24.魔物討伐
さて、見習研修4日目です。
ここ数日、日課になったシアの家で朝食をいただき、家を出発して城を目指す。
ここ数日で顔なじみになった貴族門の衛兵さんに通行証を見せる。
「毎日ご苦労さんだね。いってらっしゃい。」
城内にいる貴族のお使いか何かと思っている衛兵のおじさんに声をかけられて城内に入って行く。さすがに4日目なので迷わず自分の控室へ行き、ローブに着替えるというか着替えさせられる(なぜかメイドが待機している)。着替えた後で聖女様の執務室へ入る。
「おはようございます。今日もよろしくお願いします。」
「それじゃ、今日が研修最終日だから頑張ってね」
「今日は城から少し離れた場所に出現したモンスター討伐に行きます。と言っても先陣を切って戦う訳ではなくて回復要員としてね。」
「はあ・・・」
良くわかっていない感じでドワコが返事をする。
「今日は第一騎士団が冒険者では手に負えなくなって暴れている魔物を討伐に行きます。その回復要員として同行します。まあ普段ならこの程度なら回復要員は付けませんけど、今回は研修と言う事で同行します。隊は隊長を含め騎士団員20人とわたくしたち2人です。緊急時以外は手を出しませんので自分の裁量で任務を完了させてください。」
「わかりました」
ローブのフードをかぶり第一騎士団の詰所に行く。隊長のバーグが2人に気づき隊員に号令をかける。
「今日の任務である魔物討伐だが、急な事になったが聖女様と準聖女様が同行することとなった。護衛は十分にし、絶対に怪我などさせぬようにな。」
「「はっ」」
隊員の騎士が一斉に返事をする。
「諸君の健闘に期待する。それでは出陣。」
隊列を組んで詰所から退室していく。
「聖女様、準聖女様、今日はよろしくお願いします。」
隊長のバーグが2人に挨拶する。
「それじゃ今から目的地へ移動します。騎士団はそれぞれの馬に騎乗して移動になるけど、私たちは馬車での移動となります。」
エリオーネが移動手段について説明する。
外に出たところで騎乗した騎士団が待機していた。その最後部には馬車が待機している。
「それでは乗り込みましょう」
「はい」
お付きのメイドが馬車のドアを開けエリオーネとドワコが乗り込む。最後にメイドが乗り込み騎士団と馬車が出発した。隊列は隊長以下騎士団が先行しその後ろを4人の騎士に護衛される形で進んでいく。
しばらくすると目的地に着いたようだ。
「それでは馬車はここまででこの先は徒歩になります」
エリオーネが言うと2人は馬車を下りた。騎士団も馬から降り徒歩で移動するようだ。2人ほど馬と馬車の護衛に残り、騎士団隊長以下18人とエリオーネ、ドワコの総勢20人は進軍する。しばらく歩くと目的地に着いたようだ。古い墓場のようだ。
「ここが目的地だ。任務を受けているのはこの墓地に出現するスケルトンの駆除だ。20体前後と聞いているが増えている可能性もある。十分気を付けるように。」
「「はっ」」
隊長のバーグの号令のもと、総員配置に着く。エリオーネをドワコには護衛の騎士が2人付いている。
「そろそろ始まるよ。基本的にわたくしは手を出さないから、自分の考えで動いてみてね。」
「わかりました」
昨晩のうちに今日使う可能性のある、中級魔法のいくつかを勉強してきた。ドワコも魔法書を持ち準備に取り掛かる。
「来たぞー」
誰かが叫ぶとわらわらとスケルトンが姿を現してきた。その数200体。
「聞いてた数よりはるかに多いぞ!みんな気をつけろ!」
騎士団に緊張が走る。
「かかれー」
騎士団がスケルトンに向かい突入していく。スケルトン本体は同じように見えるが剣や斧と言った武器を装備していたり、盾や兜といった防具を装備している物と多種多様に見える。これは後で武器、防具が回収できれば素材が増えそうだな・・・。
早速一人負傷者が運ばれてきた。
「今回復しますね。ヒール。」
「ありがとうございます」
怪我が完治し、お礼を言って再突入していく。
そのタイミングでたくさんの弓矢が騎士団に向かい飛んできた。突然の飛び道具に8人の騎士が負傷した。
「弓矢を持っている奴がいるぞ。先にソコを狙え。」
隊長の指示が飛ぶ。隊長が突入しその後に数人の騎士が続き弓を装備しているスケルトンを重点的に倒していく・・・。
幸い弓矢で負傷した騎士は軽傷だった。
「今回復します。・・・。・・・。・・水の癒し。」
水の癒しは状態異常を回復する魔法だが、ヒールほどではないが回復もされる。ある程度の範囲を指定して発動できるため複数の対象に発動させることができる。8人とも傷が回復したようだ。
