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48.砦の弓使い

ドワコは広場に来ていた。


最近では兵士の訓練で度々使用しているが、今はケイトが弓の練習をしている。


ケイトはあまりしゃべらないようで、ドワコとは業務上必要な最低限の会話しか行っていない。


ドワコとエリーは遠巻きに様子を見ている。弓の腕は・・・すごく上手とは言えないが、少し離れた所に置いてある的にはすべて当たっているようだ。命中精度は高く無いようで中心の印から外れた所に、ほとんどの矢は刺さっている。


ケイトが弓を引き矢を放った所で運悪く射線上に小鳥が入ってしまった。そのまま小鳥を串刺しにして的の真ん中に矢が刺さった。ケイトは慌てた様子で駆け寄り的から矢を抜いた。


ケイトの表情は暗くなっている。どうしたものかと考えていると、エリーがケイトの元に駆け寄った。ドワコもその後を追った。


「小鳥さん怪我しちゃいましたね」


「はい。当てる気はなかったのですけど・・・。」


「少し貸していただけますか?」


ケイトから矢の刺さった小鳥を受け取ったエリー。何をするのかと思ったら「うりゃ」と気合を入れて小鳥から矢を引き抜いた。


「なっ、何をするんですか。抜いてしまうと、そこから失血して小鳥が死んでしまうではないですか。」


ケイトがひどく慌てている。


「ドワコさんお願いします。」


あっ。そういう事ね。とドワコは納得した。

魔法書を取り出し小鳥に回復魔法である『ヒール』をかけた。

小鳥の傷は治り元気になったようだ。


「もう大丈夫ですからね。さあお行き。」


エリーが手を開き上にあげると手の中にいた小鳥は元気良く飛んでいった。


「ありがとうございます。ドワコ様。」


ケイトがドワコにお礼を言った。


「ドワコ様は回復魔法が使えるんですね。回復魔法を使われる方を見たのは2人目です」


ケイトが言った。


「2人目と言うと過去にどなたかが使われたのを見たことがあるという事でしょうか?」


ドワコが最初に見たと言う回復魔法を使う人が気になったので聞いてみた。


「帰省の際、途中で立ち寄った集落に、その時たまたま立ち寄る時期が合ったようで聖女様が集落に来られていて、集落の人たちを診察して回復魔法で癒している所を見たことがあるんです。その光景を見てから回復魔法は素晴らしいものだと感じ、使える方を尊敬するようになりました。」


「それって聖女様を尊敬しているのでは?こんな格好だと威厳もありませんし・・・。」


「ドワコさんは何をやっても素晴らしい方ですよ?」


エリーが会話に割って入ってきた。そこは譲れないようだ。


「でも聖女様を尊敬したくても、お顔がわかならないんです。その時もフードを深く被っておられたので・・・。」


(先代の聖女はフードなんて被ってないし、先々代は7年前に亡くなってるはず・・・。)


「それっていつ頃の話でしょうか?」


「3カ月前ですね」


「さすが聖女様です。出会う前から心をガッチリと掴んでいるとはさすがです。」


「それってどういう意味ですか?」


(エリーが余計なこと言うから・・・どうしよう)


