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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの聖女様
33/128

33.村の活性化

昨日、行った場所が気になり、朝の時点でセバスチャンにその地区の事を調査してもらうように頼んだ。

調査結果を見てからどのように支援をするかを考えることにした。


そして今日は、アリーナ村の工房で作業をする事にした。朝のうちに移動して工房に入る。するとエリーが工房で待っていた。


「ドワコさんおかえりなさい」


「ただいま」


「今日くらいに工房に来るんじゃないかと思って待っていました」


いつもの事ながら、なぜ行動を読まれてしまうのかと考えてしまう。


「それじゃ今日もよろしくね」


城下町で仕入れた素材を棚に置いて作業に取り掛かる。

『アリーナ銘品館』がオープンしてから武器と防具の注文がかなり減少した。城下町から武器と防具を買いにきていた冒険者が減ったためだ。同じ系列のお店なので売り上げには影響していないと思うが、少し心配だ。その他の注文については堅調に依頼を受けている。


半日で注文を受けたものを完成させ納品に回る。まずは武器屋へ行くことにした。


「いらっしゃい」


店主が声を掛ける。シアが城下町に行ってから、いつもの挨拶がなくなってしまった。無いとそれはそれで少し寂しい。


「納品に来ました」


「ありあがとよ」


「最近お客さんが減りましたね」


「そうだな。冒険者が減って暇な時が多くなったな。あっちの店が儲かっているから、のんびり構えてられるんだがな。」


と店主は笑い飛ばす。冒険者が減って他のお店はどうなのかなとドワコは気になった。

それから他の店や家などを回り注文品を納品していった。


いったん工房に戻り、エリーと少し遅くなった昼食を済ませた。


「これから神殿に行こうと思うけど、エリーはどうする?」


「一緒について行こうかな」


エリーも同行することになった。


「ここが神殿ね。って言ってもドワコさん行ったことがあるから知ってるよね?」


「そうだね。前の聖女様がこの村に来た時に治療してもらったんだよね。その時にはまさか自分が後任になるとは思わなかったけどね。」


「あの日、怪我してなかったら今頃どうしていたんだろうね。」


「工房を経営しながら冒険者かな?」


「私としてはその方が良かったかも。最近ドワコさんとなかなか会えないし・・・。」


というような話をしながら神殿前についた。


「ドワコさん。神殿の人には話してあるの?」


エリーが聞いてきた。


「今日は見学のつもりだから工房を経営している村人っていう感じかな」


「はーい。それじゃ内緒ってことだね。」


ドワコとエリーは神殿の中に入った。扉を開けると聖堂と呼ばれる広い部屋がある。奥には何の神様かはわからないが女神像のようなものがある。


「あら、エリーいらっしゃい。・・・えっと工房やってるドワーフさんのドワコさんだっけ?」


「こんにちは。シスター。」


「はじめまして。シスター。」


「こんにちは。はじめまして。今日はどの様な御用ですか?」


シスターは、にこやかな笑顔で聞いてくる。


「今日は神殿の見学をしたくて来たんですけど、大丈夫ですか?」


「ええ。今日は特に予定も入っていませんから大丈夫ですよ。」


「ありがとうございます」


「何かありましたら声をかけてくださいね。それではごゆっくり。」


シスターはそう言うと自分の仕事に戻った。


「ここが聖堂ね。奥にいる女神様の像は、昔この国を救ってくれた勇者様なんだって。」


「そうなんだ。聖女様と神殿ってどう絡んでいるのかな?」


「この国の初代聖女様なんだって。その関係で聖女様は神殿を拠点に行動してるみたいだよ。って私より詳しいはずじゃ?」


「その話、初めて聞いたよ。・・・あの人も意外と適当なのかな。」


「・・・・・」


元聖女様をあの人と呼ぶドワコを見てエリーは言葉を失った。


「すみません。シスター。」


「はい。なんでしょう?」


「ここの神殿はシスター1人で運営しているんですか?」


「小さな村ですので、基本は私が1人で担当しています。聖女様や、ごく稀に王族の方が来られる時は城下町の神殿と、お城から手伝いの者が来ます。」


「奥の方とかは見せてもらえませんよね?」


「ごめんなさい。一般の方は見学できないんです。」


「そうですか。残念です。」


見てみたい気持ちがあったが今日は引き下がることにして、ドワコとエリーは神殿を後にした。


「ドワコさん良かったんですか?見たかったんじゃないですか?」


「仕事で神殿に行く前に見ておきたいとは思ったけど仕方ないよ」


ドワコとエリーが工房に戻ると村長からの使いの者が来ていた。


「やっとドワコさんに会えた。最近工房に行ってもいつも不在で。」


「何か御用ですか?」


「村長がお呼びですので来ていただけませんか?」


