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43.隣国との交流

持ち込んだ荷物の整理も済んだので、砦の中を案内してもらう事になった。


カーレッタの案内で砦の内部を見て回る。


「ここが食堂です。平民も貴族もここで一緒に食事を取ります。」


「一緒なんですね。貴族用と平民用で別れていないのには意味があるんですか?」


「ここに詰めている人数が少ないのもあるかと思いますけど、過去の隊長が決めたそうで、昔からそうなっているらしいです。」


「いざと言う時に連携が取れるように、日頃から交流の場を設けていたのかもしれませんね」


なんとなく思った事を口にした。

次に砦の城壁に上がった。城壁には2人の兵士が見張りをしていた。


「任務ご苦労様です。こちらがこの度赴任されました新しい隊長のドワコ様です。」


「ドワコです。3ヵ月と言う短い間ですが、よろしくお願いしますね。」


「はっ。こちらこそよろしくであります。」


2人の兵士は軍隊式の敬礼をドワコに向けて行った。

ドワコは城壁から見える景色を眺めていた。


周りは草原に囲まれ城壁からは周りの景色が良く見える。国境だが特に塀などもなくどこが境界線なのかドワコにはわからなかった。


「国境ってどう見分ければいいのかな?」


ドワコがカーレッタに尋ねた。


「草で隠れて見えにくくなっていますけど、一定間隔に境界杭が打ってありますので、それで見分けています。後で見に行ってみますか?」


「そうですね。よろしくお願いしますね。」


この砦から少し離れた所に別の砦が見える。位置的に隣の国の砦だと思う。城壁の上にはここと同じように2人の兵士が見張りについている。そのうちの一人がこちらを見ているようだ。試しにドワコは手を振ってみた。向こうの砦の兵士も気が付いたようで手を振り返してきた。隣国との関係は良好のようだ。砦から少し離れた所に村もあるようだ。


