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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの聖女様
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25.聖女誕生

任命式が終わりドワコとエリオーネが聖女の執務室へと戻って来た。


「お疲れ様。これでドワコは聖女様だよ。やっとで適任者に引き継げたから肩の荷が下りた。」


「なんかうまく丸め込まれたような・・・」


ドワコは少々不満だ。


「前に説明した通り仕事なんてそんなにないから。あと仕事の無い日は自由にして良いからそんなに負担にならないとおもうよ?」


「一応今日まではわたくしが聖女で、明日からはドワコが聖女ね。任命式の時に名前や顔は出さないように配慮したから黙っていれば今まで通りの生活ができると思うよ。」


「聖女は上級貴族と言う事になって、相応のお金が国から支給されるようになるから、通常の生活をするのには困らないと思うよ。これは上級貴族を示すバッチね。付けていても良いけど通常は顔パスになるだろうから付けてない人が多いね。身分を表すものだから、いつでも見せられるように持ち歩くことをおすすめするよ。」


「基本、貴族には身の回りの世話をする使用人が付くけど自分の判断で決めると良いよ。貴族の集まる所では側付きメイドが最低一人必要になるから専属がいない時は派遣会社に依頼するとその日だけ臨時に来てもらえることが出来るよ。」


「まあ困ったことがあったらいつでも聞いてね・・・と言いたいところだけど・・・。明日から本来の仕事に戻らないといけないんだよねぇ。滅多に顔を出せなくなると思うけど気合で乗り切ってね。」


「放置プレイですか・・・ちょっとひどいです」


「聖女用の衣装はドワコの控室に置いておくからね。間違って見習い用を着ちゃだめだよ?着替えも今まではわたくしの使用人を使ってましたけど、明日からは使用人が必要なら自分で手配するなり、手伝い無しで着替えるなりしてくださいね。」


「聖女の執務室はこの部屋ですので、明日からはこの部屋を使いなさい。」


「それじゃ気を付けてお帰りなさい」


「はい。今までありがとうございました。」


ドワコはいつもの服に着替え城を後にする。


「明日は特にする事無かったはずだしお休みにしよう」


初日からサボる気満々なドワコであった。



「おかえりなさいドワコさん」


「ただいま戻りました」


ドワコの家の前まで戻るとシアが迎えてくれた。


「ドワコさん元気ないですね?何かあったんですか?」


「・・・色々と・・・」


「そうなんですか?困ったことがあれば何でも相談してくださいね」


「ありがとうございます」


夕食をシアの家で頂き自分の部屋に戻り休むことにする。


「ここ数日色々な事がありすぎて疲れた・・・」


いつの間にかドワコは寝てしまった。



翌日、ドワコはシアの家で朝食をいただいて・・・(いつも頂いてばかりだし、これも解決しないといけないよね?)出かける事にした。城下町を出て少し離れた森へ入る。周りに人がいない所で試してみたいと思っていた魔法を試すことにした。これが成功すればアリーナ村と城下町の移動が楽になるはず。


魔法書を持ち闇属性の中級魔法の詠唱を始める。


「・・・。・・・。・・カモン・ワイバーン。」


地表に魔法陣が出現し、下からワイバーンが出現する。大きな羽が生えている空を飛ぶことが出来るドラゴンだ。自分は持っていなかったので出来なかったが、ゲームではこれは移動手段に使えたようなので、この世界ではどのようになるか気になっていた。


出てきたワイバーンを見ると背中にくらのような物が取り付けてあり乗れそうだ。早速背中に乗ってみる。鞍にまたがると体が安定する。手綱のようなものも付いているので握ってみる。どうすれば動くのかな?いろいろ試してみた。


結局のところ自分が思えばその通りに動いてくれるようだ。試しに上昇するイメージを浮かべるとワイバーンは羽をばたつかせ高度を上げていった。


「飛んでる。飛んでる。」


今度は前に進めとイメージする。ワイバーンはそれに応じて前に進んでいく。


ある程度乗ってみて扱い方を覚えていった。そのまましばらく飛行して何もない砂漠のような場所に降り立つ。そこで次に試してみたいことを実験する。


ワイバーンに火炎攻撃をするように命じる。すると口が開き火炎放射器のように炎が噴き出した。あまり威力はなさそうだが牽制には十分使えそうだ。


攻撃の練習を終えてまたワイバーンで飛んでいると、森の中に集落のような物を見つけた。ドワコは何故か気になったので少し離れた所でワイバーンから降りて徒歩で先ほど見つけた集落を目指すことにした。しばらく歩いているとその集落に到着した。


「おや。あんた旅のドワーフかい?」


出てきたのは髭を沢山生やした背の低い男性・・・ドワーフだった。


「散策していたらたまたま集落を見つけたもので寄ってみました。お邪魔でしたか?」


「いやいや、同じドワーフなら構わんよ。何もないところだけどゆっくりして行くと良い。」


「なぜこんな森の奥に集落があるんですか?」


ドワコは質問する。


「まあ何だ。ここから少し離れた国で村を作って生活していたんだがな?戦火に巻きこまれて国を追われてここまで逃げ延びたんだ。そして、ここで集落を作りひっそりと暮らしている訳さ。ここでは男女合わせて25人のドワーフが生活しておる。ついでにワシはこの集落の代表を務めている。皆からは親方と言われておる。良かったら集落を紹介してやろう。おーい誰かおらんか?」


「はーい。今行くよ。」


近くの家から一人のドワーフの女性が出てきた。猫のヒゲのような髭を生やしている。猫耳を付ければ最高な感じだ。


「ドワミか。今、旅人のドワーフが来なさった。村を案内してくれんか?」


「親方わかったよー。あたしドワミだよー。あなたは?」


「私はドワコ。よろしくね。ドワミさん。」


「さんはいらないよ?ドワミで良いよ」


「わかったよドワミ」


「それじゃ案内するよー。付いてきてね。」


ドワミに集落を案内してもらった。各家は工房にが併設されている。ドワコの工房と違うところと言えば各家は専門で製作をしている。武器なら武器だけ、防具なら防具だけ製作している。単価の安そうな物から一品物の高級品も含まれている。対してドワコの工房は広いジャンルの既製品を作ることが出来る。根本的に工房の質が違うようだ。集落を見て回り元の場所に戻って来る。


「この作った物ってどうするの?」


かなりの辺境にある集落なのでどのようにお金を得ているか気になったので聞いてみた。


「ドワーフは物作りが生活の一部だからね。職人気質が強くて基本的に商売は下手だから倉庫に放置かな。買い取ってくれる商人さんも今はいないし。」


「そう言えば一人紹介できる商人いるけど」


城下町の自宅の1階に住む人を思い浮かべる


「紹介してくれるのか?それは助かる」


「これで安定した収入が期待できそうだねー」


親方が話に食いついてきた。ドワミも収入が得られる可能性が出て嬉しそうだ。


「もうすぐ日が暮れる。今日は泊って行かんか?」


お泊まりのお誘いを受けた。


「うちにおいでよー。」


ドワミが家に誘う。これは断らないほうが良さそうだなとドワコは判断した。


「それじゃ一晩ほどよろしくお願いします。」

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