書き間違えをしたのですか?」


ドワコはデマリーゼに尋ねた。


「物資の搬入をする書類を書き間違えたらしく、今日、隊長のいない時に大量の食料品や毛布、薪などの物資が届きましたの。」


デマリーゼが指さした先には高く積み上げられた大量の物資があった。食料だけでもここの砦の者だけなら1年以上は余裕で食べて行けそうな量である。


「申し訳ありません。申し訳ありません。」


エリーが涙ながらに謝罪している。いくら優秀でも、見た目10歳くらいの少女なので、見ているだけで可哀想になってくる。


「私の従者が起こしたミスなので、私にも責任があります。今後の対処方法を検討させていただきますので少し時間をいただけますか?」


「わかりました。ドワコ様がそうおっしゃられるなら一任しますわ。」


そう言うとデマリーゼはカレンとベラを連れて自室へ戻っていった。


「でも、エリーがそんな簡単なミスをするとは思えないのですが・・・私が何とか処理しますので安心してくださいね。」


「ありがとうございます。ドワコさん。」


「元気出してね。エリーちゃん。それじゃ私は先に失礼しますね」


カーレッタがエリーの頭を撫でる。その足でカーレッタは自室へ戻っていった。



その日の夜、いつものようにドワコのベッドに潜り込んでいたエリーは元気が無いように見えた。

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