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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの聖女様
40/128

40.街の改装

いよいよこの日が来た。


ドワコが前々から準備をしていた貧民街の改装工事を開始する日だ。

改装工事をするにあたって事前に国とも協議し、王様より許可をもらった。

必要な資材もすでにアイテムボックスに入れてある。


改装工事については貧民街にもその通知を出している。


「それじゃセバスチャン。留守をお願いね。」


「かしこまりました。行ってらっしゃいませ。」


ドワコはエリー、ジェーン、ジェシーをお供に貧民街へ向かった。


ドワコたちが到着するとドワーフの集落の住人がすでに到着していた。ドワーフ達は20人来ている。集落の人口が25人なので集落を守るもの以外はほぼ全員来ていることになる。


「それでは今日から皆さんよろしくお願いします」


「「「任せておきな」」」


これから大掛かりな工事が出来ると言う期待感から親方を筆頭にドワーフ達の士気は高い。

あと、この貧民街で働けるものも日当を出し手伝ってもらえることになっている。


「では各班に分かれて図面通りに道路の施設、舗装作業を行います。」


ドワコが指示を出すとドワーフ達は事前に分けられた班ごとに行動を開始する。手伝いをしてくれる人は各班に人員を分けてドワーフ達の作業を手伝ってもらうようにお願いした。


それじゃ本部の設営をしちゃいましょう。空き家となっている長屋を取り壊し、整地したうえでテントを作り、炊き出しを行える場所を作る。あわせて救護所、打ち合わせなどが行える会議スペースを作った。


そしてドワコは舗装に必要な資材をアイテムボックスより出して適所に配置していく。ドワーフ達と住民が力を合わせて、土を平らにしてその上に舗装用のブロックを並べていく。ドワーフ達が力任せに土を転圧し固めていき、その後に住民がブロックを並べていき、最後にドワーフ達が仕上げ作業を行う。舗装作業はそれから3日かけて行われた。


舗装作業が終わったので物資の移動に荷馬車が使えるようになり効率よく運搬が出来るようになった。ただ、道幅があまりないので工事中は人が歩いていないが、日常生活では人通りもあり、一方通行にするなどしなければ馬車で通るのは難しいかも知れない。


今度は建物の作業に取り掛かる。

基本的に取り壊し、新たに立て直すという作業になる。人が住んでいない場所もあるので区画を整理して配置しなおす事になった。それによって元住んでいた場所より若干移動してもらう世帯も出てきた。


ドワーフ数人がかりで長屋を解体していく。力が強いドワーフなのであっと言う間に解体作業が終わる。住民が廃材の運び出しを行っている間に、新しく建てるための建材を用意する。これもドワコが事前に準備して必要な分が近くに配置されている。あとはそれを組み立てるだけだ。元々は平屋建てだったが、居住スペースを増やすために新しい建物は2階建てとなっている。従来より少し1階部分の面積を若干減らし洗濯物などが干せる場所も作った。今までは家の前に干していたので道を支障していた。その改善策だ。


空き家になっていた長屋は建て直さず取り壊した。それで空いたスペースを中央の一ヵ所に集め広場を作った。共同の井戸もこの場所に作った。今まではバケツのような物を落とし引っ張り上げて取水する井戸を使用していたが、手動ポンプで汲み上げる方式を採用し労力の削減を図った。ポンプは複数台配置し、同時に複数の人が使えるようにした。これを中央広場以外にも単体のポンプを数台配置した。


作業は順調に進み、それから数日後にはすべての建て直し作業が完了した。


もう貧民街とは呼ばせない綺麗な街並みが完成した。住民たちも家が新しくなり嬉しそうだ。

作業中ドワコは普段通りの冒険者風の服装をしていた。聖女様から頼まれて現場指揮をしている人なんだろうと住民たちは思っていたようだ。


住民達とドワーフ達は新しく作られた中央広場に集まっている。


「そんじゃ嬢ちゃん挨拶頼むわ」


親方がドワコに挨拶をするように言った・・・がドワコの姿が見えなかった。


エリーの指示の下でジェーンとジェシーが大きな箱を持ってきた。

何をするのかと住民達とドワーフ達が見ているとエリーが言った。


「聖女様より完成祝いの挨拶があります。皆さんご注目ください。」


聖女のローブに身を包んだドワコがやってきて大きな箱に上がった。


「「「聖女様だ・・・」」」


「「「あの人が聖女様?」」」


突然現れた聖女に住民達とドワーフ達が驚いた。

住民たちは先日見ているので知っているが、ドワーフ達は聖女を見るのは初めてなので物珍しそうに見ている。


「皆様。数日にわたる作業お疲れ様でした。特に怪我などもなく無事に作業が終わったと聞いております。この区画は生まれ変わりました。これも皆様の協力があった物だと思います。完成祝いにささやかではありますが宴の準備をしました。食べ物はもちろん、お酒も用意してありますので遠慮せずに食べたり飲んだりしてくださいね。」


ドワコはエリーの指示した場所に予め用意していた調理済みの大量の食べ物、お酒などをアイテムボックスから出していく。他の人が見ると急に食べ物が現れるので驚きの声が上がった。


「そしてこれです」


大きな肉の塊が出現した。炊き出しで使った残りのマンガーの肉である。残りと言っても炊き出しで使った量よりはるかに多い量だ。ジェーンとジェシーが適度な大きさに肉を切って棒を刺して焼いていく。とても食欲をそそる匂いが付近に広がる。


