表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/128

45.エルフの女

今回は、少し残虐なシーンが含まれています。苦手な方は次の話へお進みください。

それから何日か経過したある日。

ドワコは午前より兵士たちの訓練を行っている。


休みの者、見張りに立っている者がいるために毎回、兵士たちが若干入れ替わっている。

柔軟運動、走り込み、素振りなど基礎訓練を行い、ドワコが兵士たちの相手をすると言う通常の訓練内容となっている。


「まだまだ甘い。脇を絞めて打ち込む。そこでもう一歩踏み込んで。」


と、ドワコは適切なアドバイスを行いながら兵士たちを訓練している。

その脇でエリーはバケツを並べている。


何個か並べ終わった所で、魔法書を取り出し水属性の下級魔法『ウォーター』を唱え、バケツに水を満たしていく。


「ドワコさん準備できました」


エリーが魔法を使ったことに驚いている兵士だったが、ドワコは気にする様子も無く言った。


「それでは次からは私も攻撃をします。しっかりと受け止めないと怪我しますよ?」


「「「えーーーーっ」」」


兵士たちが驚いた。でも訓練なので大怪我するまでは行かないだろうと安心していた・・・が。


「うぎゃー足の骨が折れた」


容赦なくドワコは襲い掛かる。


「骨折ぐらいでガタガタ言っていたら実戦では死ぬことになるよ。はいっ次っ!」


気絶して倒れた兵士にはエリーがバケツの水をかけて叩き起こす。


そしてドワコの前に重傷者が5人転がっている。


「隊長、もう駄目です・・・。骨が折れてます。」


「腕が変な方向に曲がってます・・・」


「実際これだけの怪我をした時、そのまま動けるか動けないかで生死が分かれますよ?」


弱音を吐いている兵士に向かいドワコは言った。


「・・・。・・・。・・エリアヒール。』


光に包まれ兵士たちの傷が嘘のように完治する。


「「「回復魔法・・・だと?」」」


エリーの水属性魔法でも驚いていたが、聖女様くらいしか使用できないはずの回復魔法を使うドワコを見て何者だ?と思う兵士たちだった。


「はいはい・・・回復させたので続けますよぉ」


「まだやるんですかぁ・・・」


こうして回復魔法を使う事で、通常の人間の限界を遥かに超えた地獄の訓練は、ドワコが休みの日以外は毎日、午前か午後のどちらかで行われるようになった。


この地獄の訓練が始まってから兵士たちはドワコを怖がり寄り付かなくなった。

それでも訓練は続き、それなりの日数が経過した所で自分たちの能力が飛躍的に上がっている事に気が付き、一人、二人とドワコの下に戻って来た。


そしてそれまでのようにドワコの周りには兵士が集まるようになった。




それから何日か経ち、気が付いたら砦に来て1カ月が経過していた。


今日はドワコの仕事は休みとなっている。少し遅くなったが、前から約束していたエリーを連れて隣の国へ行ってみようと計画を立てていた。出入国の窓口でドワコとエリーの出国手続きを行った。


「ドワコ様。休暇を楽しんできてくださいね。」


と、手続きを担当していたカーレッタに見送られ、ドワコとエリーは入国手続きをするために隣の砦を目指した。


「ドワコさんと海外旅行ですよ・・・ムフフン」


エリーは嬉しそうに歩いている。少し歩くとムリン国の砦に着いた。

マルティ王国の砦から出入国があまりないので当然の事ながら、ここも暇そうにしている。


「すみません。入国の手続きをお願いします。」


ドワコは受付のカウンターで係の人に告げた。


「はい。ドワーフさんとは珍しいですね。えーっとドワコさんとエリーさんですね。」


(そう言えば砦ではドワーフと言う言葉を聞かなかった気がする・・・なぜなんだろう?)


「えーっと。観光目的ですね。手続き完了です。ようこそムリン国へ。」


手続きを済ませ、ドワコとエリーはムリン国へ入った。

そしてその足で砦の近くにある村を目指した。


「アリーナ村より規模が小さい感じですね」


エリーが村に着いた感想を言った。


「ここはジョディの村だよ」


入り口付近で知らない村人から村名を言われるのは懐かしい気が・・・とドワコは思った。


「とりあえず冒険者ギルド行ってみようかな?」


「はい。何か楽しい事があると良いですね」


ドワコとエリーは冒険者ギルドへ向かった。入り口付近に村の大きな地図が掲げてあったので迷わず行くことが出来た。


「それじゃ入ってみよう」


冒険者ギルドは村の規模に合わない位の広さがあった。だが、複数ある窓口も開いているのは1か所だけで併設の飲食店にはお客さんが一人しかいない。昔は冒険者であふれていたが今は閑散としている感じだ。依頼ボードも確認してみたが、これと言った物は無かった。ドワコは期待していた分、落ち込んだ。こんな状態なら冒険者の移動も無いよね・・・。


「貴様、ドワーフだな。」


突然、怒鳴るように声をかけてきた人がいた。先ほど飲食店に一人いた客のようだ。


「えっと?何か御用で?」


ドワコは訳が分からず恐る恐る聞き返した。相手はかなり怒っている様子だ。

ご意見番のエリーの方を見るとガッツポーズをしている。


「土臭い匂いがすると思ったら・・・ドワーフがいるじゃないか。あー、飯が不味くなった。どうしてくれるんだ。」


「あのー何かしましたか?」


「ドワーフがいるだけでイライラする。これだからドワーフは。」


意味不明な言葉で煽ってくる。


「ドワコさん耳、耳を見てください」


エリーがドワコに耳打ちをした。

えーっと・・・耳・・・おっ?

