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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの聖女様
35/128

35.集落巡り

ドワーフの一行を見送り、ドワコはワイバーンで城下町の方へ移動した。今回はエリーも同行している。


城下町にあるドワコの家に帰って来た。


「おかえりなさいませ。お嬢様。」


執事のセバスチャンが出迎える。


「「おかえりなさいませ。お嬢様」」


ジェーンとジェシーのメイド姉妹も出てきた。


「紹介しますね。今まで工房でお手伝いしていただいていたエリーです。これからは工房での作業も含め全般的な業務のお手伝いしていただくことになりました。」


「はじめまして。私、エリーって言います。よろしくお願いします。」


エリーが使用人3人に挨拶する。


「エリーは製作や執務などの手伝いになりますので、メイドとは業務内容が少し違いますが、3人ともよろしくお願いしますね。」


「「「かしこまりました」」」


こうして顔合わせも終えて、そのまま城へ行く事にする。


「それでは今から城に向かいます。今日はエリーとジェシーの2人を連れて行きます。セバスチャン、ジェーンあとの事はよろしくお願いしますね。」



ドワコとエリーとジェシーは城に向かった。ドワコは冒険者風の服装、エリーは村人風の服装、ジェシーはメイド服と言う変な組み合わせになっていた。


徒歩で貴族用の入り口を通りドワコの控室を目指す。そこでドワコは聖女用の衣装に着替え執務室へと入った。


「今日は書類の整理ですか?」


エリーが聞いてくる。


「それもあるけど、近いうちに集落を回らないといけないので、その準備が今日の主な仕事になります。」


「わかりました。行程と携行品のリスト作りから取り掛かりますね。」


本棚から集落の情報の書かれている資料を取り出し、執務室の机の上に置いていくエリー。それを見たジェシーが仕事の速さに驚いている。


「ドワコさん。それでどの集落を回るんですか?」


「えっと、カマセーが前に管理権を行使していた集落だね。今は国の直轄管理になってるけど。」


「なるほど・・・全部で7ヵ所ですね。それじゃ回る順番は・・・っと。」


効率的に回れるようにエリーが集落の順番を調整していく。


「これでどうでしょうか?」


順番を示した紙をドワコに見せる。


「良いんじゃないかな。じゃあ回る順番はこれで大丈夫かな。」


「携行品もこれで良し。診察用のテントいりますか?」


エリーがチェックリストを埋めていき、漏れが無いように確認する。


「今回はテントを張らずに広場でやろうかな?その方が集落の人にもアピールできるし。」


「必要があればコンテナハウスを出して対応ですね」


「それでは通常の速度での移動なら、移動日を除いて5日で7ヵ所回ると言う感じですね。」


エリーが移動にかかる時間の計算を終わらせドワコに提示する。


「結構掛かるね」


「ですね・・・ワイバーンを使った強行プランなら1日で行けそうですけど・・・・」


「さすがに自分の管理地以外でそれをやると・・・ね」


最近は召喚獣であるワイバーンを使って移動することが多くなり、早く移動できるのに慣れてしまうと馬車での移動が大変に感じる。住民を驚かして問題になってもいけないので今回は馬車での移動を選択した。


「それじゃジェシーさん、聖女用の馬車があると思いますのでこの行程で手配をお願いします。」


手配書を作成してエリーはジェシーにお使いを頼んだ。


「わかりました。行ってきます。」


ジェシーが退室し、ドワコとエリーだけが残る。


「なんかエリー仕事早くなったよね」


「そうですか?」


エリーが執務室の奥の部屋に入りお茶を3人分用意して出てくる。


「どうぞ」


「ありがとう」


2人でお茶を飲み始めた頃にジェシーが戻って来た。


「手配書渡してきました」


「ご苦労さん。エリーがお茶入れてくれたからジェシーもどうぞ。」


「すみません。いただきます。」


3人で応接用のソファーにかけて休憩をした。


「あっ。護衛の方をどうしましょう?ドワコさんなら護衛いらない気もしますけど、一応形だけは揃えておかないと・・・ですし。」


エリーがドワコに聞いてきた。


「お嬢様ってお強いんですか?」


ジェシーが聞いてきた。


「ドワコさん強いですよ。ダンジョンに1人で入って平気な顔して戦利品を持って帰るくらいの冒険者もやってますし・・・あっ私も冒険者やってますよ?ほらこれ。」


「エリーさんもすごいんですね」


エリーがジェシーに冒険者カードを自慢げに見せる。

(エリーの冒険者カードって先日、作ったばかりだったような・・・)