「「ありがとうございます」」
礼を言うとすぐに再突入していく。
今度は魔法攻撃が騎士団に向かって飛んでいく形状から見て火属性のようだ。大爆発が起こり10数人の騎士が吹っ飛ばされた。立っているのは隊長を含め数人だけだ。被害が大きくドワコのいる場所まで運べる人がいないようだ。
「ちょっとこれは危ないかも・・・」
エリオーネがつぶやく。
ドワコはすでに戦闘の中心部まで移動していた。襲ってくるスケルトンを魔法書を使い物理的に叩き潰して粉砕し、近くに寄っているスケルトンがいないことを確認してから魔法詠唱をする。
「・・・。・・・。・・エリアヒール。」
発動とともに範囲内にいた騎士が回復した。それと同時に範囲内にいたスケルトンも消滅する。回復魔法ってアンデット系にダメージ効果がある仕様なんだね。
「「ありがとうございます」」
すぐさま回復した騎士は戦闘に加勢する。ドワコも中心まで来てしまったので魔法書でスケルトンを物理的に殴りつけて倒していく。魔法書はかなり頑丈なようで、これぐらいの攻撃では汚れや傷ひとつ付いていない。負傷した者がいるとその場で必要に応じた回復魔法をかける。そのような感じで戦闘が行われ、回復魔法がある分、騎士団の方が優勢になっていく。
「それじゃ、こいつで最後だ。」
最後に残ったスケルトンを隊長のバーグが倒し戦闘が終了した。
「一人の死傷者を出さずに無事に任務化完了できた。加勢していただいた準聖女様のおかげです。」
「やっと片付きましたね。お疲れ様でした。」
バーグがお礼を言ってドワコがねぎらう。
「んー。30点かな。」
エリオーネが採点をする。そして総括をする。
「200体いたスケルトンを貴方126体倒したよ?回復に徹するように指示したはずだけど?もう少し騎士団の顔を立てるように行動しなさい。この減点がおおきいけど回復魔法の使用方法については合格。一人も離脱するものを出さなかったのは評価できるよ。」
辛口の点数を言ったけど、実際は自分以上に回復魔法が使えて、さらに半数以上のスケルトンを倒しているので戦闘評価としてはかなりの高得点になるが、今後の事もあるので本人には聖女として活動するときは回復に徹してほしいと願いも込めての点数である。
「ちなみに合格点とかはないから、最終試験は合格ね。」
「これ試験だったんですか?」
「言ってなかったっけ?」
白々しく言ってくる。
ドワコが倒したスケルトンの数を聞いて騎士団の隊員は驚いていた。正直なところ騎士団は今回の戦闘でかなり苦戦していた。当初、聞いていた数の10倍もの数がいたからだ。準聖女が同行して回復してもらったり、スケルトンの数を減らしてもらっていなかったら全滅していたかもしれないと言う気持ちになっていた。
「それじゃ、撤収。城へ戻る。」
「「はっ」」
行きと同じ隊列を組み城へと帰還する。騎士団と別れた後、聖女の執務室へとエリオーネとドワコが戻る。
「今日はお疲れ様。一応、見習研修はこれで終わりね。試験も合格なので明日から聖女として頑張ってね。これから任命式やるから謁見の間に移動するよ。」
「私に拒否権は無いんですか?」
「すでに予定が組んであって王様直々に任命するから拒否できると思う?」
「はあ・・・」
「それじゃ任命式について説明するね・・・・」
式の流れについて説明を受け、謁見の間へ移動する。
ものすごく広い部屋に騎士が両側に整列している。その真ん中をエリオーネとドワコは進む。その先には大きな椅子が置いてあり王様と思われる高齢の男が座っている。その前まで行き、エリオーネとドワコが跪く。ドワコはローブのフードを被ったままだ。魔導士がフードを被ったまま謁見するのはこの国では非礼にはならないそうだ。
「聖女よ、今まで聖女として使えた事を感謝する。そしてこの任を下りる事あいわかった。」
「お聞き届けいただきありがとうございます」
「そして、準聖女よ。聖女が任を下りる事になり、そなたがこれからは聖女となる。これからも国の為に尽くしてくれることを望む。」
「承りました。若輩者ではありますがお国の為に尽くすことをお約束いたします。(そう答えろって言われたし・・・)」
「新しい聖女の誕生だ。みなで新しい門出を祝おうじゃないか。」
「「「おーーーー」」」
王様の号令にその場にいる者が皆応える。こうして任命式が終わりドワコはマルティ王国の聖女となった。