「ドワコさんどうします?気が進まないなら断ることもできるけど?」


エリーがそんな提案をしてくる。


「村長からの呼び出しって断れるんですか?」


「普通の村人なら断れませんけど、ドワコさんは特殊な事情があるので。」


ドワコとエリーが貴族様の呼び出しを断るとか物騒な話をしているのを横で聞いて使いの者が困惑している。


「特に用事もありませんので大丈夫ですよ。今からですか?」


「出来ればそうしていただけると・・・。」


「それじゃ、私も付いていきますね。」


使いの者も含め3人で村長の家に向かった。

村長(領主様)の屋敷についた。この国では領主様と言うのは1人しかいない。本来の貴族なら功績を残した者などが所領を与えられ自治権が認められる。だが、20年前の戦争で所領と呼ばれる場所が他国に奪われ土地が無くなってしまった。今は直轄地を除くとアリーナ村を含む地域のみが所領という扱いになっている。他の貴族を意識してか今の領主様は『領主様』と呼ぶのを嫌い『村長』と呼ばせている。


「ドワコさんを御連れしました」


使いの者が執事のワゴナーに伝える。


「ワゴナーさんお久しぶりです」


「お久しぶりです。旦那様がお待ちです。どうぞこちらへ。」


執事のワゴナーに案内されてドワコとエリーは奥へ進んだ。


「エリーはこちらで控えていてください」


「いえ。今は従者として来ていますのでドワコさんについて行きます。」


ワゴナーがエリーを別室へ案内しようとしたがエリーは断った。


「わかりました。それではご案内します。」


少し歩き、以前入ったことがある村長の執務室の前まで来た。


「旦那様。ドワコさんを御連れしました。」


「入ってくれたまえ」


「それでは、どうぞこちらへ。」


ワゴナーが2人を執務室へ案内した。


「よくぞ来てくれた。ドワコよ。」


「お久しぶりです。村長。」


挨拶を交わす。エリーはドワコの後ろで控えている。村長のジムは位置関係で従者として来ている事を察して応対をした。


「元気そうで何よりだ。そなたの協力で城下町に開業した『アリーナ銘品館』も順調に売り上げを伸ばしておるそうではないか。」


(村長の方へは店舗を貸している事、ドワコの制作した物を納品している事のみ伝わっているようで、ドワーフの集落との取引については把握していないようだ。)


「お褒め頂きありがとうございます」


「今日呼び出したのは頼みがあってだ。『アリーナ銘品館』がオープンしてから武器、防具を城下町から買いに来る冒険者が減ってしまった。城下町での収益があるので村の財政自体は増えているのだが人の流れが少なくなると村が寂しくなる。もし何かいい案があれば教えてもらえると助かる。」


村の収益が減っているわけではないと言う話を聞きドワコはホッとした。


「申し訳ありません。急に言われてもすぐに問題を解決することが出来ません。お役に立てる案が提案できるかはわかりませんが、考えさせていただく時間をください。」


「そうか、よろしく頼むぞ。では下がって良いぞ。」


「すみません。村長にお願いがあります。」


うしろに控えていたエリーが発言をした。


「なんだ?申してみろ」


「諸事情がありまして、今日を持ちまして、村から頼まれていた工房の手伝い業務をやめさせていただきます。」


「なぜだ?」


村長がエリーに問いただす。


「これから、現状では村からお金をもらって工房の手伝いをしていると言う事になっています。ですが、これからは工房以外の事でもドワコさんのお手伝いが出来ればと考えています。そうなると村の利益にならない事案も発生してしまうため、村との契約上良くないと考えます。そこで村を間に挟まない形でドワコさんとの直接契約に切り替えて工房などの手伝いをしたいと考えています。」


「そうか。そこまで考えておったのか。黙っていればわからないものをそなたも真面目よのぅ。あいわかった。そのようにしよう。」


「ありがとうございます」


エリーが村から頼まれた工房の手伝い業務は解除され、村からもらえるお金は無くなった。


「それでは失礼します」


「失礼します」


2人は村長の執務室を後にした。


「エリー良いの?」


「私のすることは変わりませんので、これからもドワコさんのお手伝いをさせていただきますね。」


「それじゃ改めて、よろしくお願いしますね」


「はいっ」


村長の屋敷を後にし、ドワコとエリーは工房に戻った。


「それじゃ今までは工房の手伝いって事になっていたけど(それ以外の仕事もさせていたような気もするけど・・・)これからは業務全般をお手伝いと言う事で良い?」


「それで構いません」


「わかったよ。給金もそれなりに上積みしないとね。」


「ありがとうドワコさん」


エリーがドワコに抱き付いてきた。

(お友達同士でやるような感じだよ?)

これも悪くはないなと思うドワコだった。

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