「それじゃ護衛も手配しておかないとね。第一騎士団の隊長さんに相談かな。」


お茶を済ませ、第一騎士団の隊長に会いに行く。いつも使う区域はあまり人通りがないが、騎士団が使用している区域はそれなりの人通りがある。すれ違う城の使用人は端に寄って頭を下げている。

城内を歩くのでフードは着用している。エリーは書類の整理をしているのでお供にジェシーを連れている。


第一騎士団が使用している訓練場に隊長のバーグがいた。


「お忙しいところすみません」


ドワコはバーグに話しかけた。


「これは聖女様ではありませんか。こんな所へどのような御用件ですか?」


「これなんですけど、これに同行してもらえる護衛の手配をお願いしたいと思いまして。」


手配書をバーグに見せて護衛の依頼をする。


「なるほど。まあ聖女様なら護衛は必要ないと思いますけど、形だけは整えないといけませんからね。わかりました。この件はこちらで受けます。」


「ありがとうございます」


「この後、時間があるようでしたら、少し練習風景を見ていかれますか?」


「そうですね。それでは少しだけ見学させていただきますね。」


「おい、おまえら。今から聖女様が練習を見学されるそうだ。気合い入れてやれよ。」


「「「はいっ!」」」


少しの間、練習を見学してからドワコとジェシーは執務室に戻った。



それから数日後、聖女様一行は集落巡りの旅へと出かける事になった。

同行するメンバーは聖女であるドワコ、メイドのジェーンとジェシー、護衛の騎士2人、馬車を動かす御者の合計6人だ。エリーは工房での仕事があるため村に戻っていて、セバスチャンは留守番だ。


今日は最初の集落に行き、そこで一泊する。

昼過ぎに最初の目的地に到着し、集落の人々に歓迎を受け診察を開始した。


「並んでいる人は少ないね」


テントを張っていないので、どれだけの人が並んでいるかドワコも確認することが出来る。

この日は問題もなく診察も終わり宿泊の準備をする。コンテナハウスをポンと出したい所ではあったが今回は騎士の方に宿泊用テントの設営は任せた。長期間の行軍もあるため訓練されており、慣れた様子でテントを設営していく。


夕方になり集落の人たちが、ささやかな食事を用意してくれた。夜になりドワコはテントから抜け出した。一応聖女のローブは着用している。


集落を歩き、生活環境などを見て回る。カマセーがどれくらいの重い税をかけ集落の住民を苦しめていたかをこの目で見て確認するためだ。家なども補修まで手が回っていないようで状態が良いとは言えない感じだ。ある家の前に来た時、ドワコの気配に気が付いたのか家から人が出てきた。


「誰かいるのか?」


「すみません。決して怪しい者ではありませんので・・・」


「これは聖女様ではありませんか。こんな夜遅くどうされたんですか?」


聖女様と言う言葉を聞いて家にいた人が出てきた。


「お騒がせしてしまったようですね。お騒がせついでに少しお邪魔させていただいてよろしいでしょうか?」


「何もお構いできませんけど・・・」


ドワコは家の中に案内された。中を見ると暖炉のようなもので部屋の明かりを取っているようで、お世辞にもいい生活をしているとは思えない生活環境だ。この家で親子5人生活しているそうだ。


「生活の実態調査と言いましょうか・・・前に管理されていた方と国の直轄で管理している今とで生活環境がどれくらい変わったかと言うのを調べています。」


「確かに前の管理者様の時は作った物などほとんど税で持って行かれました。何とか森などで食べる物を見つけ生活していた・・・と言う感じでした。今は作った物の一部は手元に残るようにはなりましたが、裕福な生活をしているとまではいきません。」


それから色々と気になった事などを、この家に住んでいる人から聞き取りを行った。


「なるほどわかりました。夜分遅くお邪魔させていただきありがとうございました。」


ドワコはお礼を言って家を出た。



ドワコはこの後も訪問先の集落で治療活動の傍ら、直接住民から生活環境の事を聞いて回っていた。

最後に立ち寄った集落で少し気になる話を聞いた。


集落からあまり離れていない場所で盗賊団が現れ金品を奪われたという話だ。付近を通った商隊が襲われ、被害が出ているようだ。不測の事態に備え、商隊には冒険者の護衛を何人か同行させているが、それを盗賊団の方がはるかに上回る人数だったようだ。


何かのフラグを立ててしまったような気分になったドワコだったが、気にしても仕方がないので、最後の集落を出発し、城へ戻ることにした。


ドワコの予想は当たってしまったようで、森の中の街道を聖女一行は進んでいた。少し開けた場所の前方に10人くらいの武器を持った男が待ち構えていた。即座に護衛の騎士が武器を構え守りについた。そしてリーダー格と思われる男が言った。


「そこの貴族さんよぉ。痛い目に合いたくなければ、有り金みんな出しなぁ。」

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