「それではわたくしは、これで失礼しますね。皆さん楽しんでいってくださいね。」


そう言うと聖女のローブを着たドワコは、箱から降りてエリーが側に付きどこかに行ってしまった。


「聖女様もそう言ってるし、始めようか。」


飲みたくて仕方ない親方は皆を急かす。

その合図を聞いたみんなは宴を開始した。


何処からともなく戻って来たエリーは手伝ってくれている街の女性に指示を出し、料理やお酒などの配膳を行っている。ジェーンとジェシーはマンガーの肉を焼いている。焼き終わった物が器に盛られていくが、出した途端にあっという間になくなってしまう。


「親方、しっかり飲んでますか?」


着替えて戻って来たドワコが親方に話しかけた。


「嬢ちゃん何処行ってたんだい?もう始めちゃってるよ?」


「ちょっと用事があって離れてました。親方の協力があって無事に完成しました。ありがとうございます。」


「良いって事よ。嬢ちゃんには色々世話になってるしな。」


「あー。ドワコがいた。どこ行ってたのよ~探してたよ?」


ほんのり赤くなっているドワミが酒の瓶を持ったまま話しかけてきた。


「ドワミも手伝ってくれてありがとね」


「ドワコの頼みだから断れないよ。それより飲もう飲もう。お酒がいっぱいあって幸せだよぉ。」


基本的にドワーフはお酒が好きなので好きなだけ飲んで良いと言われご機嫌である。


「ドワコさんもどうぞ一杯」


「ありがとう」


住民にお酒を勧められた。


「それじゃお返しにどうぞ」


ドワコもお酒を返す。


お酒が飲めない人や子供向けにジュース類も用意してある。子供たちは普段口にすることがない物を食べたり飲んだりできて幸せそうである。


「こういう街に笑顔があふれる光景っていいね」


ドワコは思った事を口に出してしまった。


「そうですね。街が明るくなると言う事は良いことだと思います。ドワコさんが村に来てから、村の生活も良くなって笑顔があふれるようになりました。そして数々の集落も・・・そしてこの街も・・・。国全体が笑顔であふれるように、これからも頑張らないといけませんね。」


いつの間にか横にいたエリーが笑顔で答えた。


「そうだね」


ドワコもそう思った。


「さてと・・・」


ドワコはエリーを連れて手伝いをしている女性たちの所へ行った。


「手伝ってくれてありがとうございました。あとは私たちでやりますので、どうぞ楽しんできてください。」


「ありがとう。それじゃお言葉に甘えて・・・」


手伝いをしていた女性たちは思い思いに食べ物や飲み物を確保して住民たちのいる場所へと入って行った。


「それじゃピークは過ぎたと思うけど頑張りましょうか」


ドワコとエリーは作業を引き継ぎ、飲食物の提供を行った。

夜を徹して行われた宴会も一人、二人と酔いつぶれたり疲れたりして脱落していき最後に残った親方が眠ったところで宴会は終了した。


「みんなもお疲れ様。私たちも帰って休みましょうか。」


通しで仕事をしてくれたエリー、ジェーン、ジェシーにお礼を言ってみんなで家に帰る事にした。中央広場は力尽きた者たちが転がっている状態となっている。もうすぐ夜が明けるので放置していても大丈夫だろうと判断した。片付けはまた後で・・・かな。


仮眠を取ったドワコは、日が昇ってから再度、貧民街に来ていた。片付けをするためだ。さすがにエリーとメイド2人は疲れていていると思ったので家に置いてきた。


「ドワコさん。置いていくなんて、ひどいですよぉ。」


到着するとエリーがいた。先回りしてきたのかもしれない。


「いや、疲れていると思って気を使ったんだよ?」


「まあそういう事にしておきます」


「さすがに貧民街って言うのも気が引けるよね・・・」


綺麗になった街並みを見てドワコは言った。


「それじゃ名前を付けてみたらどうですか?」


エリーが提案してきた。


「希望の街・・・ホープタウンって言うのはどうかな」


「そうですね。ここの人たちが希望をもって前に進んでくれると良いですね。」


「それじゃ片づけ始めちゃいましょうか」


「そうですね」


「今日仕事の人もいるだろうから・・・これはサービスかな」


誰も見ている人がいないことを確認し、魔法書を取り出しホープタウン全体へと範囲を指定し『エリアヒール』を唱えた。

街全体が光の中に包まれる。


「これで二日酔いで仕事行けないとかは起こらないと思う」


「さすがです。ドワコさんお優しい。」


エリーがドワコを見つめている。目がハートになっている気がするけど見なかったことにする。



ドワコとエリーは片付けに入った。すると比較的早く休んだ住民たちが出てきて手伝ってくれた。みな疲れなど顔にでていないスッキリとした表情だった。


広場に寝ていた人たちも目を覚まし、すべての片づけを終わらせた。


「それじゃわしらはこれで帰るよ」


「ありがとうございました。とても助かりました。」


親方を筆頭にドワーフ一行が帰路につく。

住民達もドワーフ一行の見送りに来ていた。


「また機会があったら一緒に飲もうな」


「そうですね。また飲みましょう。」


住民達とドワーフ達は一緒に働き、飲食を共にしたのでお互いに打ち解け合い別れの言葉も親しげだ。


そして、それぞれの生活に戻っていった。

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