「ドワコさんは今は休業中ですけど聖女様ですよ?でも、この事は内緒なので他の人に言っちゃダメですよ?」


「エリー言っちゃって良いの?」


「大丈夫ですよ。人には口外することは無いと思いますし、今後ドワコさんの味方になってくれる人なので大丈夫です。」


エリーがこのような言い方をした時は、最善な選択をした時だと言うことがわかってきた。素直に受け止めておいた方が良さそうだ。


「ドワコ様が聖女様だったなんて・・・。でもどうしてこんな辺境に左遷されたのかがわかりません。」


「貴族としての実績を積んで来いって王様に言われまして・・・ここに派遣されました。私の事をあまり良く思っていない勢力が貴族内にあるようです。」


ドワコは隠す必要が無いと思ったので正直に答えた。


「このような小さな国でもそう言う争いがあるのは好ましくないと思いますけど、私も似たような感じでここにいるので気持ちはよくわかります。」


ケイトも何か理由があってこの砦に放り込まれたんだとドワコは思った。


「聖女・・・いえドワコ様の前ですが、弓の練習を再開させていただいてよろしいでしょうか?」


「ごめんなさいね。練習の邪魔をしていたようで・・・。少し見学させてよろしいですか?」


「あまりお見せできる物ではありませんが良いですよ」


「ありがとう」


ケイトが弓の練習を再開したので少し離れた場所で見学をした。そこにメルディスがやって来た。


「御主人様、エリー様探しましたよ。一人だと心細くて・・・。」


(数日前まで一人で旅をしていた方の言うセリフですか・・・?)と、ドワコは内心思った。


「はいはい。よしよし。」


メルディスはドワコやエリーよりも長身だ。エリーがいつの間にか椅子を持ってきていて、その上に立ってメルディスの頭を撫でる。


「さみしかったでちゅね~。メルディスちゃんは寂しがり屋さんでちゅからね~。」


どう見てもバカにしているような応対なのだが、メルディスは目を細めて喜んでいるように見える。満更でもない様子だ。


「そう言えば、エルフって弓が上手そうなイメージがあるけど、メルディスはどうなの?」


「弓はエルフの嗜みみたいな物なので得意ですよ?見せましょうか?」


ドワコの問いかけに自信を持って答えるメルディス。


「エルフが弓を使うところを見る事が出来るんですね。弓を使うも者としては興味深いです。ぜひ拝見させて下さい。」


いつの間にかカレンが会話の中に入っていた。


「あれくらいの大きな的なら楽勝です」


相当自信があるようだ。


「それじゃ、あの的に当たらなかったら、今日のお風呂は兵士たちと一緒に入って下さいね。的に当たれば私が兵士たちと入ります。この勝負受ける?」


エリーが小悪魔的な笑みを浮かべてメルディスに挑戦状を叩きつける。これは受けるとまずいパターンだな。


「私がこんな大きな的を外すわけがないから。今日はエリー様が兵士たちと一緒に入るのですね。楽しみです。」


メルディスが弓を構えて放つ。・・・矢は明後日の方向に飛んでいき的には当たらなかった。


「痛っ・・・あれ?あれ?」


何度か矢を放つが的には当たらない。打つ度に痛がっている。

メルディスが不思議がっている。


「それじゃ今日のお風呂、楽しみだね。」


エリーが嬉しそうに言った。

 

「打つ時、弦が胸に当たって狙った所に飛ばないように見えるんですけど・・・」


ケイトが見たままの事を言った。


「胸が大きくなっちゃいましたからね。長年、胸が無いのに慣れていると感覚鈍るみたいですね。」


エリーが言った。こうなる事を予想して勝負を挑むとは・・・本当に敵には回したくないと思ってしまう。

理由がわかってしまえば対処できるらしく、それ以降は的の中心付近に当たるようになった。



夕食後、兵士たちが入浴する時間となった。

兵士たちが入ったのを確認したエリーが手招きをする。


ドワコとメルディス、それとケイトが浴場の前に来た。


「それじゃこれから罰ゲームやっちゃいます」


「おー!」


「おっ・・・おぉ・・・」


ノリノリのエリーが小声で言った。ケイトも何故か乗り気だ。突撃隊長のメルディスは元気がない。

みんなで浴場の更衣室へ忍び込み3人がかりでメルディスの服を剥ぐ。抵抗するすべも無く丸裸にされた。メルディスは全身真っ赤になっている。白い肌なので余計に目立つ。


ドワコは外で待っているつもりだったが、エリーにここの方が楽しいからと中まで連れ込まれた。ケイトはそのまま付いて来た。


「お疲れの皆さんに隊長からのささやかなプレゼントです。でも見るだけですよ?触っちゃダメですよ。」


エリーが突然大声で浴室の中にいる兵士に向かって声をかけた。


「なっなんだ?」


「あの声はエリーさんだよね?プレゼント?何かな?」


中の兵士がざわめいている。


ドアが開けられメルディスが放り込まれた。


「うわぁ裸のエロフがキター」


「前にもあった気がするけど・・・しっかり見ておこう」


「触っちゃダメですか?」


中の兵士は大喜びだ。


「見ないでください・・・それに、エロフじゃないですぅ・・・あっ、触らないでください・・・」


浴室の中は楽しそうである。様子が見られないのは残念だとドワコは思った。


少ししてメルディスが浴室から出てきた。


「ハァハァ。男の人にいっぱい見られた・・・恥ずかしいけど・・・なんか興奮するぅ。」


ちょっと危ない人の顔になっている。


「こんな事をして悪いとは思いますけど・・・このドキドキ感が楽しかったです」


ケイトも喜んでくれたようだ。メルディスが体を張ってくれたおかげで、ケイトとも仲良くなれたので良かった。


「それじゃ兵士の皆さん、私たちは失礼しますね。お邪魔しました~。」


エリーがそう言うと女4人は全員浴場から出てきた。


「あっ、メルディスに服を着せるのを忘れた。」


エリーがそう言ったのでメルディスを見てみると服を着ていなかった。


「あははは」


ツボに入ったようでケイトが笑い出した。

そう言いながらも、メルディスの服をしっかりと回収しているエリーさんでした。

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