次は兵士の詰め所に行ってみた。

座っていた休憩中の兵士は立ち上がり敬礼をした。


「休憩中お邪魔してごめんなさいね。この度この砦に隊長として赴任することになりましたドワコです。よろしくお願いしますね。」


「「「こちらこそよろしくであります」」」


兵士たちが声を揃えて言った。


「それじゃ挨拶も終わりましたので、私のことは気にせず休憩してくださいね。」


ほかの貴族と違う言い方に兵士が戸惑った。


「何か変なこと言ったかな?」


ドワコがエリーにこっそりと聞いた。


「平民は貴族が立ち去るまでは、その場から動けないんですよ。貴族の方から動いていいと言われれば問題ないですけど、そういう事はほとんどないですね。それでかと。」


「なるほど・・・」


「先程も言いましたけど、少し部屋の中を見せていただくだけですので、私たちには構わず休憩してください。」


ドワコは改めて兵士たちに言った。二度言われたので兵士たちも理解したようで、休憩に入った。

少しの間、詰め所を見て回り城壁内にある広場に出た。


「ここは、普段は兵士の訓練を行っています。それなりの広さがあるので、それ以外の用途でも使うことができます。」


砦の中を見学して回り程よく終わると、ドワコとエリーとカーレッタの3人は砦の外に出た。

境界は砦に面してある訳はなく、隣国の砦との中間地点辺りに境界杭があった。境界の確認をしていると隣国の砦より馬に乗った兵が2人出てきてドワコの側に来た。


「そこの3人、ここで何をやっている。」


「警戒させたようですみません。私はマルティ王国、西の砦に隊長として赴任したドワコと言います。今、国境がどのようになっているかを説明を受けているところです。」


「これは失礼しました。私はムリン国、東の砦の守りを任されているライモンドと申します。どうぞお見知りおきを。」


「赴任期間が3カ月と短い期間ですが、お隣さん同士と言う事でよろしくお願いしますね。」


ドワコが手を差し出した。相手も握手を求めている事を察したようで国境線上で握手を交わした。


「こちらこそよろしくお願いします。それでは、異常なしと言うのを確認しましたので、我々はこれで失礼します」


ライモンドは部下を連れ自分の砦へ戻っていった。


その日の夜、夕食の時に食堂で改めて挨拶をした。だが、見張りの任務以外の者は全員集めたはずだが、デマリーゼ、カレン、ベラの姿が見えなかった。


そして、自室に戻った。


「ドワコさん。このお酒とコップの入った籠をアイテムボックスで預かってもらえませんか?必要があったら飲んでもらっても構いませんので。」


エリーがお酒とコップの入った籠をドワコに渡した。特に考える訳でもなく言われたままにアイテムボックスに収納した。


「それでは今日は休ませてもらいますね。おやすみなさい。そうだった・・・問題が起きるといけないので、下だけはタオルを巻いておいてくださいね。」


最後に意味不明な言葉を残し、エリーは自室へ入っていった。

それから少し経ち、この砦にはお風呂があったのを思い出した。お湯が張ってなければ魔法で何とかなるので行ってみることにした。


「えっと・・・確かこの辺この辺・・・あった」


明かりが灯っているのでおそらく使用できるだろうと判断して、脱衣所で服を脱いだ。

扉を開けると先客がいた。湯気で奥の方が良く見えなかったが5、6人くらい入っているようだ。


「みなさんお疲れ様です」


だが、返事が無かった。ドワコは視線を感じつつも体を洗って湯船に入る。


「ちょうどいいお湯加減です。落ち着きますね。」


ドワコが何気なく言った言葉に申し訳なさそうに湯船に入っている人が答えた。


「あのー。ドワコ様。今は男性が使用する時間なんですけど・・・。」


「はぁ・・・」


何か様子がおかしい。よくよく考えてみたら今は女だった。ドワコは状況を把握した。


(やっちまった。下手に騒ぐと、ここにいる人達が不敬罪とかに問われて困る事になる。ここは堂々とするべきだな。うん。)


ドワコは心の中で覚悟を決めて行動に移す。エリーの言っていた事を思い出し、とりあえず持っていたタオルを腰に巻いた。湯船にタオルをつけるのはマナー違反だけど大目に見てもらおう。


「ごめんなさいね。間違えて入ってしまったようです。みなさん気にしないでくださいね。私の故郷では、お風呂で交流する事を裸の付き合いと言います。せっかくの機会ですので皆さんもお付き合いくださいね。」


そう言ってアイテムボックスからエリーから預かった籠を出し、お酒とコップを出して並べた。


「本当はいけないんですけど内緒ですよ?」


そう言ってドワコはみんなにお酒を配った。


「それじゃ皆様の健康を願ってかんぱーい」


お風呂に偶然居合わせた兵士たちとお酒を飲み交流をはじめた。


しばらくすると、ほかの兵士も何人か入ってきたがドワコに酒を渡され半ば強制的に仲間に入れられた。


最初の頃はドワコの体をジロジロ見ていたが、胸は申し訳ない程度しかなく下はタオルで隠していたので、その内に気にならなくなったようで、そのうち誰もあまり見なくなった。


「なあなあ、お前ら、やっぱ胸は大きい方がええんか?」


完全におっちゃんモードに入ったドワコが言った。


「そりゃ無いよりあった方いいよなぁ・・・」


1人の兵士が本音で答え何人か同調した。


「でもなぁ。ここにいる女性はみんな貴族様だからなぁ。じっくりと見てしまうと後が怖いんだよなぁ。」


「て、言いながら俺の胸見るなや。」


ドワコは兵士の頭に軽く突っ込みのチョップを入れる。


「「「わはははは」」」


みんなが大笑いした。少々変な方向に話が進んできたが、みんな和やかな雰囲気だ。


「さてと・・・。今日ここであったことは、みんな内緒にね。下手に話すとどうなるかわかってるよね?」


「「「イエス、マム!」」」


話の成り行きで覚えた言葉でみんなが返事をした。


「いい返事だ。それじゃ今日はこれお開きかな。コップは回収するね。飲みすぎた人もいると思うから二日酔いになった人は朝食時に報告すること。私のとっておきの方法で治してア・ゲ・ル。なんちゃって。でも報告は必ず行うように。それじゃおやすみなさい。」


と言って浴室を後にし、脱衣所で服を着て速攻で部屋に戻った。


(なんとかやり過ごした・・・はずだ)



翌朝、エリーが


「昨夜はお楽しみでしたね」


と、どこかで聞いたセリフを言ってきた。



朝食時に数人の兵士より申し出があったので、こっそりヒールで二日酔いを治しておいた。

一瞬で治ったのを兵士たちは何が起こったのかと不思議に思っていたようだ。

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