ピンと張った長い耳、サラリとした銀髪のロングヘア。そして身長が高いのに残念な胸。


「エロフだ!」


「ちがーう!エルフよ!」


ドワコが叫び思わず、エルフが突っ込みを入れた。なかなかいい筋してますなエロフのお嬢さん。


「なんかイライラしてきたわ。表に出て私と勝負しなさい。」


見知らぬエルフ女に喧嘩を売られた。


「ドワコさん知らないんですか?ドワーフとエルフってすごーく仲悪いんですよ。見かけたらこんな感じで絡んでくることもあるそうです。」


エリーが理由を教えてくれた。さてどう対処した物か・・・。


「やっちゃえばいいんですよムフフ」


エリーが不気味な笑い声をあげる。


3人は村から出て少し広い場所に出た。これなら何をやっても村には被害が出ないだろう。


「それじゃ魔法勝負ね。負けた方が奴隷になる。これで良いわね。」


「どわーふに まほうしょうぶ いどむなんて ひきょうもの~」


魔法勝負を挑まれエリーが感情のこもっていない声で罵声を浴びせる。


「なんと言われようとドワーフに負ける訳にはいかないよ」


「それじゃあなたが負けたら、ここにいるドワコさんと私の奴隷って事でよろしく~」


「負けるわけないから受けてやるわよ。まあ私が勝った時はあなたを奴隷にすることはやめてあげるわ。」


なんかエリーとエルフ女との間で条件が固まっていく・・・。やるしかないのかな?


「ドワーフの奴隷を連れた私ってなんて素敵なんでしょう」


すでに勝った気でいるエルフ女。


「さあ勝負よ」


エルフ女は魔法書を取り出し構えた。


「ドワコさんがんばって~」


エリーが少し離れた場所で応援してくれる。ドワコはアイテムボックスから魔法書を取り出した。


「何?アイテムボックス持ちで、そのエンチャントされまくりな魔法書は?」


エルフ女が動揺している。エリーは嬉しそうな顔をしている。


「私から吹っ掛けたから仕方ないよね・・・行くしかない」


エルフ女が動揺を振り払い魔法を使う動作をしたので開始したものと判断し、ドワコは詠唱を始めた。


「・・・。・・・。・・水の守り。」


魔法が発動しドワコを水の塊が囲む。


「炎よきたれ。ファイア」


エルフ女の詠唱したファイアがドワコに襲い掛かる。しかし水属性の中級魔法である魔法防御を上げる『水の守り』を発動しているので魔法がかき消される。本来なら威力を軽減させるものだが、相手が下級魔法でドワコの魔法の威力が桁外れなためにダメージが入らない。


「風よ来たれ。ウィンド」


風がドワコに襲い掛かるが、これもかき消された。


「くっ。石よ来たれ。ストーン」


無数の石がドワコに飛んでいくが、すべて弾き飛ばされる。


「水よ来たれ。ウォーター。」


水の塊がドワコに襲い掛かるが、これは吸収されてしまい。消滅した。

エルフ女の手が尽きたようだ。


「それじゃ今度はこちらから行くよー」


「ファイアー、ストーン、ウィンド」


出現した火が多数の石に絡みつき風に乗り速度を増してエルフ女に襲い掛かる。再詠唱までの時間が回復していないので水属性を抜いた3属性掛け合わせ魔法を使った。


防御する手段も無く、黒焦げになるエルフ女。特に胸のあたりのダメージが深刻なようだ。そのまま倒れる。


「死んじゃったかな?」


ドワコが恐る恐る黒焦げになったエルフ女だった物を見る。その横には無傷の魔法書が転がっている。


「そう簡単に死んでもらうと後々楽しめませんから~」


と言いながらエリーは棒でそれをつついている。


「それじゃ勝負も終わったので、ハイヒールでちゃちゃっと回復させてください。あと、回復させる時に損傷の激しい胸を復元するのしっかりイメージしてくださいね。」


(イメージってどんな感じだったかな?思い出せない・・・まあ自分の脳内補完で・・・いっか)


「・・・。・・・。・・ハイヒール。」


エルフ女だった物が強く発光して復活した。だが、着ていた服は燃えてしまって消失しているため、回復できず、何も着ていない状態だ。


「グッジョブです。ドワコさん。」


エリーが親指を立ててドワコに言った。

気絶していたエルフ女が目を覚ました。


「わたし、勝負に負けて・・・きゃっ。服が無くなってる。」


慌てて胸を隠すエルフ女。ところが違和感に気が付く・・・。


「なんか胸が大きくなってる!」


エルフ女が叫んだ。脳内補完をしようと思ったら、向こうの世界で最後に見た美乳グラビアアイドルの胸を思い出していた・・・。


「ちょっと失敗しちゃった。てへぺろ。」


ちょっと可愛くてへぺろをしてみたドワコだった。

さすがに裸のままで放置するのもまずいなと思っていた所、エリーがカバンの中から土嚢袋のような袋を取り出した。


「ここの底と横を少しビリビリ破って~はい完成」


それをエルフ女の頭からかぶせて着せた。胴体はその袋で隠されてはいるが見た目が残念すぎる。


「とりあえず村で何か服買うから我慢してね」


ドワコが申し訳なさそうにエルフ女に言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